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第6話 異世界初の食事

久しぶりにこちらの更新です。



 まず最初にワタシが確認したのは、当然ながら自分の現状だった。

 胸に手を当て、鼓動を確かめる。


 「心臓……動いてる……」


 それだけの事が、踊りだしたくなる程嬉しかった。

 生きている実感というのは、精神にこれ程まで安心を齎すのか、と少しの驚きを抱く。

 そこら辺で軽く身体を動かしてみたが、筋肉の硬直はすっかり消えていて、動きに支障は無いようだ。


 「よかった…………でも」


 死体のままでいるのは当然、キツイなんてものじゃない。

 精神的にも肉体的にも、いつ動けなくなるかわからないというのは、ワタシを想像以上に恐怖させた。

 だからこそ、進化という未知のシステムによって、息を吹き返した現状に喜びを覚えるのは、変ではない。


 だが、それを横に置いても、考えねばならない。

 果たして、この身体。【混沌の落とし児】という種族は、迷宮から出るに足る強さを持っているのか。

 ある種、死体のままなら、効かない攻撃というのもあった分、誤魔化しの効かないこれからは肉体の性能が生存に直結してくる。


 そういう面で見てみると


 「まだ、足りないわね」


 まだ迷宮から出られる訳ではないと言わざるを得ない。

 迷宮の出口は中央付近にある大通りを超えた先だ。

 進化してあの蛙のランクと並んだと思われるが、それがどれほどの差を生み出すかわからない。ついでに言うなら、迷宮中央付近を巣にしている魔物が『E-』という『G』から数段階高い程度でどんぐりの背比べと言わざるを得ない程度の違いで倒せるとは思えなかった。


 ボロの鞄から鑑定鏡を取り出す。

 これを見つけたのは偶然ではあるが、正直無かったら今頃死体のまま食われていたのでは、と思う。

 何せ、進化前ではまともに戦う事ができるのは毒蛙のみ。他は軒並み自分より強いランクだった。というか、毒蛙はワタシに毒が効かないから倒せただけで、雑魚と言っても、ぶっちゃけワタシよりランクが高かった。

 それを知らずに他の魔物に挑んでいたら確実に死んでいただろう。ついでに言えば、この鑑定鏡によって進化というシステムの存在を推測できたので、そういう意味でも助けられている。


 手に入れた経緯は死体漁りという外道の結果だが、なければ永遠を『意識だけ』の状態で過ごす生き地獄を味わうと考えれば外道とかどうとか気にしてられない。


 ぐぅう〜。


 「………………………………まぁ、まずは食料確保よね」


 そんな事を考えること数分の間だが、腹の虫は我慢できなかったと見える。

 思えば、死体の状態だと必要なかっただけに、何も食べていない。生物は糧が無い状態で生きれるように出来てない以上、この空腹を放置するのは危険だと思う。


 という訳で、食料なのだが、当然だが、蛙は却下だ。毒を食らうのは刺客と愚王だけでいい。

 食料になり得る魔物………いるとしても、狩る事のできる魔物は強者に食われないだけの理由がある存在だけだと思うので、最低限、腹に収まるならそれでいいと考えるとする。


 「となると……」


 最低限、水を飲み喉を潤すと、迷宮に歩き出した。


















 「いたわね」


 地図を頼りに歩く事、数十分。

 鑑定鏡を向ける。


 【ダストラビット:E-ランク】

 【ホーンラビットが汚物を食って生活した結果誕生した進化系。基本的に2、3匹程の群れで生活する。その肉は生ゴミを食っていた方がマシと言われるほど不味い】


 そこには鼻につく臭気を放つ、いかにも汚らしい子兎だった。数は2匹。迷宮を当てもなく彷徨っていた時に何度か遭遇した魔物だ。

 弱そうな魔物だが、誰も近づかないのはその臭気の影響かと思っていたのだが、鑑定鏡によると普通に不味いから誰も近寄らない様だ。

 ………これを見ると、この迷宮の魔物も人間と同じでなるべく美味しいものを食べたいのだなと思うが、残念なことに自分にそんな事を選ぶ権利などないので、コイツで我慢する事にする。


 鑑定された影響から周囲を警戒しだした汚兎どもにわかりやすく足音を響かせて近づく。

 汚兎どもはすぐ気づいた。

 というか、気づかせた、というべきか。

 今回、進化とそれに伴うランクの上昇の影響を確かめるために、敢えて毒蛙と同じランクの敵二匹相手に戦う事にした。


 こちらもランクの上では同じだが、進化前で毒蛙と戦えたので、進化して、スペック上は同格になった今なら、多少劣勢でも余裕で勝てるのではという思考があったのも否めない。


 だが、不思議とそれで大丈夫だという確信があったのだ。


 「じゃァ……!」


 不快な音で喉を鳴らして威嚇する汚兎達を前に走り出す。

 それを見て明確に敵と捉えた兎どもは、恐らくホーンラビットだった頃の名残りと思われる角を向けて、二匹でこちらに突進してきた。

 こちらも仕掛ける……!


 「………っ」

 「じャ……っ!?」


 突進が予想以上に速かった為、少し驚いたが、それだけだ。

 余裕を持って躱し、一匹の角を右手で掴み、振り回す。


 「……はぁっ!!」

 「「じゅジャぁッっ!??」」


 時間差で突っ込んできたもう一匹に遠心力を加えた兎を叩きつけ、衝撃を感じたら手を離す。

 すると、二匹の汚兎は、面白いように吹き飛んでいく。


 「とーうっ!」

 「「ジぇぶぅ」」


 数メートル飛んで勢いが弱まった頃に、間に合うように走り出し、飛び上がって着地点に押し込むように上から両足揃えて蹴り放つ。


 潰れるような音だけ遺して汚兎は二匹仲良く動かなくなった。


 「あれ、あっけない……」


 拍子抜け、というのが最初の感想だった。戦闘にかかった時間はそれ程でもなく、与えたダメージは直撃レベルのを二撃ほど。

 魔物……というか人外というのはもっと頑丈だと思っていたのだが、この分だと、低ランク帯の魔物はそれ程理不尽な性能をしている訳ではないようだ。


 念の為ちゃんと死んでいるか確認したが、問題は無かった。


 「Gランクが『何もできない』レベルならFランクは『産まれたばかり』という感じだったんだよな………という事はEランク帯は高くても『害獣』レベルなのか?」


 鑑定鏡で見た感じあまり間違ってないような気がする。

 そんな感じで強さの指標を自分なりの基準で明確にしていく間にも、兎の死体を手にさげて水場に戻る。


 「さて、食べてみるか。あまり期待はできないけど」


 ようは残り物だしな、とか思いながら、それなりの措置をして食べても問題無いと思われる汚兎どもを見る。

 ベストは火にかける事なんだが、残念なことに火種が無い。なので、筋力で強引に腹を突き破って内蔵や血抜きをした程度なのだが、食べれるだろう。

 ちなみに筋力だけで腹を破った辺りで、自分の攻撃力がこのランク帯では異常なのだと気づいた。魔法とか使えればもっと高い火力が期待できそうだ。筋力強化の魔法とかありそうだし。ワンチャン魔力も高いとかあり得るかも知れない。


 「いただきまーす」


 そんな期待を胸にいざ実食。






















 ………どんな味だったか? 『生ゴミの方がマシ』って鑑定鏡さんに言わしめた味を舐めてた………そう切に思ったよ。


 「おぼろろろ……………」


 逆に腹減ったかも知れない。



ーーーーーーーーーーーー

Lv:2(1UP!)

名前:ハク

種族:混沌の落とし児

階級:第1階梯

HP:21/56(13UP!)

MP:0/0

ランク:E-

ーーーーーーーーーーーー


※一応水を飲んで食事も摂ったので回復しました。レベルアップで最大HPも上がってますが、上昇分のHPは回復してません。

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