第4話 最底辺決定戦:2
更新が遅い?
大体こんなもんよ。(滝汗)
……戦闘シーン全く思いつかなかったので。
実際、今回の戦闘シーンちょっと不満な出来。でも一応出来たのにこれ以上引き伸ばすのはダメだと思うので更新します。
「シッ…!」
「ギョガァ!!」
伸びた舌が地を叩く。舞う土埃にその威力を想像しながらも余裕を持って躱しポケットから取り出した石を短い呼吸と共に投げる。
相手が舌を伸ばしてこちらを叩こうとすれば、間合いから離れては投石の繰り返し。毒液は粘膜に当たらなければ無視する。
投石と拳打は人類の叡智とは言うが、単調で単純、それでいて面白みのない戦いだ。でも、それはそう。最底辺同士の戦いに引き出しの多さを期待してはいけない。
この戦いが始まってから既に5分。割と長引いている。
それというのも、どちらも決定的な攻撃力が無いことが挙げられる。
ポイズントードの攻撃はこちらにとって簡単に躱せる、或いは無視できる攻撃だし、こちらの攻撃は火力の無い投石を除けば接近戦だが、毒液を全身に浴びる可能性がある以上迂闊に近づけない。
流石に全身に毒を浴びれば自分が死体とはいえ死ぬだろ。死体が死ぬって言葉が矛盾している気がするが、この場合動けなくなれば色んな意味で詰みという意味なので毒を体内に入れる事=オレの負けと取ってくれていい。
動けなくなっても意識はあるだろうが、どうせ餌になるだけだ。食われて白骨だけ残っても意識が残るのかは……まぁ、灰になっても残ってたんだから残るんだろうが、その場合何も出来ない状態で意識だけ残る事になる。前の死と同じように動けない状態で永遠に思う時間を過ごすのはなんとしてもゴメンだ。………痛み?死体に痛覚が機能してるかは知らん。もっと言うなら前回炎に焼かれて死んだ時は痛覚が途中から無かったから、食われるというのが痛覚的にセーフなのかアウトなのかわからん。
もっと単純にその肉体が死んだら痛覚がカットされる、という事も考えられる。その場合、動けるだけで既に死体である自分には関係ないので、負けた時の状態はどんな殺され方をしても変わらないと思われる。
こう考えると、死体でも意識がある状態というのはある種の痛みからの開放なのかもしれないが、死体が問題なく動ける状態を保っている時間というのは案外短いのだ。死後硬直やら何やらがあるからな。
そう考えると、知らなかったとはいえ4日も問題なく動けたのは奇跡だと言っていい。どんな不思議パワーが働いたかは知らないが、この少女の身体は保存状態が良い状態がかなり長い期間持続している。
………逆に言えばいつ動かなくなってもおかしくないと言える。
そんな危機感と焦燥の中、鑑定で見つけた『進化』という単語。
リトルトードとポイズントードのテキストには進化系とかそういう単語が度々見えた。ただの幼体と成体の差なら進化ではなく成長と書く筈。そして、ブラッドトードやチキントードなどの性格や趣向によって種族が別のルートに移行する様。
それは、まるでゲームの進化の様な突然の形態変化、強化の如く語られているように聞こえた。
ならば、いつ動かなくなってもおかしくない、この身体を進化させる事ができれば……もしかしたら、もっと長く動ける事ができるかもしれない。
もし長く動く事が可能なら、もしかしたらソウスケに会えるかもしれない。
親友に無事を伝えるには時間が足りない事を悟った自分が、行き着いた答えは、ゲームと同じ様に生物を殺して進化できるようになるという希望的観測に縋ることだったのだ。
……安全に休める場所を探すのは後回しだ。だっていつ動けなくなるかわからない。それまでに、この死体を酷使して死体を積み上げなくてはならない。休憩しているうちに動けなくなっては元も子もない。動けるうちに狩り尽くすしか道はない。
………もう4日も知らずに無駄にしてしまったのだから。
「…………」
「ギョア、ギョア!」
そんな事を考えながら単調な作業を繰り返していると、ポイズントードがこちらを見て嘲笑うのが見えた。
一向に近づいてこないオレを見て、奇襲でしか近づく事も出来ない臆病者だと、嘲笑っているのがなんとなくわかった。
全く、単純でハッピーな頭で羨ましい。
「ギョアアアア!!!」
「………」
___こちらは、もうお前を殺す算段を立て終わったというのに。
臆病者を刈る為に突進してくるポイズントード。おそらく執拗に距離を取るオレを見て『近づく』事が一番オレが嫌なことだと思ったのだろう。そして、それに勝機を見た。
実際には毒を警戒していただけなので、勘違いだが。
「ギョ!?!?」
突進してくるポイズントード。それに合わせてこちらも突進する。
真っ向から打ち合う気はない。
真正面から知覚外に移動するのだ。
そして、この蛙畜生の知覚外はわかりやすい。なんせ、オレが左目を潰したからな。
正面に踏み込むこちらに、驚きながらも舌を撓らせるポイズントードを横目に右足を軸にくるりと半回転。紙一重で攻撃を避けると共に潰した左目の前に躍り出て流れるように前のめりになったポイズントードの首を掴んだ。
地に振り下ろした舌攻撃の余波で舞う土埃も相まって相手には視界から突如消えたように見えるだろう。
………もしかしたら、現実の蛙には視覚以外の知覚方法があったりするかもしれないが、どうやら少なくともこいつには無いらしい。
もし知覚範囲が想像以上に広かったらこちらの負けだったが、賭けには買った様だ。
お陰で確殺範囲に入った。
前のめりになるポイズントードの首に、両手を回す。
「落ちろ……っ」
「ギョアアアアアアア……ッ!?!?」
そして、役立たずな全身の筋肉を総動員して首を絞める。
こうして、腕の筋肉を使っていてわかったが、既に殆どの筋肉が固まっている。あまり時間はない。
「ギョア……アア……ア…ッ」
「ふんぅぅ……っ!!」
暴れる蛙がこちらを叩こうとするが、舌を足で踏んで止め、唯一届く四肢である左手は腹で挟んで纏めて絞めた。
ポイズントードは暫く叫んでいたが、だんだんと声が枯れたように途切れていき。
「ガフォ……」
という声を遺して泡を吹いて気絶した。
それを見て、暫く首を絞めたまま確実に気絶したのかを確認すると、手を離し、眼の位置に手を突き刺し、最初の奇襲の時に左目の奥に埋め込んだ石を探る。
その時にビクリと痙攣したが、無視。
オレは確実に殺すための一手として、埋めた石を見つけると、それを掴んで肉を削りながら奥へと進めていき、脳らしき物体に辿り着くとそれを石で抉り出すと……一息に握り潰す。意外ではないが、ポイズントードの脳は小さかったので、簡単に潰せた。
「………………………」
「意外と手間かかったな……」
この程度に5分もかかる自分の貧弱さに思わず弱音が出て、溜息を吐く。
《個体名:ハクのレベルが規定値に達しました。進化が可能です》
「そして、進化……まだ一体しか倒してないのに」
突如降ってきた天の声に驚きはない。なんとなくあるんだろうな、とは思っていた。この世界はやけにゲームくさいのだ。
そして流石最弱Gランク……雑魚一匹倒しただけで進化できるのか。 といっても、現在レベルがわからないから、どれくらいレベルが上がったのかわからないが、多分この進化の速さは今くらいだろう。そんな気がする。
そして、希望的観測は当たっていた。生物を殺す事で進化できるようになった。
「さて……なら早速……」
だが、そこで重大な事に気づいた。もしかしたら、一番重要な事を失念していたかもしれない。
「…………そういや、進化ってどうするんだ?」
オレは、蛙の死体の横で、毒液まみれの格好で凍り付いた後、静かに呟いた。
次回、一回目の進化!