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第3話 最底辺決定戦:1

連続……というか同時更新なので、最新話から来た人は注意。

しばらくこっちは書いてなかったから、多少はね?



 水源に近づくにつれて、水棲系の魔物が多くなってきた気がする。

 目の前で群れている蛙の様な魔物の死角になる位置で慎重に鏡を翳すと、鏡は映った対象を余さず解説してくれた。


 「…………」


 「「「ギッ……?」」」


 困惑の声を挙げた蛙達から身を隠す。鑑定鏡のいい所は、こうして多少勘付かれてもリカバリーが効くところだと思う。音声で読み上げる訳じゃないから翳して直ぐに隠れれば相手に見つからずに鑑定できる。

 ちなみに、何で勘付かれたのかと言うと、鑑定される側は微弱な嫌悪感が発生するらしい。でもこれは『鑑定』というスキルの効果なので、鑑定鏡は悪くない。


 【リトルトード:F-ランク】

 【蛙系魔物の子であり、すべての始まり。殆どの蛙系魔物はこの魔物より進化して生まれる】


 【ブラッドトード:C-ランク】

 【血に酔い、生物を殺す事に快感を得るようになった蛙系の魔物が進化した存在。攻撃力が強過ぎる反面、防御は紙】


 【チキントード:F+ランク】

 【全ての戦闘に逃げ続けた蛙系の魔物が進化した存在。弱いが食用として優れており、同族からも非常食として守られている程な為、基本的に高級食材。これはチキントードが可哀想と取るか、非常食扱いされても生き残ろうとする程生き汚いと取るかは個人による】


 【ポイズントード:E-ランク】

 【蛙系の魔物が正統に進化した姿。水棲生物として優れているが陸上でも活動に支障なく、また毒が得意で、多少ながら水魔法も使える。鶏肉みたいで美味しいらしい。食べる時は毒対策を忘れずに】


 鏡を見ると、この様な解説が表示されていた。

 真ん中2種類は特殊進化だろうが、他は無難な進化の様だ。


 「………………………」


 ……わかってた事だが、オレと同じGランクの魔物などいない。産まれたばかりと思われるリトルトードですらFランク帯という事は、Gランクという事は、文字通り『何もできない』存在の事なのかもしれない。少なくとも“ただの死体”のランクとしては適切と言える。

 だが、オレには確かめたい事があった。だが、態々魔物の群れに向かってやるには危険過ぎる為、蛙共の群れから離れ、はぐれを探す事にする。


 「……いたな」


 しばらく彷徨っていると、単独で歩く蛙の後ろ姿が見えた為、急いで曲がり角に隠れる。はぐれだろうか? だとしたら丁度いいのだが。

 とりあえず鑑定。


 【ポイズントード:E-ランク】

 【蛙系の魔物が正______


 カット。

 どうやら求めた獲物の様だ。鑑定の影響か、周囲をキョロキョロする蛙に対して慎重に様子を伺う。

 足元のそこそこな大きさの石を拾って握りしめると、呼吸を止めて気配を消した。


 相手が歩き出す。


 まだだ。


 相手が背中を見せる。


 ………今っ!


 「……ぁっ!!」

 「ギョッ!?」


 角から飛び出して全力で石を振りかぶる。呼吸を止めていた影響か、叫び声は不自然な形で声にならなかったが、見事に奇襲に成功した。

 振り返ったポイズントードの左目に石を突き刺す。


 「ギョォアアアアッ?!?」


 紫色の血が溢れ出し、悲痛な叫び声が相手から漏れるが気にせず無言で石を捩じ込む。


 体内に異物が入り込み、肉が削がれていく感覚に耐えきれなくなったのか、ポイズントードが舌を伸ばしてこちらに反撃しようとしてくる。

 これに攻撃を中断し、後退する。


 「………ちっ」

 「ギョォア、ギョォア!」


 奇襲には成功したが、倒しきれなかった。やはりただの石では火力が足りない。

 剣でもあれば、まだ楽なんだろうが……。

 思わず零した舌打ちに、息も絶え絶えなポイズントードの鳴き声が聞こえる。それはこちらを嘲笑っているようにも見える。

 ………この蛙は自分が迷宮の中でも底辺であることを自覚しているのだ。そんな相手に奇襲まで使って倒しきれないオレを嘲笑っているのだろうか?


 だが、そんな事はどうでもいい。迷宮の中が弱肉強食なのは地図を頼りに中央まで行った時に充分実感したのだ。

 ましてや、オレは底辺の蛙共にすら負けるGランク。何もできないのが当たり前のただの死体。きっと本来なら、あの縦穴の中で魔物達の餌になって周りの遺骨の仲間になっていた筈だ。


 だからこそ、嘲笑われる程度なら許容しよう。間違いなくオレは最弱である。

 そして、死体だからこそ、こいつに勝ち目がある、と言おう。


 胸を張って、実験は成功だと言える。


 鑑定ではコイツは毒持ちだと書いていた。加えて食べる時は毒対策を、という言葉を信じるなら体液にも毒が混ざっていても不思議ではない。

 とても食べれる存在じゃないからこそ、底辺でありながら捕食されずに生き残れるのだろう。

 だが、オレは死体。毒は効かない。 実際、明らかに毒混じりだろう紫色の血液を大量に浴びても身体は問題なく動く。


 状態異常無効という訳ではないので、多分毒の影響を自覚していないだけで、身体は現在毒の影響下にあるのだろうが、酸性のある毒でもない限りは皮膚を突き破る事はない為無視できると言っていいだろう。勿論傷を付けられればそこから毒が回って身体が動かなくなるだろうが、元より攻撃を受けた時点で毒とか関係なくオレの負けだ。

 そして、毒という強力な武器を持ちながらE-ランクとかいう底辺に甘んじるコイツの本体の能力はそこまでではない筈だ。ならば勝てる。

 毒が意味のない死体であるオレだからこそ、最底辺のGランクでこいつに勝てるのだ。


 憶測に希望的観測を乗せて浅いゲーム知識で武装しためちゃくちゃな推測だが、こんなものに縋らなくては始まりの一歩すら、いつまでも踏み出すことは出来ない。何故ならコイツより弱い魔物など、今の所大量の群れに守られるリトルトードしか見ていない。

 ならば、こいつに勝てなくては、オレはこの迷宮で生きる事ができないという事だ。

 ……最初の一歩とはそういう事だ。


 だから


 「おとなしく……」


 ___オレの踏み台になれ!


 「ギョォオオオ!!」


 ポイズントードの雄叫びと共に、新しく石を拾って駆け出す。

 底辺同士の命懸けの戦い。この一戦で、迷宮の最底辺が決まる。



安心して休める場所を探す前に命懸けの戦闘を起こすバカ。

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