俺とギルド
徒歩で移動すること四日ほどでようやく街が見えてきた。だがそんなことよりも俺は別のことを考えていた。
エリーと2人で旅している間は食事とか取っていなかったのだが、実は毎回修行後に飲んでいた回復薬が栄養やらなんやらを全て含んでいたらしく、それが俺たちの食事代わりになっていたようだった。
森で何が食べれるものなのかを二人とも全く判別できず、おかげで三人娘からかなり変な目で見られた。
まぁエリーの収納箱のおかげで事なきを得たが。食べ物出してみせてたし。
なんとなく分かっていたことだが、エリーもかなり常識知らずなようだ。
俺は記憶がほとんどないので当然だが、エリーは今までどうやって過ごしてきたんだ…?
やはり幼なじみというのを信じて良いのかは疑問だな。とはいえ他に頼る相手もいないし、俺のことを鍛えてくれているのは事実なのでとりあえず保留だ。
街に入るのも一悶着あった。エリーも俺も身分証もなければ金もないために門前払いを食らうところだったのだ。
結局三人娘がお礼として金を出してくれたのでなんとかなったのだが…
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「いやー、人助けもしてみるもんだね!おかげで街に入れてよかったよ〜」
「…あぁ、そうだな。ところでこれからどうするんだ?」
とりあえず三人娘とは既に別れた。
色々気になるところはあるが、今の俺ではエリーには全く歯が立たないのでとりあえず気にしないことにした。
「とりあえず冒険者ギルドに行って登録して、身分証を貰おっか!そうすればこれからはお金も稼ぎやすいだろうしね」
一応三人娘から謝礼金みたいなものはもらったのだが、それだけでこれから暮らしていけるはずもないしな。まぁ働くのは当然だろう。
ギルドに着いたが、なかなか大きな建物だ。
この世界には多くの魔物がいる(らしい)ので、冒険者という職につく人もかなり多いのだとか。
エリーの見た目が綺麗なので多少の注目も浴びているが、まぁ許容範囲内と言えるだろう。
受付カウンターに並んで少し待ち、自分の番が来たので冒険者登録をしたいと伝えると奥の部屋へ案内された。その場でサクッと登録しないのだろうか。
「昔はその場でやってたんだがね。たまにとんでもないステータスやスキルを持ってるやつが来た時に、一般の受付嬢だと守秘義務を守れないことがあったからな。今はこうしてわざわざ奥で面接するようになったのさ。」
と教えてくれたのは面接相手のギルド長。とはいえトップが面接とか暇なのか?
「さっきの理由とも若干繋がるんだが、身分証として提示できるものをそんなにほいほい出すわけにもいかんからな。ギルド長が信用できると判断したやつにだけ渡した方が合理的だろう?まぁ普通は身分証とか持ってるから俺経由で登録されてるやつはそんなに多くないわけだが。だからお前らの冒険者証は発行するなら特別仕様だぜ」
それって見せることになったら目立つよね。できるだけ使わないようにしよ…
「んで。お前らは身分証が欲しいからここに来たってことでいいのか?それだけが理由なら間違いなく俺は発行しねーぞ」
「…まぁ端的に言って生活には金が必要だからだな。俺は今までの記憶がほとんどないから自分がどんな暮らしをしていたか覚えてないが、これからこの街に住むのなら間違いなく金を稼ぐ必要が出てくるからだ」
「私は魔物と戦ったことは結構あるし、それなりに慣れてる上に向いてるんだから冒険者でいいかなーって思ってます!」
「なるほどね。ここで一つ伝えておこう。俺は他人のステータスを覗くことができる鑑定のスキルがある。嬢ちゃんの方は魔法特化な感じでステータスも既に150を超えてるし、スキルもあるからまぁ間違いなく冒険者に向いてるといえるだろうな。だが坊主、お前はスキルもないしステータスもまだ三桁に届いていない。まぁ初心者だと思えばそれなりのステータスだが、スキルなしはなかなか辛いかもしれん。それでも冒険者になるのか?」
…とりあえずステータス詐欺はきちんとできているらしい。というかギルド長さんしっかりしてんな。
「別に構わない。これから強くなればいいだけだしな」
「大丈夫、私が守るから!それにビシバシ鍛えてますので!ほんのちょっと前にはレイはステータスほぼ一桁に近かったので!」
「…どんだけスパルタで鍛えたんだよ。なら筋も悪くはないようだし認めてやってもいい。だがしばらくは俺の言うことを聞いてもらうぞ。依頼なんかはこっちから指定する。それでいいな?」
「あぁ、それで構わない。十分だ」
「ありがとうギルド長さん!」
こうして一応身分証は手に入った。
「そいつは一応今までこなした依頼数や難易度なんかで色分けされてる。金、銀、銅、白で金が一番上ってことさ。まぁ同じ色でも結構実力差はあるだろうからとりあえずの指標ぐらいに思っとけばいい。んでお前らのは俺が認めたっていう証明のために外側が青く塗られている。見た目の時点で明らかだから、俺に恥かかせるようなことすんじゃねーぞ」
うわぁ、まじで使いたくねぇ…。でも身分証出すときには使わなきゃいけないんだよね。はぁ…
「色違いってことで好奇の目は向けられるだろうな。遠巻きに注目されるくらいなら気にしないでやってくれ。絡まれて何かしらの被害を受けたのならその時は容赦する必要はない。まぁできれば殺したりはしないで欲しいが」
…なるほど。色々と動きやすいのは助かるな。
「とりあえず色々と討伐をこなしてもらうぞ。実力は普通の初心者と比べて十分高いしな。最近はなんだかやたらと魔物の量が増えていってて大変なんだ」
あのゴブリンとやらも数だけはものすごいいたしな。
「あまり目立ちたくないなら、冒険者専用の宿があるからそこに行くといい。その青縁のカード見ても別にフツーに対応してくれっから。」
何から何まで至れり尽くせりだなおい。