俺と不思議な少女
俺の名はレイ…というらしい。
自分の名前すらあやふやなのは記憶がさっぱり無いからだ。なのになぜ名前が分かったのかというと…
「おーい、早く行くよ〜」
そう、俺に声をかけるこいつが教えてくれたからだ。
こいつはエリイというらしい。イと言い直すのが面倒なのでいつもエリーと呼んでいる。
俺の幼なじみを名乗るこいつは、金髪ロングで年齢にしては背も胸もでかい。
まぁ年齢や幼なじみだというのもこいつの自己申告に過ぎないわけだが。
とりあえず美少女(?)と呼ばれるやつなのだろうと思う。
「どしたの?なんか考え事?」
「…あぁ、ちょっと色々思い返してた」
まぁ実際思い返すのもいいだろう。
ーーーーーー
「おーい、いい加減起きなよー」
俺はある日の夜に目が覚めた。いや起こされたが正しいか。
「…?ここはどこだ?」
「あら?何も覚えてないのかな?」
…そういえばなんとなく頭が痛む。
思い出そうとしてもほとんど何も思い浮かばなかった。
「すまんが何も覚えてないと言っていいかもしれない。
自分の名前も分からん」
「…あなたの名前はレイよ。私はエリイ!あなたの幼なじみよ!」
ほーん、俺の名前はレイというらしい。なんとなくそうだった気がする。
エリイと名乗ったこの美少女は幼なじみらしい。
「ところでなんでこんなよく分からんところで俺は寝てたんだ?」
そう、俺たちは草原にいる。記憶がないので分からないが、俺はこんなところでぐっすり眠るほどのんきな性格だったのだろうか。
「…私が来たときには倒れていたからそれは分からないわね。まぁこんなに心地良い草原だし、ここで寝ちゃうのも分かる気はするわよ?」
ふむ…確かに良い草原だが、なんというか違和感を感じる。そしてそれはエリイに対してもだ。
「…その答えをあまり信じられない。そもそも記憶がない状態で他人の言うことを鵜呑みにすることが俺にはできそうにない」
「…うーん、なるほどねー。確かにそれもそっか。でも私はレイを害するつもりはないよ」
んなこと言われても正直口ではなんとでも言えるだろと。
「そうだなー、レイの記憶を戻す手伝いをする…っていうのはどうかな?記憶がなくなったままってのも嫌でしょ?」
「…まぁ気になりはするが、戻すあてがあるのか?」
「あるといえばある、といったところかな。まぁそのためにまずレイ自身を強くしようと思ってるよ、強くなりたくないわけじゃないでしょ?」
それはまぁそうだな。エリイは強そうには見えないが。
「…私のこと弱そうって思ってるでしょ。んじゃとりあえずステータスを見せてあげるよ」
ほーん。ステータスとかあるのか。そのことすら覚えてないな。
「じゃーん!これが私のステータスだよ!」
エリイ
A:999
B:999
C:999
D:999
S:99999
スキル
なし
…なんだろう。記憶がないのに凄まじく突っ込みどころが多い気がする。
「…あっ!今のなし!こっちだよ!」
エリイ
A:57
B:45
C:157
D:146
S:16192
スキル
基礎魔法使い
「Aは物理攻撃、Bは物理防御、Cは魔法攻撃、Dは魔法耐性、Sは魔法を放つために使うポイントって感じかな、スキルを持ってればスキルが表示されるよ」
こいつ流しやがったな…。なんというか毒気が抜ける。こいつは思ったよりポンコツなのかもしれない。
「って言っても見せちゃったしスルーするのも誠実じゃないか。私は自分で自分のステータスを好きに創れるの。だから今のレイより強くなるのは簡単なのよ」
「……にしてはカンストしてるっぽいのが見えたがな。基本的に圧倒的に強いってことじゃないか」
「まーまーそこはあんまり気にしないで。とりあえずレイのステータス見せてよ」
まぁ自分の強さも気になるしな。表示してみるとしよう。
レイ
A:26
B:34
C:11
D:9
S:1100
スキル
なし
……。2度目の提示のエリイと比べても大幅に弱いな。こいつに従うしかなさそうだ。
「ふーん。一般人だとステータスは10前後だから、レイはそれなりに物理系に強いみたいだね。とりあえず物理側を鍛えていこうか!」
「俺にはよく分からんが、これで戦闘とかできんのか?お前と比べて明らかに弱いんだが」
「まぁそれはこれから鍛えていけばなんとかなるよ。私が自分のステータスをいじってレイに近いステータスになって戦ってあげるから。…あとちゃんと名前で、エリイかもしくはエリーって呼んでね!」
…よく分からんが名前にこだわりがあるらしい。とりあえずエリーの方が呼びやすいしエリーと呼ばせてもらおう。
こうして謎の金髪美少女幼なじみのエリイ(らしい)と白髪男のレイ(らしい)の旅は始まったのだった。