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さまざまな短編集

夕闇の破壊者

作者: にゃのです☆

 駆逐艦は狭い。

 戦艦とか重巡洋艦といった大型艦の知り合いからは良く笑い飛ばされていた。

 お前ら水雷屋は俺達のお守りなんだよ、でしゃばるな! そこいらのドンガメ乗りとでも飲んどけよ。などなど、罵倒されるたびに我慢してきた。

 だが、戦場は違った。

 敵は大型艦ばかり狙って砲撃、雷撃をした。

 俺が艦長をする一等駆逐艦は開戦以来、いまだに被弾したことはなかった。


「艦長。ここにいましたか」

「ああ、副長か。どうした。何かあったのか?」


 副長はいいえと言いつつ、ただのサボりです。と続けた。

 南方にある何もない岩礁で周りに見えるのはだだっ広い海のみで何もない。岩礁なので陸地もない。

 いくら任務とはいえ、敵の索敵外であるこの岩礁にタンカーと輸送艦を護衛しなきゃならなかったのか。

 暑いし、暇だし、何の変化もない。

 いつ来るかもわからない水上機を待っていたってどうにもならんしな。


「この作戦が終わったら、次は南洋諸島群ですかね?」

「副長。そんなことは俺もわからん。ただ、今はこの任務が速く終わってほしいだけだ」

「そうですね」


 会話もこんな感じ。

 次の任務なんて知ったこっちゃない。

 暇も、忙しいことも嫌いだ。


 この二日後に全ての作戦行動を終えて、最前線の軍港に帰港し次の任務が言い渡された。

 内容は重巡洋艦二隻が主力となった打撃艦隊の護衛と雷撃任務だった。

 味方の軍が占拠していた島に敵が上陸を開始したということだった。司令部は速やかに補給を完了させ先行する艦隊に追いつき指揮下に入れとのことだった。


「艦長、補給は完了しました」

「よーし、機関始動しろ。外洋に出たら第三戦速で一直線に向かうぞ」


 慌ただしい出港後、艦隊には三時間後には合流した。

 主力は重巡洋艦の二隻。雷撃隊の指揮をする軽巡洋艦二隻、それに付随する駆逐艦が俺の艦も含めて七隻。ということで駆逐艦は一隻あぶれる。だから、こういう無茶がきたりする。


「艦長、艦隊司令からです」


 一枚の命令電文。そこに書かれていたのは思った通りの無茶だった。


「単艦での偵察及び着弾観測に加え、敵の混乱するように撹乱(かくらん)してほしいときた、か」

「無茶振り過ぎませんか?」

「命令なら仕方ないだろう。したがわざるを得ない。だが、この先は詳しく命令されていないので好きにさせてもらうがな」


 そう副長には強がってみせたが、今回ばかりは被弾の可能性が高い。

 単艦で戦艦、重巡洋艦などの大型艦の待ち伏せる艦隊に殴り込めと言っているのだからな。

 そう決まって俺の艦が艦隊の先頭をいく。

 

 海域へは二日後の夕方に到着した。

 この時間だと、敵の艦隊がいると思われる辺りに突入できるのは完全に日が落ちてからになるだろう。そう思って速度を調整し、主砲、雷撃準備はとっくに配置済みだ。


「全員傾注! これより敵艦隊展開海域へ突入する。初動は偵察が主となる! 各員、命令あるまでは偵察に専念し発砲を禁ずる!」


 こうして、敵の海域へと突入した。

 味方艦隊は重巡洋艦の他に戦艦二隻、砲艦四隻が合流していた。支援火力は申し分ないものである。

 日が沈み暗闇となっている海を進む。

 海底が浅い場所から侵入しできる限り、影になっても不自然じゃないように操艦を行った。

 小島の脇を抜けると目標の島と広い海域、黒々と海面に浮かび上がる敵の艦艇群を発見した。


「敵艦隊発見。戦艦級、少なくとも重巡洋艦級以上が五隻以上います。ここは早めに砲座を打電しましょう艦長」

「各艦の正確な距離を測定。その後、素早く送信しろ。いぞげ~!」


 三十分ほどこの作業を行った。

 この間は敵からの発砲もなく、すんなり終わった。得られたデータもほぼ同時に送信していた。

 間髪を入れず艦隊から砲撃が開始された。

 空を切る巨大な砲弾の音がなんとも頼もしく思えた。

 着弾と同時に機関全開。

 砲弾が命中した艦からは火災が発生したり真ん中で船体が折れていたりと被害は大きかった。正確な観測のお陰で初弾から驚異的な命中率を叩き出すことができた。

 その砲弾の中を駆逐艦がスイスイと走り回り、補助艦、輸送艦、上陸した敵の集積所などを攻撃し甚大な被害を出した。

 敵側はこの日を魔の日と呼び、この駆逐艦のことをダスク・デストロイヤーと名付けた。

 


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