青い傘の少女
青い傘があったので
自宅に青い傘があったので
仕方なく持ち歩いた
けれど その誰でも使えるデザインの
無地の青の傘は
特に好みではなかったので
思い入れはなかった。
なので、雨が降ってきたときに
思わずさしたけれど
あまりに雨が降るので
その傘は壊れた
けれど、特に何も思わなかった。
たくさんの雨が降りすぎて
世界中が水で埋まってゆく
けれど 傘をさす気にもならない。
青い傘だ。
人間は青い傘だ。
少女はそう思って空を見上げた。
たくさんたくさん
雨が降ってくる。
たくさんたくさん
の人が死んだ。
溺れて消えては
壊れて朽ちた。
もうじき自分も青い傘だ。
少女は埋まってゆく
海になってゆく
22階の自宅のベランダから
ぼうっと空を見上げては
世界の終わりを
ずぶ濡れで見た。
どこにでもある青い傘
骨が折れて壊れて消えても
誰も気にも留めなかった。
もうじき自分の番
殆どの人と同じ
どこにでもある青い傘
そのまま埋もれて壊れて消えた。