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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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11話 終幕3

「そういえばガウ兄は今まで何やってたのさ?」


 二人が握手を交わした直後、エリスが俺たちの元にやって来てティガウロにそう聞いてきた。

 声をかけてきたエリスのほうを振り向くティガウロ。


「少し国王様に極秘任務を任されててな。お前たちには居場所をどうしても告げられなかったんだ。でも、お前の先生のおかげで全て終わってきたよ。危うく殺されかけたけどな」


 最後の言葉はマルクトにも向けられたものだった。

 マルクトもその視線に気付いて、目を反らし頬をポリポリとかく仕草をしている。


「そりゃマルクト先生だからね。ガウ兄の苦戦する仕事もちょちょいとこなすに決まってんじゃん」


 何故かエリスが自慢気に言っていたが、彼女にはうまく意味が伝わらなかったらしい。どうやらティガウロがどじ踏んで死にかけたと思っているようだ。


「いやいや今回の仕事はティガウロ君がいてくれたから結構スムーズに事が運んだよ。いなかったら、ボスを倒すことすら出来なかったかもしれないしな。今回は本当にティガウロがいてくれて助かったよ!!」


 エリスとエリナは「おー」と感心した様子でティガウロを見てくる。その妹たちの前でこれ以上余計なことを言うのは気がひけたので、素直にその賛辞を受けることにした。


「魔法の権威とまで呼ばれたあなたにそう言ってもらえて、僕も頑張った甲斐がありました」


 そう言ってマルクトに対して頭を下げるティガウロ、そんなティガウロにユリウスが声をかけた。


「うむ、今回プランクの構成員を生きたまま連れてきたのは、お前のお陰だ。よくやったなティガウロ。これより君には一ヶ月の休暇を与える。今回は本当によく頑張ってくれた。しっかりと休養をとるといい」


「ははっ……一ヶ月もですか?」


 ティガウロはユリウスに向かって片膝をつき頭を垂れるが、予想以上の休暇を与えられたことに驚きを隠せなかった。


「なんだ不満か?」


「いえ、そんなことはありませんが、さすがに休暇がありすぎなのではと思いまして」


「まぁ、そうかもしれないがこちらにもいろいろあってな。とりあえず詳しい話は君の父親に伝えておくから、今回はおとなしく従っておいてくれ」


 疑問は残るが、こちらとしては寧ろその方が良いのだろうし、変に王様に逆らって彼の不興を買うのは得策とは言えない。ここは素直に受けることにした。


「畏まりました。しかし、有事の際はいつでも出られるようにしておりますので、遠慮なくお呼びください」


「ああ、頼りにしているぞ」


 ティガウロはユリウスに向かって丁寧にお辞儀をした後、並んで立つ双子の二人の方を向く。


「というわけで、久しぶりに母さんの飯が食えるよ。そういえばなんでエリスはそんな格好してるんだ?」


「アハハ、いろいろあってアリスちゃんのドレスを借りたのよ。どう? お姫様みたいでしょ~」


 くるりと回ってからエリスはニヤニヤしながらティガウロを見る。ティガウロは顎に手を当てながらエリスの着ているドレスとエリスをじろじろと見る。


「どこにお姫様がいるんだ? ただのやんちゃな妹しかいないじゃない……か!?」


 そう言っているティガウロの腹部をエリスが思いっきりコークスクリューを叩きこんだ。

 腹部を思いっきり殴られ、ティガウロは膝をついた。


「クソ兄貴め! もっと他に言うことはないのか!! 一年ぶりの再開で大人の女性に変貌した私を見たらもっと言うことがあるでしょ!!」


「……そういうのはもっと出るとこ出てから言えよ。この暴力娘グハッ!!」


 エリスは思いっきりティガウロの顎を蹴りあげる。それでもティガウロはまったく引かずに口論を続ける。


         ◆ ◆ ◆

 

 その後もギャアギャアと口論をする二人を見て、マルクトは止めた方がいいのではないかと思いエリナの方を見る。


「いつものことなんで、気にしたら負けですよ。止めたって飛び火してくるだけですので、無視しといてください」


 マルクトの視線が自分に向いていることを知って、エリナはマルクトに二人の喧嘩の対応を教えた。


「いや、一応横にこの国の王様がいるんだから、大人しくさせた方がいいんじゃないのか?」


「……ああ、先生は知らないんでしたっけ? 私たちは結構昔からユリウス王のことを知っていますよ。お父さんがユリウス王の護衛やってるから、エリスが五歳の時からユリウス王はあの二人の喧嘩を見ていましたよ。ユリウス王もほら」


 そう言ってユリウス王の方を見るエリナにならって、マルクトもユリウスの方を見てみた。

 すると横に立っていたユリウスとカトウの二人が腹を抱えて声を抑えながら笑っていたのだ。

 ……これがこの国の王様とはとても信じられないな。


「……おいユリウスどっちが勝つと思う?」


「そりゃ、いつも通りエリスちゃんが勝つんじゃないか? ティガウロはおちょくるだけで手を出さないじゃないか」


「いや、今日こそはティガウロが言い負かすんじゃないか?」


「じゃあティガウロが負けたら?」


「銀貨十枚でどうだ?」


「わかった。エリスが言い負かされたら、……そうだな。この国一番の温泉旅館を用意してやるよ」


「よし!! 賭け成立だな。おらティガウロ、お前の本当の実力見せてやれ~」


 あいつら、何二人の喧嘩で賭け事やってんだよ。……おいティガウロなに黙って殴られてんだよ。そこは避けて何か言い返せよ!!

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