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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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10話 反撃10

 聖剣グラムを鞘に入れて居合いの構えをとっているマルクトを、シーガルは怯えた表情で見ていた。

 聖剣を砕かれたことで、同時に彼の勝つ自信も砕かれてしまったのだ。

 聖剣を砕く程の一撃を俺なんかが避けられる筈がない。そう思ってしまったのだ。


 《ルーン・真実》は、相手の攻撃を絶対に避けられる訳ではない。

 ただ、どういう攻撃が来るのかを所持者に明確に教えてくれる能力なのである。

 攻撃を避けれているのは、ユリウスの身体能力が高過ぎるのも要因の一つなのだ。

 攻撃さえわかっていればユリウスはどんな攻撃であれそのほとんどを避ける。

 しかし、今そのルーンを使っている男はユリウスの姿をしているだけでユリウスではない。

 いくら見た目が同じでも、いくら能力が同じでも、いくら魔法が使えても、結局中身はシーガルという別の人格なのだ。

 《ルーン・真実》が次にマルクトがどういう攻撃をしてくるのか教えても、その一撃を自分が避けられるとは微塵も思っていないのだ。

 そんなシーガルにとって、その情報が逆に自分を絶望で満たしてしまう。


 そして、聖剣レーヴァテインもシーガルを認めなかった。

 一時的とはいえ、聖剣としての力を発揮できる筈の剣がそう簡単に折れる筈がない。

 折れた理由は単純に聖剣レーヴァテインがシーガルに力を貸さなかったからだ。聖剣レーヴァテインが認めたのは、本物のユリウスであってシーガルではない。

 だからこそ、聖剣の力を引き出したマルクトによって剣を叩き折られるという結果を招いたのだ。


「……お前のルーンは確かに優秀だった。だが、本物のあいつの方がよっぽど強かったよ。それでも、お前の力は恐ろしいものだ。俺の独断で悪いがお前にはここで消えてもらう」


 マルクトの鞘に収まる聖剣が異常な程の輝きを放ち続けている。

 マルクトは自分のルーンで聖剣グラムを強化していく。

 マルクトの「convergence」はマルクトの体内にある魔力を収束する技である。マルクトは収束した魔力を腕に収束することで攻撃力を増やし、脚に収束することでスピードをあげている。その威力は収束させる量によって上がるが、四肢に負担がかかるためにマルクトは普段から数倍程度で抑えている。

 この「convergence」の最大の利点は、魔力を消費することがないということである。

 収束するだけで威力が上がるというものなので、マルクトも魔力を消費したくない時には重宝している。

 その「convergence」をマルクトは今聖剣グラムに使っている。

 その威力は数倍なんてレベルではない、数千、いや、数万倍にまではね上がっていた。


 マルクトは腰に携えた鞘から聖剣グラムを引き抜く。

 直後、聖剣グラムから放たれた光が一閃する。

 シーガルはそれを避けることも出来ず、マルクトの目の前で上半身と下半身を斬られ声も上げずにその場に倒れ伏した。

 しかし、聖剣グラムが斬ったものはシーガルだけではなかった。


 斬ったシーガルを横目にこの部屋から出ようと聖剣グラムを鞘にしまったマルクトの頭に土くれが落ちてくる。

 落ちてくる土くれに不快感を露にしたマルクトは上を見上げた。

 見上げれば、自分の上に存在している天井が今にも崩れそうになっていた。マルクトはそれを見た瞬間、「やり過ぎた」という言葉を残し、転移魔法によってこの部屋から離脱した。


 後に残るのは、上半身と下半身を斬られたシーガルだけだった。


         ◆ ◆ ◆


 マルクトはこのプランク本部前に転移したのだが、ティガウロのことをすっかり忘れていたことに気付いた。

 しかし、マルクトたちがいた本部の敷地は崩れ落ちていた。

 無事なのは考えにくい。


「……すまないな、ティガウロ。お前のことすっかり忘れてた。まぁ、あいつなら自分でなんとかするだろ。二十歳にもなって俺が面倒を見る道理はあるまい。さっさと帰ってユリウスに報告しないとな。あ~疲れた」


「まぁ確かにあなたと違って僕は自分でなんとかしますからね」


 マルクトは聞き覚えのある声に振りかえる。

 そこには、マルクトの忘れてきた青年が立っていた。

 ティガウロはマルクトの方を呆れた様子で見ている。


「チッ、生きてたか」


「なんで舌打ちしたんですか!? こっちのしたい行動先にとるのやめてくれません!!」


「……だいたいどうやって生き残っていたんだよ」


「あんたが絶対何かやらかすと思って先に出ていたんですよ!! ほらそこ」


 そう言って、ティガウロは自分の後ろの方を指さす。

 そこには、待ち伏せしていた組織の構成員やマルクトが意識を刈り取った職員たちがロープで縛られていた。

 しかし、忘れてきた構成員が一人を除いて全員無事だったことなんかよりも、マルクトは別のものに驚かされた。

 マルクトが驚かされたものは構成員の周りにいる動くシルバーカラーの怪物だった。


「あれってもしかしてゴーレムか?」


「……そうですよ。それがどうかしましたか?」


「……なんであんな奴らがここに?」


 ゴーレムといえば凶暴な鉱石の化け物で採掘場で現れることがある魔物だ。しかし、こんな街中に現れることは絶対にない。


「……ああ、なるほど。もしかして俺のことも聞いていなかったんですか?」


 そのティガウロの言葉に頷くマルクトを見て、ティガウロは自分の力を説明した。


「………なるほど、つまりあれはお前が造り出した鉄のゴーレムか」


「生きてはいないですがね。命令に忠実な僕の兵隊です。……ていうかそれよりもあなたの方が何したんですか? なんであんなことになってるんですか!! ていうかロキのやつは? ……まさか逃げられたんですか?」


 まくしたてるティガウロは、魔力切れになりかけているマルクトを容赦なく質問責めにしてくる。


「とりあえず、そういう詳しいことは帰ってからだ。この国の兵隊が来るからな」


 まだ何か言いたげだったが、ここから離れた方がいいという意見には賛成だったので、ティガウロも特に反論はしなかった。

 マルクトは自分の懐から「condensation」で作った魔力の結晶を砕いて魔力を補給した。

 その後、空間転移の魔法を使い、構成員を全員をそのなかに放り込んで皆のいる城に戻った。

(ちなみに構成員を放り込んでくれたのは忠実なゴーレム君たちです)

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