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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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10話 反撃7

 シーガルがシャムシールを構えたのを見てマルクトも本気で相手をすることにした。

 マルクトは「embodying」と呟き自分の魔力を具現化して、武器を作り上げた。

 マルクトの手元がひかり輝く。光が収まった時、マルクトの手には白い刃がついた黒い柄の大鎌が握られていた。

 その大鎌は禍々しいオーラを纏っており、人の恐怖心を煽るデザインになっている。まるで死神の携える鎌を彷彿とさせる見た目だった。

 マルクトが大鎌を構えたことにより、シーガルとマルクトの戦いが始まった。


         ◆ ◆ ◆


 マルクトはシーガルを圧倒していた。

 もはやその言葉でしか表現のしようがない程の戦いであった。

 鎌を振るうマルクトが追い詰め、顔に恐怖を刻まれたシーガルが逃げ惑う。

 何故こんなにも圧倒的な戦況になってしまったかというとそれには理由があった。

 第一にシーガルはマルクトの半径一メートル以内に近付くことが許されなかった。

 シーガルの握るシャムシールは五十センチ程の刀身だったため、シーガルはマルクトにシャムシールを届かせることができなかった。

 要はシーガルの間合いは数手で完全に見極められ、その範囲にマルクトが近づかせなかったのだ。

 そのため、シーガルは攻撃に転じることすら許されず、防御に専念せざるをえなかった。

 対して、マルクトの大鎌は二メートル程の長さで、離れていてもすぐに攻撃してくる。


 そして、シーガルにとって一番の懸念材料が先程から飛んでくるレーザーや火の玉といった魔法の類いであった。

 マルクトの攻撃は大鎌を振るうだけではない。

 大鎌で攻撃した直後に小型魔法で攻撃することにより、相手に体勢を立て直す時間を与えないのがマルクトの本気の戦闘スタイルであった。


         ◆ ◆ ◆


 逃げることに専念したシーガルは、なんとか扉から部屋の外に出ることができた。

 しかし、逃げ惑うシーガルを追って部屋から出てきたマルクトの大鎌が襲いかかってくる。

 それをシャムシールでなんとか受け流そうとするが、マルクトの重い一撃に耐えられず、シーガルは体勢を崩され床に背中から叩きつけられた。

 マルクトの方をシーガルが見ると、マルクトは火の玉を空中に浮かべ、こちらに手を向けていた。


 マルクトは容赦なく火の玉をシーガルに向けて放つ。

 小型魔法の筈なのにその威力は普通の小型魔法とは桁違いだった。そのため爆炎に耐えられなかった廊下の床が抜けた。

 そして、シーガルはその穴から下の階層へ悲鳴をあげながら落ちていった。


「ありゃ、床抜けたか? ちょっと威力強すぎたかな? ……まぁ、いいか。本気で来ていいって言ってたし」


 そう言ってマルクトは下の階層に飛び降りた。


         ◆ ◆ ◆


 天井からパラパラと瓦礫が落ちてきている。先程の爆発が原因なのは明らかだった。

 シーガルは瓦礫を踏みながら壁の前で膝をついた。


「くそっ、確かに本気でこいとは言いましたけど、まさかここまで強いとは」


 壁に手をつきながらそんなことを呟いて、シーガルはよろよろと立ち上がる。

 周りは砂埃が舞っており、周りの様子がわからない。

 この砂埃を利用して逃げだそうと考えた時だった。


 風切り音が鳴り、風圧で砂が飛びシーガルを襲う。

 急いで両腕で顔を覆うシーガル、そして当たってくる砂が減って目を開ける。

 すると先程まで周りが見えなくなるほどの量の砂埃が突然無くなってしまっていた。

 そして、そこには大鎌を振るった跡が見てとれるマルクトが立っていた。

(まさか、大鎌を振って砂埃を吹き飛ばしたのか!?)

 そんなことを考えたシーガルだったが、マルクトがこちらに手を向けたのを視て回避行動に移った。

 シーガルが回避した直後、さっきまでシーガルが立っていた場所に規模の小さい爆発が発生した。

 その爆発によって生じた爆風が、シーガルを吹き飛ばして壁に叩きつける。

 その衝撃で意識が朦朧としていたが、マルクトが近付いてくるのを見て大声で喚いた。


「いくら本気で来いとは言ったって限度があるでしょう!! 少しくらい同情して手を抜くとか普通やるでしょう!!」


 その言葉を聞いたマルクトは、大鎌をシーガルの目の前に突きつけながら言った。


「何故お前に手加減しなくてはならないんだ? 俺の生徒を危険な目に遇わせた組織のボスだぞ? 同情だと? よく言えたものだな。お前さっきの話をユリウスの前で言ってみろよ。嘘だとすぐばれるぞ?」


 その言葉に冷や汗を出しているシーガル。明らかにその顔には動揺が浮かんでいた。


「お前の前半部分はおそらく本当なんだろ? それは俺にもわかる。だが、バルトっていうおっさんとアリサの二人を死なせるつもりが無かったってのは嘘だな」


「嘘ではない。私は本当に」


「だったら何故お前はあの二人をあんな危険な任務に送りだした? あの学園の警備は国の機密情報もあるから厳重なのは知っているよな?」


 シーガルの言葉を遮るようにマルクトはそう言った。その言葉にシーガルは目をそらした。


「それなのに、現地の学園を中退していた子どもを使っていたのは何故だ? しかも彼らが下手打って捕まっていたにも関わらず決行していたのも不可解だ」


「それは……情報を得るためだ。それに決行は元からその日にやると決めていたからだ!」


「お前に彼らを大切に思う気持ちがあったら、そんな失敗する可能性の高い作戦をあんな少人数でさせる筈が無いだろう?」


「……それは、少人数の方が隠れやすいと感じたからで」


「それなら、なおさら今回のようにあのルーン持ちの二人の方が適任だったんじゃないのか? それなのに成功率の低いフェンリルって部隊を使ったのは何が狙いだ? お前の本当の目的はなんだ? 答えないなら、意識を奪ってからユリウスの尋問にかけるがいいんだな?」


 シーガルはユリウスという名前を聞いた瞬間、これ以上黙っておいても無駄だと悟った。

 彼もユリウスの能力が嘘を見抜くものだということは聞いていたからである。


「……くそが! そうですよ!! あの二人にはあの場で死んでもらうつもりでした。もしも彼らが成功すれば潜ませていたモーガンを使って全員殺す予定でした!! 全て計画の内だったのですよ」


 マルクトに問い詰められていたシーガルは開き直ったようにべらべらと喋り始めた。


「プランクが出来た当初はさっき言ったように彼らを殺すつもりなど微塵もなかった。しかしあの二人は私の意見に反対するようになったのです。それは良くないだの、やらない方がいいだの。しまいには、今回のマゼンタ王国乗っ取り計画まで批判してきたのです。この作戦を決行したい私にとって彼らが邪魔になってきたのですよ。だからあんな無謀な作戦を無理矢理決行させて二人を葬ることにしたのです!!」


 そう言ったシーガルは、目が血走っていた。


「私があの国の王となれば、この世界を征服するなど容易いことなのに、何故それがわからない。何故邪魔をする?」


 正真正銘のくず野郎だな。親友を殺すために俺の生徒を巻き込んだってのか? 王になるなんていうくだらないことのために、俺の生徒を危険に晒し、俺の友人は死にかけたというのか。

 あり得ない。こんなくだらないことのために、何故普通に暮らしていきたいだけの俺たちが巻き込まれなくちゃいけないんだ。


 マルクトは、怒りに我を忘れそうになるが、自分の中の怒りを一度抑え込む。戦闘中に怒りで我を忘れれば、絶対に後悔することをマルクトは知っている。


「……お前に王が務まる訳無いだろ」


 マルクトは気を鎮めるためにそう言った。しかし、その言葉を聞いたシーガルが急に高笑いを始めた。


「ククククク、あっはっはっはっは!! 面白い冗談ですね~。そういえばあなたは何も知らないのでしたね。ならばお見せいたしましょう。私の神より与えられし力を!!」


 そう叫んだと同時にシーガルの見た目が変化していった。

 紫の髪は金色になり、身長はマルクトと同じくらいまで伸び、そして、顔は昼に見たそれと同じになる。

 シーガルは、ほんの数秒でマゼンタ王国の王であるユリウス・ヴェル・マゼンタになってみせた。


「これでどうかね? 私が王にふさわしいことがわかってもらえたかな?」


 シーガルはにやつきながらそう言った。

 そして、マルクトはその姿を見て確信する。

 この男はここで消しておいた方が良いと。

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