表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
65/364

10話 反撃3


 今回俺が来ることになったこの国は、北の方にあるクリンゴマという国だった。

 先程ティガウロから聞いた話によると、大陸の中でも北東の末端に位置しているらしい。

 ユリウスからは距離と方角しか聞いていなかったので、こういう国だとは思っていなかった。


 この国には魔法使いが一人もいないのである。

 それはこの国の政策で、魔法使いを国に滞在させてはならないというきまりがあるからなのだ。

 つまりこの国には魔法ランクが白の人間しかいない。

 そのため、こういった国のことを俺たち魔法使いの間ではホワイト国家と呼んでいる。

 ちなみに他にも二十ヵ国程ホワイト国家が存在しているが、このクリンゴマ王国はその中でも結構有名な国で、魔法使いを敵視する傾向が強い。

 確かにこの国なら、プランクの思想も受け入れられてもおかしくはないだろう。

 俺もこういうホワイト国家の情報だけは知っていたのだが、まったくと言っていいほど、他国に興味がなかったからな。地理には疎いんだよな。ユリウスも向かう国の名前くらい教えてくれればいいのに。


「ここです」

 マルクトがユリウスに対して、情報くらいしっかり寄越せ!! と心の中で考えていると、ティガウロが急に立ち止まって、ある建物を指さす。

 その建物は白い一戸建ての家にしか見えなかった。

 しかし、周りに建物がまったく見当たらず、広い敷地の中にポツンとその家だけが建っていた。


 俺は身を隠すために、ティガウロから渡された灰色のローブを身に纏っていた。

 ここまでの道のりでは、人通りの少ない道ばかりを選んで進んでいたので、人には会わなかったが、ここからは敵地に乗り込むのだから気を引き締めなくてはならない。

 できるだけ正体がばれたくない俺たちにとって、素顔をさらすなんてことは出来ない。もしもばれればこの国と俺たちの国との戦争に発展してしまう可能性が高いからだ。そのため、俺とティガウロはフードを被って完全に姿を見られないようにした。


「これから乗り込みますが、準備は大丈夫ですか?」

 ティガウロがそう確認してきた。

 俺は大丈夫だと言おうとしたところで自分の魔力が結構少なくなっていたことを思い出した。

 ここに来る前に結構ルーンを使って魔力を消費しまくっていたからな。そのうえ、この国まで結構距離があったせいで、転移魔法で魔力を予想以上に消費してしまった。そのため、今は魔力が尽きかけている状態だった。


 マルクトは、右胸のポケットから白くて小さな結晶を取り出した。

 どんぐりくらいの大きさの丸い結晶を見てティガウロが尋ねてきた。


「……それはなんですか?」


「これか? これは、俺のルーンで作った魔力の塊だよ。これには俺の魔力の半分が込められていてな。解放することで俺の魔力の半分が回復するんだ」

 そう説明したマルクトは「リリース」と呟いた。

 その言葉に反応した丸い結晶は砕け散り、マルクトの体に光の粒となって吸収されていく。

 それを見ていたティガウロは唖然としていた。


「どうした?」

「……強すぎですね。魔力が回復するって結構ずるいですよ。それって僕でも回復できるんですか?」

「いや、これは俺の魔力だから回復するんだ。お前に使うと拒絶反応が起きて、血が逆流して人体が破裂する。だから、お前には使えないんだ」

「なるほど……わかりました。つまり、僕は魔力が回復できないんですね。それだけ聞ければ充分です。では行きますか?」

「ああ」

 そのやり取りを終えたマルクトとティガウロの二人はプランクの本拠地に乗り込んでいった。


 ◆ ◆ ◆


 マルクトは家の扉を蹴破った。そして、駆け足で廊下を抜け、人の声がする部屋の中に突入した。

 部屋の中には、職員のような格好をした人が数名いて、書類を片付けている様子だった。

 彼らはいきなり扉を蹴破ってきた二人を見て驚いていた。

 その中にはマルクトたちと同じようなローブの男がいた。


 マルクト達の羽織っているローブはティガウロがプランクの支部から勝手に持ってきたものだ。つまり、組織の構成員だと証明するローブなのである。

 

 そいつはそのローブを羽織ってはいたが、マルクト達とは違いフードはしておらず、一本の毛根すらないハゲ頭をさらしていた。

 その男はマルクトたちを見ると驚いた表情になり、部屋の奥に入っていった。


「お前はローブのハゲを追いかけろ」

「……わかりました」

 マルクトは、ティガウロにそいつを追うように指示をだした。

 その指示に何か言いたげなティガウロだったが、口論している場合ではないので、とりあえずマルクトの指示どおりにその男を追いかけていく。

 そして、残ったのはマルクトと職員たちだけだった。


「あんたたちには悪いが少し眠っていてもらおうか」


 そう言ったマルクトは、「マニピュレイト」と呟いた。

 その言葉に反応したようにマルクトの手から見えない糸がでてきた。とは言うものの、マルクトには当然見える。見えないのは職員達だけだ。

 その見えない糸はそこにいた六人の職員に触れた。その瞬間、それに当たった職員たちは急に机に倒れ伏した。マルクトが確認すると彼らは意識を失っていた。


 「マニピュレイト」とは、マルクトの《ルーン・操作》の技の一つで、自分の魔力を体内に入れられた相手の体を操ることができる。

 しかし、意識を操ることはできない。

 今回は相手の意識を奪うという結果にとどめた。

 相手を操るには、相手の残存魔力と同等の魔力が必要になる。そのため、あまり連発はできない。しかし、最長でも一日は操ることができ、同時に何人でも操ることができる。


 マルクトはそいつらが全員意識がないことを確認すると、ティガウロのあとを追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ