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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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9話 他国からの侵入者9


 パーン

 と破裂音が室内に鳴り響き、ユリウスを囲んでいた男の一人が倒れた。

 そこにいた全員が音の方向を見ると、ユリウスが招待した者たちに銃を向けていたうちの一人がユリウスたちの方に向けて銃を構えていた。

 その銃口からは硝煙が漂っていた。

「何をやっているのですかッ!!」

 ゲラードの怒鳴る声は、当然味方を撃った男に向けられたものだ。

 しかし、銃を撃った男はそれに反応しない。

 だが、次の瞬間、招待した客たちを囲んでいた四人が一斉に銃を乱射してきた。

 その弾丸はユリウスの前に立つ男たちに当たり、百人以上いた敵が徐々に減っていく。

「……助けて、くれ」

 銃を撃っている男の一人がそう嘆くのがこちらの方まで聞こえてきた。

(なるほど……これが合図か)

 ユリウスがそう考えた時だった。

「くそっ、全員、撃ち返しなさい!」

 ゲラードがその場にいる全員にそう指示を出した。

 さすがにその言葉にユリウスも焦った。

 なにせ、彼らの後ろには招待した客たちがいるのだ。

 彼女たちに流れ弾が当たってしまうのはなんとしても避けたかったユリウスにとってそれは不味すぎる。

 そのため、ユリウスも急いで止めようとしたのだが、時既に遅く、彼らはすでに銃を味方に向けて撃っていた。

 数十人の弾幕は凄まじいもので、撃ち終わったあとも硝煙が漂っており、結果が見えなかった。そして煙がはれた時、そこにあったのは四人の死体と、すやすやと檻の中で寝息をたてる少女たちだった。

 それを見たユリウスは安心すると同時に敵を打ち払うために剣を抜いた。


 ◆ ◆ ◆


「……いったい……何が起きたのですか」

 ゲラードがそう呟いた時だった。

 再び、ユリウスを囲んでいた男たちの中から悲鳴が聞こえてきた。

「今度はいったいなんです……か!?」

 ゲラードが声を男たちにかけようと振り向くと目の前まで迫ってきていたユリウスと目があった。

 ユリウスの持つ剣の攻撃を間一髪のところでゲラードはなんとか持っていた杖で防いだ。

「貴様!! いったい何をするのですか!! 分かっているんですか? こちらは貴方の妹や客人を人質にとっているのですよ!!」

 ユリウスは剣を振るう手を止め、ゲラードの言葉を鼻で笑った。

「はっ、やれるもんならやってみろよ。お前がアリスに手を出す前にお前の息の根を先に止めてみせるさ」

 ユリウスはそう言い放ち、再びゲラードに襲いかかる。

 ユリウスの剣技は見る者を魅了する程洗練された動きだった。ユリウスの握る剣が絶え間なくゲラードを襲う。

 体勢を崩されたゲラードでは、その攻撃を捌ききれない。

 敵でさえユリウスが勝つと思ったその時だった。

「あはは、あははははははははははは!!」

 その笑い声と共にユリウスの左腕が斬り飛ばされた。


 ◆ ◆ ◆


 その光景をアリスは半覚醒の状態で見ていた。

 兄の左腕が斬り落とされ、血飛沫がその場に広がる。

 兄の呻き声でアリスは完全に目が覚め、

「お兄様ーーーーーーーッッ!!」

 と叫んでいた。


 先程までユリウスが追い詰めていた男が、再び顔に笑みを刻み、

「遅かったですね。……ですが、助かりました。感謝しますよヴェルニーチェ」

 ユリウスの腕を切り取った相手に語りかけていた。

「そいつが、この国の王様で英雄ってやつなんだろ? こんな雑魚じゃ相手にならねぇじゃん。さっきの東洋人の方がまだ楽しめたぜ」

「ほほう、貴方を楽しませるとは、その方もなかなかの手練れのようですね。でもまあ、貴方がここにいるということは当然殺してきたということですよね?」

「ああ、お前が呼ばなかったら、もう少し楽しもうと思ってたんだけどな。確かカトウテツヤって名前だったな」

 ヴェルニーチェと呼ばれた男とゲラードの会話に痛みで顔を歪ませているユリウスは聞き逃せないものがあった。

 ……カトウが……死んだ?


「ふざけるな!! あいつがそう簡単に死ぬ訳ないだろ!!」

 ユリウスは痛みを堪えながら立ち上がる。

 左腕の傷が、もはや戦える状態ではないことを表していたがユリウスにとってそんなことはどうでも良かった。

「カトウを殺しただと? 寝言は寝て言え。あいつの強さは俺が身をもって知ってるんだぞ! あいつがお前のようなやつに殺されるはずないだろ!!」

「へ~、まだお前分かってないんだ。身をもって知っているんなら、自分の状態見てみなよ。左腕がそこに落ちてるの見えないの? 現実が見えてないんなら、わからないまま死ねば」

 そう言ったヴェルニーチェは指を横に素早く振る。

 ユリウスは再びヴェルニーチェに斬られる、筈だった。

 その仕草を見る前にユリウスにはこれから起きる現象がまるで分かっていたかのように後ろに素早く避けた。

「……お前、まさかルーン持ちか?」

 目の前で起きた現象はヴェルニーチェにもユリウスにも信じられない事態だった。

 ユリウスが先程までいた空間にまるで斬ったかのような傷が生じていた。

 すぐに傷はなくなるが、ユリウスの動揺はなくならない。

 今の現象を見て、さすがのカトウでもあれを初見で防ぐのは難しいのではないか?

 ユリウスはそう思い始めていた。

 目の前の男の言っていることの信憑性があがってしまったのだ。

「……なんで、避けられるんだよ! お前にはまだ俺の切断を一回しか見せていないはずだぞ!!」

 しかし、動揺しているのは、ユリウスだけではなかった。

 まるで、ヴェルニーチェが何を行うかがまるで分かっていたかのように避けたユリウスに彼自身も驚いていたのだ。

 そんな動揺によって動けなくなった二人を現実に引き戻したのは、冷静になったゲラードの言葉であった。

「貴方が私たちに敵意を向けるのは仕方ない。しかし、人質がいるのに攻撃をするなんていただけませんね。……さて、当然罰を用意しなくてはいけません。あまり気がのりませんが、貴方の妹さんにはここで死んでいただきましょう」

 そう言うと、ゲラードは意気揚々と手に持っていた二本のナイフをアリスのいる方向に向けて投げた。


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