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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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9話 他国からの侵入者3


「状況は最悪であり、ラッキーだ」

 カトウの見解に疑問が生じるマルクトとユリウス、その二人の視線を無視してカトウは続ける。

「今回の侵入はもう敵が心臓部まで到達されているのは知っての通りだ。俺たちは完全に後手にまわって、全く面白くない。ここまではいいな?」

 そこに文句はないため、頷くマルクト。

 ユリウスはというと少し複雑な顔をしていた。

「だが、ユリウスが俺たちをここに案内してくれたお陰で、俺たちは自由に動ける。これは大きなアドバンテージだ。敵の情報を得れたのも大きいな」

 カトウの視線にユリウスは一つ頷くと、先程得た情報を開示した。

「今回乗り込んできたのは『プランク』という組織らしい。魔法使いを邪神の血をひく悪魔だと罵る組織で、昔はただの迷惑な連中だったんだが、ここ数年で規模が拡大している。最近では俺たちも無視が出来ない程過激な行動もとっている。諜報部の話によると前回の事件も、この組織が引き起こしたものらしい。そして、今回の件では、プランクの幹部が二人来ているらしい。実力まではそいつらも知らなかったみたいだが、なかなかの手練れだと考えた方がいい。幹部の一人はボスの指令により、兵士の惨殺を任せられているらしい。言ってなかったのはこれくらいだろうか?」

 ユリウスの説明が終わるとマルクトが手をあげて発言する。

「これはまだ確定事項ではないんだが、今回の通信魔法が使えないのはほぼ確実に敵の工作だろう。おそらくだが、向こうにもルーン持ちがいると見ていいと思う」

「……やっぱり?」

 その言葉に、予想はしていたが確定しきれていなかったカトウが尋ねる。

「俺やユリウスでも通信魔法が使えなくなってたんだ。それに俺の記憶が確かならプランクっていう組織の連中に魔法使いはいなかった筈だ。いたとしてもアリサみたいに正体を隠しているだろうな。まず間違いなく、通信を使えなくするルーンを持つ奴がいる。そして、ルーン持ちはおそらく幹部のどちらか、もしくは両方だな」

「それなら、マルクトとユリウスが人質救出に動いてくれ。俺は兵士を襲っている奴の相手をする。おそらく、兵士の治療は実力的に俺が一番適任だろうしね」

「ああ、それでいこう。ユリウスもそれでいいな?」

 ユリウスが確認の言葉に頷くのを見てからマルクトは、

「これより、人質奪還作戦を開始する。最優先は人質になっている者の安全及び無傷による脱出だ。そして、俺たちも死なないことを心掛けろ」

 その言葉に二人は頷き、三人は部屋を出てそれぞれの役割をはたしに向かった。


 ◆ ◆ ◆


 ~マルクトたちのもとに侵入者が来る数分前~


「ベルちゃん遅いね~。御手洗いに行くって言ったっきり帰ってこないよ?」

 エリスは御手洗いに行くと言ったっきり、なかなか帰ってこないベルを心配していた。

「このお城は広いですからね。ベルさんは幼いですから、きっと迷子になられているかもしれませんね」

 エリスに向かってそう答えたのは、デザートのケーキを優雅な仕草で食べるアリスだった。

 彼女はマルクトが勤める魔導学園エスカトーレに通う生徒の一人である。

 エリスたちとは同じクラスであり、魔法使いのランクも薄青ランクで、マルクトも彼女の魔法技術の精密さには一目置く程の優等生であった。

 ちなみに、これはここにいる全員が今日知ったことだが、どうやらアリスは、この国の王ユリウスの妹だったらしい。


 アリスの答えにメグミは、慌てて席を立った。

「ちょっと私、迎えに行ってきます」

「安心してくださいメグミさん。この城には使用人もいますから、誰かに会えばここまで案内してくれます」

 慌てて部屋を出ていこうとして扉に手をかけたメグミをなだめるようにアリスは声をかけた。

 メグミはその言葉を聞いて安堵したように胸を撫で下ろし扉から手を離し皆の元に戻ろうとしたときだった。

 メグミの目の前の扉が開かれた。

「遅かったねベルちゃん迷ってたの?」

 なかなか帰ってこなかったベルが帰ってきたのかと思い、メグミは声をかけたが、そこに立っていたのは金髪の少女ではなかった。


「おとなしくしていてもらおうか?」

 そう声をかけ、部屋に入ってきたのは武器を構える屈強な男達を率いる白い髭の老人だった。

 その状況を見て、臨戦体勢をとるメルランにならい、エリスとエリナも戦闘体勢になる。

 メルランは腰につけていた鞭を取り出し、エリスは氷の剣を魔法で作り出し、エリナは今日はさすがに弓は持ってきていなかったので、魔法を使う構えをとった。

 アリスは状況が未だに理解出来ていないのか、混乱している様子だった。

 だが、

「キャッ!?」

 一番近くにいたメグミは屈強な男の一人に押さえこまれた。

 魔法を使う時間的な余裕もなく、非力なメグミが屈強な男に筋力で勝てる筈もなく、彼女は簡単に捕まってしまった。

「皆さん武器を収めてください。この娘がどうなってもいいのですか?」

 その言葉とともにメグミに剣をつきつける髭をはやした老人の姿を見て、三人は武器を収める。

「指示に従っていただき、ありがとうございます。私は『プランク』という組織で幹部を勤めさせていただいているゲラードと申す者です。『ヘル』という特殊作戦部隊を率いているのですが、あなた方のような子どもにはわかりませんよね。もちろん抵抗しないのであれば、危害をくわえるつもりはありません」

 ゲラードと名乗った男は、彼女たちの元に近づき、メグミを解放した。

 しかし、すぐに椅子に座っているアリスの腕をとった。

 そして、この状況に混乱していたアリスを無理矢理自分の元に引っ張った。

 アリスは腕を引かれる痛みに顔を苦痛で歪ませると兄に助けを求めた。

「いやっ、離して! 助けてお兄様!」

 この中で唯一ユリウスの居場所を知っているアリスの悲鳴は、ユリウス達に届いた。

 だが、反応は返ってこない。

 それどころか助けてと言ってから急に、使えなくなった気がした。

 その感覚はアリスを不安にさせる。

「その子を離しなさい! 人質なら私がなるわ」

 アリスの不安を拭うかのように、メルランはそのよく響く声で、アリスを連れ去ろうとしていたゲラードを制止させる。

「いえ、結構です。貴方のような女性では、人質の意味がありません。人質とは、ひ弱で可憐な少女であればあるほど、相手に躊躇させることができるのです。貴方では何一つ当てはまりません。貴方では駄目なんですよ」

 その言葉にメルランは怒りを覚えるがアリスを人質にとられているため、グッと笑顔で堪える。

 その笑顔はひきつっており、怒っている様子がひしひしと伝わってきてなかなかに怖い。

「では、ここまでうまくいっているので、ここから計画を最終段階に移行します。アルファチームはこの女性たちを見張っていなさい。ベータチームは廊下に出てこの国の王を足止めしてきなさい。できることなら瀕死状態だと助かるのですが、無理はしなくてもいいですよ。それから、オメガチームとゼータチームは私の側にいなさい」

 屈強な男達に指示を出したゲラードは、ニヤリと笑い、

「さて、うまく動いてくださいね。この世界を破滅に導く我が王のためにね」

 そう呟き、彼女たちを屈強な男たちに持ってこさせた檻に放り込んだ。


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