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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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9話 他国からの侵入者2


「助けて!」

 それは、三人の元にアリスによって送られてきた通信魔法の内容だった。三人はその言葉に何かが起こったことをすぐに感じとる。

 顔が青ざめているユリウスは、アリスに通信魔法を飛ばす。


「アリス! 大丈夫か? 何があったんだ! ……アリス? ……おい、応答しろ!!」


 だが、ユリウスの言葉に返答はない。

 それどころかアリスにユリウスの言葉が届いたとは思えなかった。

 通信魔法が使えない。

 ベルに連絡をしようとして同じく通じなかったマルクトも同じ考えに至っていた。

 三人は通信魔法で連絡がつかないことに動揺する。


 そんな時、ユリウスの部屋の扉が開かれた。

 マルクトたちの現在いる隠れ部屋には、ユリウスの部屋の状況が伝わるようになっており、それが侵入者の存在を伝えてきたのだ。

 ユリウスの部屋を映していた映像には、見知らぬ男二人が剣を持って部屋に入ってきているのが見てとれた。


 侵入者の男二人は何かを探しているのか、先程から部屋を荒らしている。見知らぬ男二人が部屋を荒らすのを黙って観賞する趣味は三人にはない。

 むしろ手がかりが向こうからやって来たのだから、とるべき行動は一つであろう。

「マルクト、あの二人を捕まえて来てくれないか?」

「わかった。十秒待ってろ」


 ユリウスの頼みに対してそう言ったマルクトは、その場から姿を消した。

 映像を見ると、いきなり出てきたマルクトに慌てる二人の男が何かを言おうとしていたが、問答無用でマルクトはそいつらを一発ずつ殴って気絶させ、二人の襟首を掴んで、ユリウスの部屋から消えた。


 マルクトの空間転移の行き先は当然この部屋で、彼の元居た場所に空間の裂け目ができ、そこに侵入者二人を連れてやってきた。

 転移したマルクトは気絶させた男二人を床に叩きつけた。

 その衝撃で起きた二人の男は何が起きたのかと戸惑っていたがユリウスの姿を見ると、ユリウスの方に急に襲いかかってきた。


 ちなみに武器は取りあげていないため、剣を使用しているが、マルクトに殴られたり、床に叩きつけられて無事な筈もなく、男たちはよろめき、まともに動けていない。

 ユリウスはそんなこと関係なく、一本背負投のかたちで二人をぶん投げた。

 本棚に叩きつけられて、完全に動けなくなる男たちをカトウが鋼糸で縛りあげることで男二人は完全に拘束された。

 ユリウスは男の一人の元に歩み寄り、そいつの襟首を掴んで問い詰める。

「お前ら妹たちに何をした? 返答によってはお前らを殺すぞ」

 ユリウスのもう片方の手の中には、火の玉が浮かんでおり、ユリウスはそれを襟首を掴んでいる男に向けて至近距離で放つ構えをしていた。

 ユリウスの剣幕とその火の玉にびびりながらも男二人はユリウスにくってかかる。

「じゃ、邪神の血をひくお前ら魔法使いの国は、十年前に大罪を犯した。よって、お前らは償わなければならないのだ。だが心配しなくていい。お前の死は、我々の崇高な目的の礎になるだろう。どうせお前の妹もすぐにあとを追うさ」

 そう言いながら、ニヤニヤと苛つく顔をユリウスに向ける。

 これ以上の計画を説明する気がないのか、男はそれ以上喋らない姿勢を見せていた。


 しかし、それはユリウスには通用しない。

 ユリウスの瞳が少し光を帯び、その光が揺らめく。

 それから数十秒が経ち、ユリウスが男の襟首を離して立ち上がった。

「お前らの計画と目的はよくわかった。マルクト、食事会に参加したメンバーは、食事をした部屋で監禁されている。ただ、敵の幹部と侵入者の大半がその部屋にいるらしい」

 その言葉に頷くマルクトたちとは対照的に二人の男は顔を青ざめる。

 それは、まるでなぜ自分たちの計画がばれているのか理解できていない様だった。


 ユリウスのルーンは《真実》という能力である。

 この能力の最大の特徴は、相手の隠している情報を強制的に暴くというものであり、相手の秘密も情報も等しく暴く、それに抵抗なんて出来やしない。

 嘘の情報や虚言は一切効果がなく、本人がたとえその情報を真実だと思いこんでいても、それは嘘であるとそのルーンは見抜く。魔法で嘘を見抜くものもあるが、それとこのルーンでは内容の信憑性が雲泥の差である。

 マルクトもカトウもそれを知っているからこそ、ユリウスに嘘はつけない。

 嘘をつけば弱みを握られるようなものなのだから。


 ユリウスは下っ端から情報を暴いた後、部屋を飛び出そうと扉に手をかけるが、その腕をマルクトに掴まれ止められる。

「……何するんだ?」

「それはこっちの台詞だ。どこに向かう気なんだ」

 ユリウスはマルクトの手を振りほどく。

 手を振りほどくユリウスの顔は、悔しそうな顔だった。


「アリスを助けに行く。他にも兵士や招待した者たちを助けにいかなくてはならない。俺はこの国の王なんだ。アリスの兄なんだ。全員俺の大切な国民なんだ。俺の何ものにも代えがたい大切な宝なんだ。だから、絶対に全員助け出す!!」

「それで、お前は一人で行く気か?」

「当たり前だ。客人に迷惑はかけられない」

「確かに、客人に迷惑をかけるのはよくないな……でも」

()()になら問題ないだろ?」

 マルクトの言葉に続き、カトウがユリウスに声をかけ、マルクトの隣に立つ。その言葉には、ユリウスも少し驚いているように見えた。

「あいつらが人質にとっているのは俺の大切な生徒だ。俺が黙って指をくわえて待つ訳ないだろ」

「……マルクト……カトウ……ふっ……勝手にしろ」

 ユリウスは二人を見て小さく笑い、素っ気なくそう言った。しかし、その表情は微かに嬉しそうだったのを二人は見逃さなかった。

「……男のツンデレとか誰得なんだよ」

 そう横でカトウが呟いてから、人質奪還作戦が開始された。


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