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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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8話 国王からの招待状4


 今日は六月一日の土曜日、この国の王様によって強制的に食事に招待された日であった。

 現在午前十一時で、今ここにいるのは俺、ベル、メグミ、カトウ、メルラン先生の五人だ。

 エリスとエリナは少し遅れるかもと俺に伝えてきたため、今は二人を待っているのだった。

 ちなみにカトウは一人で来ていた。

 さすがに、元襲撃者を連れて来る訳にはいかないし、ミチルもアリサが残るなら自分も残ると言って来なかったらしい。

 ちなみにカトウは、「ミチルが行かないって言うし俺もやめとくわ」などと今朝ぬかしてきたので、家に押し入って強制的に連れてきた。

 俺だけ酷い目にあうなんて我慢ならん。

 カトウ、お前も道連れだ。

 もしもの時は……共に首だけになろうな。

 

 そんな感じのことを考えながらカトウを連れてきたからか、カトウは滅茶苦茶不機嫌だった。

 そんな感じで集合場所の城門前で二人を待っていた。

 数分してエリスとエリナも合流した。


 ◆ ◆ ◆


 通された場所では、俺はもう気が気でなかった。

 いつもはよく喋るエリスもこの国の王様と会うということで緊張しており、とても静かに冷や汗をかいていた。

 俺もさすがに今回は命がかかっているから、気を配っていられない。

 ……短い人生だったな。

 五年間俺についてくれば一流の魔法使いにしてやるなんて宣言したのにたったの二ヶ月でリタイアとか、生徒達に申し訳ないな。

 横ではカトウが顔を真っ青にしていた。

「……やばい。俺も元襲撃者を匿っているなんてばれたら、アイツに殺されるかもしんない。……反逆者の汚名着せられて死ぬのかな……」

 そんなことをカトウが呟いていると、場の雰囲気が一変した。

「ユリウス国王陛下のおな~り~」

 偉そうな男の声が聞こえて俺とカトウ以外の全員がひれ伏す。

 その直後、黄金の王冠を被り、赤いローブを羽織った金髪の青年が奥から出てきた。

「やあ、今回の件はよくやってくれたね。……ところで二人はひれ伏すってことを知らないのかい?」

「寝言は寝てから言うのが常識だぞ。お前にひれ伏すなんて、まるで俺がお前の下みたいに聴こえるじゃないか。お前にひれ伏すくらいなら死んだ方がマシ」

「……まぁ、マルクトはいつも通りだな。カトウに関しては何でだ? お前は別に俺にそういう感情を持っていないと思ってたんだが……」

 ひれ伏す姿勢を一切見せないマルクトにあきれながら、ユリウスはカトウの方を向いて尋ねた。

「まぁ確かにお前は王様だけど、一度ひれ伏したらもうお前とは対等でいられないだろ? 俺は友人にひれ伏したりなんかしないよ」

 ユリウスの家臣たちが俺とカトウを睨んでくるが、それを意に介さない俺たち二人を見てユリウスが高笑いした。

「二人共相変わらずだな。まぁ、俺もそっちの方がありがたいし、そのままでいいさ」


 さて、この目の前で王座に座っている金髪の男、彼はこの魔導王国マゼンタで国王をやっている人物で、名をユリウス・ヴェル・マゼンタと言い、俺とカトウの高等部時代の友人で、一応、この国最強の魔導剣士だ。


 ユリウスは先程までの友人と話すような口調をやめて、この国の王として俺たちに向きなおった。

「全員面をあげよ。今回の件では大義であった。君たちのお陰でこの国の機密情報が他国に流出する事を防げた。よって君たちには、感謝の意を評して、食事を用意した。今日は無礼講で構わない。是非楽しんでいってくれたまえ」

 そう言ってユリウスは他の臣下を下がらせ、国王自ら俺たちを案内した。


 ◆ ◆ ◆


 ユリウスに案内されてついた場所は、食事を行う用の二十人は座れそうな長机を中心に置いた広い部屋だった。

 周りに飾られている調度品はどれも高そうな品で、さすがは大国の王様だなと思わせるものばかりだった。

 当然のように一人だけ上等な椅子に座るユリウスに促され、俺たちは席に座った。

「では改めて。私は、魔導王国マゼンタの国王を務めるユリウス・ヴェル・マゼンタだ。この度は国の機密情報を守ってくれたこと、誠に感謝している。今日は好きなだけ食べていってくれたまえ」

 ユリウスの仕草は優雅なもので王としての風格が強く見られた。ユリウスが鈴を鳴らして食事を運ばせようとした時だった。

 部屋の扉が突然ノックされた。

「お兄様、少し宿題で聞きたいことがあるのですが、少々時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」


 そう言って高そうなドレスに身を包んだ少女が部屋に入ってきた。

 ノックの音で自然に目がそちらに向いた俺は、そこに立っていた少女の顔を見て思わず席から立ち上がってしまった。

「アリス!?」

「……えっ、先生? それにエリスちゃんたちもなんでここに?」

 透き通るような綺麗な金髪と紫の瞳が特徴的な少女で、その容姿と能力の高さから印象的ではあったが、ドレスに身を包んでいる彼女は、普段の彼女とは印象がかなり違っていた。普段しているツインテールはしていなかった為、彼女の声を聞かなければ俺もすぐには気付けなかったと思う。

「……なんだマルクト、アリスの担任はお前だったのか?」

 ユリウスも俺たちが教師と教え子の関係性だったことは知らなかったらしく、驚いた表情を見せていた。

「そうなんだよ。……まさか、ユリウスの妹だったとは思っていなかったけどな。ということは、アリスって王女様だったわけか」

「すいません、黙っていたのは特別扱いされたくなかったからなんです。出来ればこれからも、普通に接していただけるとありがたいのですが……」

 アリスの表情には不安の色が浮かんでおり、その紫の瞳は俺を見つめていた。よくは知らないが、ユリウスも昔は王族扱いされるのは嫌っていたし、彼女もそういうことなんだろ。


「安心してくれ。俺はアリスが王女様だろうがなんだろうが特別扱いはしないぞ。むしろ、ユリウスの妹なら少し授業のレベルをあげるのもいいかもしれないな」

 その言葉を発したマルクトは少しにやついていた。

 個人的に授業のレベルをあげられたエリスとエリナはその言葉を聞いて、同志を優しく迎え入れようとアリスに接していた。

「先生の授業はきつくなりますが、一緒に頑張りましょうね!」

「困った時は私を頼っていいからね」

 エリスとエリナに優しく迎え入れられたアリスは嬉しそうな表情になり、マルクト達と一緒に食事をすることになった。


 普段のアリスは、あまり人と接する姿を見たことがない。

 授業の態度は真面目に受けており、魔法の才能も薄青ランクのため、充分に有していた。

 体を動かすのは苦手みたいだが、座学の成績はいい方だった。可愛らしい見た目で性格も温和だが、人と接することが苦手なんだそうだ。


 気の弱いアリスにとって、気の許せる友達が初めて出来たのは嬉しいことだった。

 食事会で新しく出来た友達と仲良く接するアリスの姿はユリウスにとっても感慨深いものであった。

 食事会は滞りなく進み、ユリウスはマルクトとカトウを自室で酒でも酌み交わして昔の話でもしないかと誘った。

 二人もその誘いに乗り、デザートに舌鼓をうっている他の皆に断りを入れて、ユリウスについていった。


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