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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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8話 国王からの招待状3


 夜九時、扉に取り付けた店の呼び鈴が来客を伝える。

 『ジェミニ』の店主エリカは帰りの遅い娘達に変わってその客に対応する。

 今日はいつもと違い、客の入りが少なく、実は店主のエリカも暇をもてあましていた。

 まあ、娘たちがいなきゃこんなものだとエリカ自身も割りきっていた。


 いらっしゃいとエリカは笑顔で客に対応する。

 だが、そこに立っていたのは、ぼろぼろのマルクトに肩を貸しているカトウと帰りの遅かった娘達、そして見知らぬ女性だった。

「マルクト先生どうなさったんですか!? そんなにぼろぼろになって」

 しかし、エリカの質問に答えたのは、マルクトではなかった。

「はじめまして、私はメルランと言ってマルクト先生やカトウ先生と同じく高等部の教師を務めている者です。その、……実は」

 そう語るのはカトウの隣に立つ見知らぬ女性だった。

 彼女が言うには、毎日のように行っている娘達の訓練で、マルクトが魔法を暴発させて倒れたのだそうで、発動した魔法が小規模だったため、あまりダメージはないが、まともに動けなくなったらしい。


「今日の先生、集中力が散漫になっていましたからね。何かあったんでしょうか?」

「君たちのところにも招待状が来たんじゃないか? マルクトのところにもそれが来たんだよ。問題は差出人とその内容で、こいつの意識が散漫になるのも頷ける話だよ。なにせ、マルクトのものすごく苦手な相手だからな」

「……正確には、能力が……だがな。エリカさんすいません、こんな姿で。本来なら生徒の手本となるべき行動を心掛けなくてはならないのに……」

 マルクトはカトウの言葉を訂正してから顔をあげ、エリカに謝罪した。

 マルクトの珍しく自分を卑下する言葉に戸惑いながらも、エリカはマルクトに対して気を遣う。

「いえ、私にはよくわかりませんが、大変なんでしょう? ここでくらい、そんなこと考えずに飲んでいっていいんですよ」

「……ありがとうございます」

 とりあえず席に五人を案内して注文をとってから、エリカは注文された料理を作るために厨房に戻る。

 エリナが全員分の飲み物を持ってきてから、エリスがカトウに尋ねた。

「それで、マルクト先生が苦手な人の能力ってどんな能力なんですか?」

「ん? ……ああ、あいつの能力ね」

 カトウはエリナが持ってきた麦酒を一杯飲んでから、言葉を続ける。

「ルーンって知っているか?」

 カトウの確認に、メルランが答えた。

「えーと確か……選ばれた者のみが持てると言われている特殊な能力のことですよね。世界でも百人程しか使える者がいないとか」

「うんそれ。そのルーンをそいつが持っているんだよ。本来、マルクトとそいつが戦えば、マルクトの方が圧倒的に強かったんだけどさ。あいつの魔法は近接主体の魔法が主で、剣の実力は相当高かったが、マルクトの中距離主体の戦い方とは相性が悪かった。だけど、あいつがルーンを使えるようになった瞬間、マルクトとの戦績は互角、いや互角以上の戦績を残していたな~」

 カトウの言葉にマルクトは否定をせず、逆に頷きながら、カトウの代わりに続きを述べた。

「当時の俺も最初は本気を出していなかったんだけど、あいつのルーンの能力の強さを知ってからは、自分のルーンを使って本気で戦ったんだよ。でも、それでもなかなか白星をあげることができなかったんだ。そのうえ、あいつのルーンを攻略するには、近接で挑むしかなかったんだよ!! だからといって近接で効果が弱くなる訳でもなく、むしろ向こうに分がある近接で挑むのは、さすがの俺でも勝ち目が薄かったんだよ。そういう訳で、俺はあいつの能力が苦手なの」

「……先生がそのルーンってやつを使えるのにも驚きましたが、本気の先生でも勝てない相手がいらっしゃったんですね。……それで結局どういう能力だったんですか?」

 エリナは、説明を終えて麦酒を飲んでいるマルクトに本題を尋ねた。

「あいつの能力は真実が見れるんだよ」

 その質問に答えたのはカトウだった。

 カトウはその一言を発した後、麦酒のおかわりを頼む。

 マルクト以外の面々は今の一言だけではよく分からず、マルクトを見る。


「うーん、……あんまり喋るとあいつの信用を落としかねないから、詳しくは言えないんだけど。あいつには嘘がまったく通用しないんだよ。それだけ覚えておけば、俺がなぜ行きたくないかは分かるだろ?」

 そう言ってマルクトは麦酒を飲みほし、おかわりを頼む。

 注文を受けたため、エリナが二人分のジョッキを持って裏に戻った。

 エリナはすぐに裏から新しい麦酒を持って戻ってきた。

 それと同時にエリカが注文した料理を持ってきた。

 そのアップルパイに目を輝かせ、マルクトはエリカの作ったアップルパイに手を伸ばす。

 外はサクサク、中はジューシーで味の加減も絶妙なそのアップルパイに、マルクトは舌鼓をうった。

「やっぱりここのアップルパイはうまいな~。クリスのアップルパイもすごく旨いけど、ここのアップルパイもまた最高ですよ!!」

 マルクトの本当に旨そうに食べる姿にエリカは満面の笑みを浮かべていた。

「ありがとうございます。マルクト先生は美味しそうに食べてくださるから、つくりがいがあります。どんどん食べていってくださいね!」

 そう言いながら、彼女は奥に戻っていった。

 そんなこんなで各々食事を終えて、当日の集合場所を城門前に定めて、その場は解散になった。

 

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