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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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8話 国王からの招待状1


 青年はいつものように退屈な日々を過ごしていた。

 全く仕事がないという訳ではなく、むしろ逆で現在も仕事の書類を見てため息をこぼしていた。

 そんな時だった。

 扉を開く大きな音と共に一人の兵士が青年のいる部屋に入ってきた。

「報告致します! 魔導学園エスカトーレにて大規模な爆発を確認しました。どうやら例の組織がこの国の情報を魔導フェスタの警備の薄い時間に狙ったとのことです」

 その言葉に場は騒然となる。

 青年の隣に立つ恰幅のいい体型の男性がその報告を聞いてあわただしく尋ねた。

「なんだと!? それで被害の状況は?」

「はっ。それが……敵の操る魔物によって侵入者は全員殺され、敵の操る魔物は校舎を半壊させる等の被害を出したものの、逸早く危機に気付いた学園の教師によって討伐されたとのこと」

「魔物を操って校舎を半壊だと!? ……それは本当なのか? それはーー」

「おい」

 恰幅のいい男の発言を遮るように、青年は報告してきた兵士に声をかける。

 途中で発言を遮られたにもかかわらず、恰幅のいい男は青年に頭を下げ、先走ったことを謝罪する。

 恰幅のいい男の身なりは良いもので、おそらく貴族か大臣の地位を持つものなのであろう。

 そんな人物でも青年の一挙手一投足には気を配らねばならなかった。

「その魔物を討伐した教師の名はなんと言うのだ?」

 青年の言葉に、緊張した様子の兵士は正直に答える。

「はっ! 名をマルクト・リーパーと名乗るお方で、魔導学園エスカトーレ高等部の新任教師でございます」

(やはりか……)

 青年は兵士の報告に思ったとおりの人物が今回の事件に絡んでいることを聞き、頭が痛くなるのを感じていた。


 全く……あいつはいったい何を考えているのだろうか。

 あいつが絡んでいるということは、この報告の大半は信憑性がなくなってしまうではないか。

 今回の顛末を前回みたいに報告してこないと言うことは俺に対してやましいことを隠したということだな。

 お前がその気なら俺にだって考えがあるぞ。


「おい」

 青年の呼び掛けに、声をかけられた兵士だけではなくその場にいる全員が、青年の言葉を聞き逃すまいと緊張が走る。

「今回の件で学園に保管されている国家機密を守った者がいるのだな?」

「はっ。学園の生徒を含め五名で守りきったとのことです」

「ならば、全員を私の個人的な食事会に招待しよう。当然、拒否は許されないものにしろ」

「はっ。そのように手配致します」

 その場にいた者たちは青年の言葉に頭を垂れ、先程の恰幅のいい男が代表して答えた。

 そして、恰幅のいい男の指示で、その場にいた者たちは慌てて準備に取りかかる。


「さて……久しぶりに会うんだ……腹を割って話そうじゃないか……なぁ、マルクト?」 

 不敵な笑みでそう呟くと、青年は自ら友人に贈る招待状の作成に取り掛かるのであった。


 ◆ ◆ ◆


 魔導フェスタが過ぎて二週間がたった。

 授業の終わりを知らせる鐘の音を聞き、マルクトは授業を終わらせ廊下に出た。

「久しぶりの授業は疲れたな~」

 廊下に出て、背伸びをするマルクトは独り言を呟いた。


 学部棟の校舎も直ったため、今日から授業が再開した。

 ちなみに、今回の後始末に俺が特に巻き込まれることはなかった。……いや、本当にあの時はやり過ぎたことを後悔したからな。校舎を半壊させたのが俺だとばれたら賠償額がとんでもないことになるに決まってる。とはいえ、校舎を半壊されたというのにたったの二週間でこの校舎を元通りにした学園側も凄いと思う。相当レベルの高い魔法使いがいたんだろうな。

 え……俺? 俺は何もやってないよ。

 正直、俺もやるべきだったんだろうが、今回に関しては、俺にこれ以上動いて欲しくないと学園長が直々に言ってきたんだよ。なんでも、国の危機を救った者たちをこれ以上働かせるのは、体裁的にまずいらしいとのことだ。という訳で、俺はこの二週間を研究所の仕事を片付けることに全力を尽くせた。

 そのお陰で、去年からたまり続けた仕事からや~っと解放されたのだ。


「マルクト先生、こんにちは」

 マルクトが廊下を歩いていると後ろから声がかかった。

 後ろを振り返ると薄紅色の髪とツリ目が特徴的な少女が、そこに立っていた。


「こんにちは、アリサ。今日からこの学園に入学出来たんだってな。おめでとう」

 この前の事件がきっかけで、なぜかアリサがこの学園に入学してきた。

 なんでも、カトウによって無理矢理この魔導学園エスカトーレに入れられたらしく、現在は一年のCクラスに在籍しているとのこと。

 別にカトウの決めたことに俺も文句はないし、彼女も一応魔法が使えたから、特に問題はなさそうだ。

 彼女の制服の胸のあたりについている校章が彼女のランクが黄色であることを示していた。

 この学園の校章は六芒星のマークである。

 それは、学校のエンブレムであると同時に、その生徒のランクを表すことができるのだ。

 正確には、魔力測定にて測られた結果を校章に反映させているだけなのだ。

 例えば、メグミの校章は赤い。

 これは、メグミのランクが赤だからであり、一年間この色が変わることはない。

 例えメグミがこの数ヶ月で濃赤になったとしてもこの色は変わらない。

 そんな訳で、彼女のランクが黄色であることは聞かずとも誰にでもわかる。


「別に! 私は家でミチルさんのお手伝いをしていても良かったんだけどね。カトウ先生がどうしてもって言うから、しょうがなくなんだからね!」

「……そうかい。それなら精一杯この学園を楽しむといい。二学期からは校内戦も始まるから、実戦経験のあるアリサなら、いいところまでいけるかもな」

「ふん!! こんな所でぬくぬく育ってきたあまちゃんには負けないわよ」

 そう言って彼女は教室に戻っていった。

 彼女と話すとなんか疲れるんだよな。

 カトウの元によく顔を出して、アリサの様子を時折見てたんだが、彼女の話し方は少しきついんだよな。

 カトウ的にはこれはこれでありだろとか言ってたけど、俺は少し苦手かな。

 はぁ……とりあえず職員室行くか。


 マルクトは内心でため息をつくと、学園での今日の仕事を終わらせるために職員室に向かった。

 そして、学園での仕事が終わり、家に帰ったマルクトの元に一通の招待状が届いたのだった。


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