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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第2章 入学編
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6話 魔導フェスタ10


 現在午後六時半、魔導フェスタの屋台を共に回ると約束していたため、マルクトは他のメンバーを待っていた。

 マルクトの他にはユウキ、カトウ、アリサ、ミチルの四人が揃っており、メルランは彼氏とデートをしているためここには来ないと連絡を受け、あとはエリス、エリナ、ベル、メグミの四人を現在待っている最中だった。


 十分後、彼女達はやって来た。

 隣でカトウが感嘆の声をあげているのが聞こえた。

 四人が着てきた服はユカタと呼ばれるカトウの故郷で祭とかによく着られる服らしい。

 俺はあまり詳しくないのだが、この国の王妃はカトウと同じ国の出身らしく、自国の文化を広めた第一人者だ。

 王妃が広めたものはユカタだけではなく、祭の屋台等の情報や衣服、特に料理に関しては彼女の能力も相まってかなり広まっている。

 

 エリナの着ているユカタは、白い生地に赤い花と水色の葉の紋様が描かれたユカタで長い髪をかんざしで纏めていた。

 エリスの着ているユカタは、紺色の葉に白と黄色で描かれた花がところ狭しと描かれており、隙間を青で埋められたユカタであった。

 ベルが着ているユカタは、全体が淡黄色で大輪の花が描かれたユカタだった。

 メグミの着ているユカタは、全体が緑色の白い花がいくつも描かれたユカタだった。

 みんなそれぞれよく似合っており、独特の色香を醸し出していた。


「こうしてみると、案外ユカタというのは良いもんだな~」

 などとひとりごちるマルクトの肩にカトウが手を置き、「だろっ!」と言いたげな顔で親指を立ててきたので、同じように親指を立てマルクトは同意を示した。

 そんなやり取りをやっているマルクトの元にエリスがやって来た。


「……どうですか先生、……その、似合っていますか?」

 いつもは気軽に話しかけてくるエリスが今日は珍しく、もじもじしながら聞いてきた。

「ああ、似合っていて可愛いよ。約束通り今日は俺の奢りだ。好きなだけ食っていいぞ」

 エリスは顔を紅潮させて、そっぽを向くと皆の元に戻っていった。

 そんな様子を見ていたカトウの顔が凄かったけど特筆するほどのものでもないので、祭の話に戻ろう。


 夜の祭は結構混んでおり、離れずに行くのが一苦労ではあった。そんな中でも楽しむ面々、それぞれ好きなものを食べて、射的等の娯楽に興じ、それなりに楽しんでいるように見えた。


 ちなみに俺は、メグミと一緒に屋台に並ぶリンゴ飴を食べ比べしていた。

 その味はなかなかのものでここでしか食べられないということで値段は張ったが、それでも満足のいくものだった。

 

 皆の楽しんでいる姿を見て、ふと、やってみたいことが出来た。そのため、カトウに相談してみることにした。

 ちなみにカトウはアリサとミチルにつれ回されており、カトウなりに楽しんでいる様子だった。

 俺が話しかけると一瞬顔をしかめたが、やりたいことの内容を伝えるとすぐに、協力してくれる手筈になった。

 さて、うまくできるといいが。


 ◆ ◆ ◆


 一時間程回り、そろそろお開きになる頃になって、エリナはマルクトがいないことに気付いた。

 どこに行ったか、友人のベルやメグミに尋ねたが、知らないと返され、本格的に探し始めようとしたところで、マルクトが帰ってきた。

「すまない、少し席を外していた」

 そう言いながら戻ってきたマルクトは、皆を集めて河川敷の方に来るように言ってきた。

 エリナはよくわからないまま、マルクトと別れ、他の皆を集めて河川敷に向かうと、そこにはカトウが一人で立っていた。


「悪いんだが、ここで少し待っていてくれないか?」

 そう言いながら、全員をその場に座らせたカトウは、何かを企んでいるような顔をしていた。

 いったい何が起こるのだろうかとドキドキワクワクしている自分がいるのをエリナは自覚していた。

 その時だった。


 静寂が支配する闇夜の世界を微かな音を響かせながら立ち上る何かが遠くの方で見えた。

 カトウ以外の全員が何事かと構えるが、上空に到達したそれは次の瞬間、轟く破裂音と共に光の花を咲かせた。

 その後も音と共にいろいろな光の花が夜の空に咲く。

 それはとても綺麗で、入学式の際、魔導学園エスカトーレで学園長が行っていたものによく似ていた。


 そんな綺麗な光の花が咲き乱れている夜空に魅入っていると、後ろの方から、二人の会話が聞こえてきた。


「いや~どうだカトウ? 上手くいっているか?」

「おう、ばっちりだぜ! 日本で見た花火にはかなわないが凄く綺麗だよ。これを遠隔操作できるって相変わらず凄いな!」

「……マジかよ。ニホンの花火ってこれより凄いのか。ニホンの魔法使いってのはレベルが高いんだな」

 そんなことを笑いながら話すマルクトは、河川敷の土手に座ると、自分で編み出した光の花を見ていた。

 こんな物を作り出せる担任教師を改めて尊敬するエリナは、また来年の魔導フェスタもこうして皆で回りたいと、そう願うのであった。


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