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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第2章 入学編
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5話 少年1


 ある夜の住宅街のなかに男が二人立っていた。

 その者たちはこの暗き夜道で通信を行っているような仕草が見て取れた。

「分かりました。我々もそのように手配します。安心してください。誰も我々の侵入に気付いてはいないでしょう。しかし、あの新任教師はおそらく厄介な存在でしょう。……確かに彼を仲間に取り入れれば、むしろ最高戦力になるでしょう。……わかりました。はい。そのように手配します」

 男の一人が通信魔法を切って、ため息をこぼした。


「もう大丈夫なの?」

「あぁ。全く……本気で言っているのか? 確かにあの新任教師を仲間に引き入れれば、有能な駒にはなってくれるだろうが……」

「無理なんじゃないかな」

「だろうな。お前には苦労をかけるかもしれんが、組織の目的を果たすにはお前の力が必要なんだ。すまないが、もう少し協力してくれ」

「わかりました。でも約束は守っていただけますよね?」

「当然だ。では、これからは連絡するのも難しくなるだろう……気取られるなよ」

 男の一人はそう言うとどこかに行ってしまった。

 残された少年はその場にへたりこんでしまう。

「本当にこれでいいのかな? 教えてよ、先生。僕は、犯罪者になっちゃうのかな?」

 少年が立った瞬間、ふいに強い突風が吹く。

 少年はあわてて自分のスカートを抑えた。


 ◆ ◆ ◆


 学園に来て一ヶ月がたった。

 メグミとベルは驚いたことに基礎を習得して現在では的当てにも参加している。

 これにはさすがの俺でも驚いた。

 まさか一ヶ月で的当てに参加するとは、本当に初心者か?

 特にメグミ。

 まぁこれも、クレフィの教え方が上手いからなんだろうな。

 基本的に俺は何もしていないし。

 クレフィは、教師向いてるだろ。

 それを昨晩クレフィに伝えたら、首を横に振られた。

「私は旦那様に一生仕える身、教師をやっている暇などありません」

 なんでそんなに慕ってくれているんだろうか?

 高等部の頃に、難病で瀕死の危機にあったこの子に当時出来る者が限られていた状態異常完全回復魔法で治したくらいしかしていないのに?

 そういえば、その時くらいからクリスが仕えさせてくれと頼みこんできたんだよな。

 当時の俺には金がなかったから無理だったけどね。


「恩義でも感じてんのか? それなら別に必要ないぞ。俺は自分のやりたいようにやっただけだ。クレフィの病気を治したのも目の前できつそうにしていたからだし、別にお前らに負担をかけるためにした訳じゃない」

 と以前、気になった時クリスに聞いてみたことがあったな。

「確かに以前はそのような気持ちで仕えさせていただきました。しかし、旦那様はクレフィと同じように難病で余命が少ない者にあの魔法を使用して、格安で多くの人間を治しておりました。あの時の私は何故金をとらないのか? まさか何か企んでいるのではないか? と密かに思っておりました。そして、私は当時の旦那様の過去を調べて見ました。そして理解しました。旦那様が娘を助けた訳を……」

「…………それで? どう思った?」

「私は自分が恥ずかしくなりました。旦那様の過去を知り、私は旦那様のお役にたてるようになりたい。そう思いました」

 そんなやり取りがあったんだけど、いや~当時はちょっと恥ずかしくなったね。

 なんたって、そんなに褒められることが今までなかったし。

 まぁこれからも親子共々頼りにさせてもらいますよ。

 

 昔の思い出に浸っていた時、学園の時計台が鳴り響く。


 現在は的当ての授業が終わったあとの休み時間になったところである。

 今日はいつもより早く終わって、生徒は皆、魔導着を着替えている。

 当然、女子生徒は女子更衣室で着替えている。

 男子生徒のだいたいはもう着替え終わっていて、俺も次の授業のために、教室に待機していた。

 暇すぎて周りの様子を観察していると、ある男子生徒が視界に入った。

 彼の名はユウキ。

 実力は緑、その黒髪の短髪に中性的な顔だちはズボンをはいていても、女の子のようにも見える。

 まぁかわいらしい見た目の男子だなぁと最初は感じた程度だ。

 しかし最近様子がおかしいように思える。

 なんか俺によそよそしいし、なんか俺にびくつくし、声をかけたら逃げられたし、……二回も。

 何が問題なんだ?

 もしかして俺が何かしたかな?

 いや、さすがにそれはない……と思いたい。

 それにしても、授業も集中できていないのか初歩的なミスが増えているし。

 何か困ったことがあったかな?

 相談したいことでもあるんだろうか?

 それならば、ここは担任の教師として聞いてやらねば!!

 ちょうど暇だったし、ここは俺から話しかけてみよう。 


 そう思い、ユウキのもとに俺は向かった。

「やぁユウキ。今日の的当て、いつもより集中出来てないように感じたぞ。なんかあったのか? 先生で良かったらいつでも相談に乗るぞ?」


 マルクトはできるだけ優しく伝えるのを心掛けたのだが、ユウキはマルクトの言葉に慌てて服を着替え終えた。


「すいませんでした。次からは気を付けます!!」

「あ……いや。そうじゃなくて」

「すいません。僕ちょっとトイレ行ってきます!!」

 ユウキは慌てて扉を開いて、トイレに向かった。


 また逃げられてしまった。

 今回はうまく話しかけられたと思ったんだがな。

 なんか駄目だったんだろうか?

 教師って難しいな。

 今日はカトウ付き合わせて飲みに行くか。


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