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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第2章 入学編
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4話 入学6


 魔導学園エスカトーレに勤め始めて一週間がたった。


 あれからも毎日のように、『ジェミニ』に飯を食べに行っている。何度かベルとメグミも連れて行くこともあったからか、二人はエリスとエリナの二人と仲良くなったようだ。

 それは良かったのだが、仕事がたまっているのに飲みに出かけるもんだから、クリスやカトレアに怒られてしまうのだ。

 それでも麦酒が本当に美味しいし、双子のエリスとエリナの店の制服姿もなかなか似合っていてかわいいし、ついつい通ってしまうのだ。

 それにしても、まさかベルが高等部に一日で飛び級してくるとは思っていなかった。

 基本を学ばせるために学校にいれたけど、なんか結局俺が教えることになったんだよな。

 これなら普通に教えれば良かったのではないかとふと思ってしまう。

 まぁいろいろあっても楽しい職場、楽しい同僚とは良いもんですよ。

 研究所の連中は研究熱心すぎて会話する機会が少ないからね。

 俺としては若い子にちやほやされてもう満足ですよ。天職ですよ天職。

 カトウがモテたいって気持ちも今なら理解できるな。


 ちなみに、ベルとメグミの二人に学校はどうかって話を聞くと、二人はエリスとエリナとは友達になったと報告してきた。

 双子のエリスとエリナは中等部の頃から学園に通っているらしく、この街に来たばかりのメグミとベルをあちこち案内してくれたそうだ。

 新しい友達ができて学園生活が楽しいなら良かった。

 

 そして、明日は魔法の実戦練習の授業だ。

 実戦の授業では上級生が手伝いに来てくれるらしく、三年で主席をとったクレフィが手伝いを申し出てきてくれた。

 やっぱりクリスの子だけあって優秀なんだな。

「首席か……言ってくれればお祝いにどこか連れて行ったり、贈り物ぐらいしたのに……」

「旦那様のご厚意痛み入ります。しかし、私など旦那様に比べればまだまだでございます。これからも精進していく所存にございます」

「…………そうか。なら、近くで俺の凄さをとくと見るといい。というわけで、実戦練習の授業ではクレフィに手伝ってもらおう。よろしく頼むぞ」

「はい。旦那様のお役にたてるよう頑張ります」

 一応、学園では先生と呼ぶことにしてもらい、この日の打ち合わせは終わった。


 ◆ ◆ ◆


 そして次の日。 

 本日は魔法を的に当てる訓練のはずだったのだが、あえてまずは魔力感知をさせることにした。

 皆には己の今の限界を知ってもらうことが重要だと感じたからだ。

「限界を越えるには、まずその限界を見極めろ」

 それが師匠の口癖だったし、俺だってそれで強くなっているのだから、やってみるのも悪くないと思った。

 生徒達の中には、先日の測定で結果が出てるから魔法を早く撃ちたいと言う者がいた。

 確かに、先日、魔力測定で確かめたのだろうが、魔力感知でやるからこそ、意味があるのだ。


 その事を伝えると皆真剣に取り組んでいた。

 そのあとは、ベルとメグミ以外は予定通り的当てを行っていた。

 ベルとメグミ以外の理由は、まだ二人には魔法の発動の仕方すら教えていなかったからだ。

 まぁ二人とも才能はあるから多少遅れても問題はないだろう、二人にはクレフィが教えてくれているし、俺は他の生徒を見ていこうと思う。


 やっぱり目立っているのは青以上の五人。

 まずは、青ランクの双子の姉エリス。

 彼女は光と地属性以外の魔法が使えるらしい。特に水属性の魔法が得意でエリスの氷魔法はなかなかのものだった。

 

 次は、同じく青ランクの双子の妹エリナ。

 彼女は水と闇属性以外の魔法が使えるらしい。特に光魔法では他を圧倒していた。

 双子なのに同じ属性じゃないのか。

 しかも二人ともお互いの得意魔法の属性は使えないんだな?

 エリナに聞いて見ると、お互い使えないからこそ、その魔法の腕を磨いたのだそうだ。

 二人とも学生とは思えないほど高レベルの魔法使いだった。

 将来は彼女達に補佐でもしてもらおうかな?

 エリスは戦闘特化で、エリナは支援特化みたいだな。

 鍛えがいがありそうだ。

 

 次に金髪のツインテールという髪型をしているアリスという女子生徒。

 彼女は人懐っこいような見た目だけど、あまり俺には話しかけて来ない。

 ……でもどこかで見たことある気がするんだよな……まぁ、王都には十年近く住んでるんだし、どこかですれ違ったのかもな。

 彼女は闇属性の魔法、特に召喚系の魔法が得意らしい。

 的当てでは、人形を操って人形の手から炎を出して的に当てていた。

 炎属性の魔法とあわせているのか。これはすごい。

 精度も威力もあるうえ、三つの人形の手から炎を出していた。その技術を褒めると彼女は顔を真っ赤にして逃げ出した。

 そんなに避けなくてもいいじゃないか。ちょっと悲しかった。


 次に赤髪のレンという男子生徒。

 彼は炎属性の魔法を得意としていた。

 特に爆発系の魔法は威力がある。

 彼は周りとのコミュニケーション能力が高いようで、いつもクラスの中心にいた。

 俺にも気軽に接してくるが、よく遅刻してくる。


 最後に黒髪のソラという男子生徒。

 彼は冷静な男でどことなく、俺をライバル視しているように見える。

 さっきから俺の方をずっと見てるし。

 実際、彼の技術は高い。

 彼の風魔法は威力が高いわりに静かである。

 あそこまで静かに放つには、相当撃ち込まないと出来ない。

 その技術の高さは努力の賜物なのだろう。


 他の生徒は特に突出しているところは見当たらなかった。

 もうすぐ授業が終わる時間だったので、締めの挨拶をしようとすると、それを遮るようにソラが手を挙げた。


「先生の実力も見せてはいただけないでしょうか。越えるべき目標の実力を見せてもらえれば、更なる飛躍につながると思うので」

 うわ~、この子本気で俺のこと越える気じゃん。

 良いね。そういうの大好き。

 他の生徒も口々に見せて欲しいというので、了承した。

 俺は羽織っていた白衣を近くにきていたクレフィに渡し、動きやすい格好になった。


「最初に言っておくぞ」

 そう言った時、俺の周りには、多数の炎が浮いていた。

「俺を越えたかったら生半可な覚悟じゃ足りないぞ? それから、俺が異常なだけだ。決して、お前たちが弱い訳じゃない」

 そう言い放ち、俺は的の方に指を向ける。

 俺の周りに漂っていた炎は一発ずつ全ての的にあたり、一瞬で燃やし尽くした。

 エリスとエリナ、それにこちらを見ていたクレフィとベルは瞳を輝かせていたが、他の皆は唖然としていた。

「ソラのように俺を越えたいと思うなら俺のことを尊敬するな。俺の技術を見て奪え。俺の教えをしゃぶり尽くす勢いで糧にしろ。俺はたとえお前たちに敵視されようが、先生として、この五年間でお前らを立派に育てあげて見せよう。以上、今日の授業はここまで」 

 終わりの挨拶をして、この日の授業は終わった。


 とりあえず他のクラスも使うはずだった的を燃やし尽くしたことを学園長にめちゃめちゃ怒られた。

 ……しまらねぇ。


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