28話 校内戦の予選4
ベル達が勝利した初戦の日から一日が明けた。
ベルのロストオブダークネスに関しては厳重に注意し、近接相手には別の対応方法を考えることにした。ベル自身も人を傷つける魔法は使うのは好きじゃないとのことで、すぐに了承してくれた。
そして、今日は土曜日で、現在俺はたまった仕事の書類を嫌々片付けている最中だった。
本当は昨日、『Gemini』でお祝いをしようという話になったのだが、エリカさんが急病という理由で、決勝トーナメントに全員出場が決定してからになった。そのため、少しでも仕事の山を崩していこうと思ったのだが、昨日の夜からやり続け、もうすぐ昼になるというのに、まったく終わる気がしなかった。
応援する時間を削ればこんなことをしなくてもいいのだろうが、それでも彼女達の活躍は見ていたかった。だから、こういう時間に頑張らないといけないのだ。
この現状に頭を悩ませながらも仕事をしていると、部屋の扉がノックされた。
「旦那様、少しよろしいでしょうか?」
その声がノックの直後に聞こえたため、俺は入室許可を与えた。
失礼しますと丁寧なお辞儀をしながら入ってきたのは、白い鳥を腕に乗せた銀髪のメイドだった。
「どうしたんだカトレア? 今日は何も頼み事をしていないうえに、部屋の掃除なら他のメイド達がやってくれたぞ?」
普段はベルの傍を離れようとしない彼女が珍しくて、俺は彼女に用件を尋ねる。
「いえ、今日は例の件で報告したいことがありまして……」
「例の件? ……もしかしてディザイアの件か?」
その言葉に頷いたカトレアを見て、俺は来客用のソファーに彼女を座らせた。
彼女は三十年程前に魔王グリルと共に、この世界に渡った魔人という存在で、ベルを慕い、命を狙われているベルを守るという名目のもと、ここでメイドとして働いている。
その腕に乗っている変た……白い鳥もコカトリスという魔族の亜種らしく、先日起こった事件の直前に襲ってきたが、色々あって今はうちのペットになっている。魔力を強制的に奪われ、少し前まで昏睡状態に陥っていたが、先日ようやく目を覚まし、どうやら今は動けるようになったみたいだ。
「魔王の伝言について、一つだけ気になる点がありまして、それを報告に参りました」
事件の直後にカトレアを呼んでディザイアの話を聞いてみた時は、門番のような役職をしていたカトレアには、紫竜という裏切り者と死闘したという情報以外ほとんどわかっていなかった。
わかっていたのは、人の身体を契約という形で奪うことができるということと、先代魔王のグリルが配下を連れて人間界に避難するという手をとるほどの強さを持っているということだけだった。
「私はこの人間界に来るまでは、氷獄門という場所を守護していたのは、お知りですよね?」
「そうだな。結構前に聞いた」
「あの日は、空間魔法の直後で混乱しており、曖昧だったのですが、これだけ探しても、ディザイアが見つからなかったことから、おそらく間違いないと思われます」
カトレアは大きく深呼吸をして、自分の息を整えた。
「ディザイアは既に人間界ではないところにいると思われます。おそらく魔界に戻ったかと……」