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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第6章 校内戦編
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27話 校内戦の開幕6

「ヤア、キノウブリダネ?」

 拙い言語で話しかけると、空を見ていた彼はこちらに顔を向けた。

「あぁ、昨日の……確かカトウ君だったよね? もしかして同じクラスなのか?」

 その言葉に頷いたカトウを、マルクトは楽しそうに見ていたが、その瞳にいきなり陰りをみせた。

「……悪いけど、あんまり人と仲良くする気はないんだ。俺から離れておいた方が身のためだよ?」

 その早くて聞き取りにくかった言葉に首を傾げていると、圧縮された水で作られた弾が飛んできた。

 首を傾げていなければ、後頭部に直撃だったであろうその水弾はマルクトに直撃した。

 しかし、寸でのところで結界魔法を展開したマルクトは、その悪意しか感じない魔法を防いでみせた。


「ちっ、何防いでんだよゴミの分際でよ~! だいたいここはパールネスト人なんか入れてていいのかよ!」

 その言葉が教室の扉から放たれた瞬間、教室内がざわつき始める。

 カトウは早口過ぎて怒っていることしか理解できなかったが、マルクトがため息をついたのを見た瞬間、マルクトにとってめんどくさい対象なのだということがわかった。


 この時のカトウは知らなかったのだが、パールネスト王国とマゼンタ王国では、ここ数年の間、小競り合いがよく行われていた。

 両王家の王妃が姉妹という関係のため、本格的な戦争には発展していなかったものの、互いの国民は良好な関係とはとても言い難かった。

 現にマルクトがパールネストの国民だという情報が流れただけで、マルクトを見る目は変わった。

 暴言の嵐がマルクトにふりかかる中、マルクトは平然と頬杖をつきながら空を見ていた。


(おいおい、さすがの俺でもこれが全部悪口だってことくらいわかるぞ……大丈夫なのかよこいつ……)

 狼狽えているカトウもさすがにこの状況が普通とは思えず、皆を止めようと思ったが、その前に悪口の嵐がピタリと止む。

 空を見ていたマルクトも、その視線を開かれたドアの方に向けた。

「うるさいぞお前達、ユリウス王子が来てるんだ。黙って席につけ~」

 そこには、金髪の少年を連れていた無精髭の男が立っていた。教室に入ってきた無精髭の男は、教壇に立つ。

「お前ら~! 今日はとんでもないやつが来ている。くれぐれも失礼のないように頼んだぞ~……では自己紹介……の時間を作るのめんどくせーし、適当にそこら辺座っとけや」

(((あんたが一番失礼だよ!)))

 金髪の少年は苦笑を浮かべつつ、周りを見渡し、誰も座っていない席を見つけた。

 他に空いている席もないため、左斜め前方には黒髪の少年、隣には青い髪の少年が窓を見ている席だった。

「そんなゴミの隣は王子様に相応しくありません! おい、隣のお前、そこの席から退いて、あのゴミの隣に行けよ!」

 金髪の少年がその席に着いて隣の青い髪の少年に挨拶しようとすると、先程水弾を放ってきた少年が声を荒げて言ってきた。


「ゴミとは彼のことかな? 私程ではないが、なかなか良い男ではないか……それとも彼に何かされたのか?」

「されました! そいつは水弾を飛ばしてきました。私的な魔法の行使は犯罪です! そいつは犯罪者という名のゴミです!」

 その瞬間、ここぞとばかりにクラス中が彼の意見に賛同し始めパールネスト人を非難し始めた。

「そうなのか? そこの青髪の君、彼が言ったことは本当か?」

「……すいません。ゴミの戯れ言は聞かないようにしてるんで聞いてませんでしたわ」

「なんだと!」

 マルクトの煽りに顔を赤くする男を見て、カトウもなんとかしたいな~とは思っていた。しかし、昨日の自分に配慮していたマルクトの言葉とは異なり、彼らの流暢な言葉に理解が追い付かないでいた。


「彼は君が水弾を飛ばしてきたと言っているらしいんだが、それは本当なのかい?」

「そうなんじゃね。あんな下手くそな水弾を俺が出したとか言ってる時点でなんか馬鹿らしくなってきたわ」

「ふむ……さて、初日からはしたくなかったんだが……」

 そう言って指を鳴らすと、扉から数人の兵士がやって来てマルクトの周りを囲み始めた。

「悪いんだが、同行願えるかな?」

「……やりたきゃ力ずくですれば? こっちもせっかく高い授業料稼いできたんだ。少しくらい暴れさせてもらうけどね」

 顔色を一切変えずにその返しをしたことで、金髪の少年が合図を送ろうとした時だった。

「あの~」

 一人の少女が手を上げた。

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