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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第2章 入学編
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4話 入学5


 次の日の学校は一年C組担任の顔がぼこぼこだったこと以外は平和な一日だった。

 しかし、今日は生徒たちの魔力量を測る魔力測定と体力測定があった。

 一応こういう学校などでは魔力測定用の水晶があり、その水晶に手をかざして水晶に映った色で判断される。

 この結果は一年間変わらない。

 そのため、制服の胸元についてある校章の六芒星の中心にある六角形に水晶で判定された色が映る。

 この一年Bクラスの生徒達三十九名の魔力測定の結果は以下の通りだった。

 青が二名、薄い青が三名、赤が一名、薄い赤が四名、濃い緑が五名、緑が二名、薄い緑が八名、濃い黄が九名、黄が五名。

「……さすがに紫はいないか……」

 紫なんて希少価値で学年に一人か二人いるならいい方だったから流石にそこまでの期待はしていなかったが、それでも少しだけ残念な気持ちはある。なにせ、俺の同級生には三人も居たからな。

 ちなみにエリスとエリナの双子姉妹が青の普通色でこのクラスで一番魔力が高かった。

 エリスとエリナで思い出したのだが、昨日の夜はカトウの分も何故か俺が払うことになった。

 金がないって言ってるのに俺に奢らせたんだ……鉄拳制裁くらい仕方ないよな?

 その話はともかく、なぜかメグミは赤だった。

 数ヶ月前にうちの庭で測った時は、薄い赤だって聞いてたんだが……この短期間で上がったのか?

 やっぱり魔法の才能があるのかな?

 ちなみに魔力のランクの色は基本変わることはない。

 正確には一度、黒・紫・青・赤・緑・黄・白と判定されれば二度と変わることはない。例外はあるが。

 しかし、魔力量が増えれば、色の濃度は変わる。

 魔法を使えば使うほど、魔力量が変質する。

 だから、メグミの魔力量が上がっても、本来ならさして気にするほどのことではないのだが、彼女は魔法を使ったことはなかったはずだ。

 最初の測定の時に彼女が赤を薄い赤だと勘違いしてしまっただけだとは思うがな。

 ……それとも本当にこの短期間で魔力の最大値が伸びたのか?

 まさか、俺の知らないうちに魔法の鍛練でもしていたのだろうか?

 どちらにしても、彼女の魔法の才能が高いことにかわりはなかった。

 魔王に気に入られてたし、俺の思っている以上にすごい子なのかもしれないな。

 そんなことを考えていると職員室の扉が勢いよく開かれた。


「初等部から濃紫が出たぞー!!」

 入ってきた教師のその言葉で、途端に職員室が騒がしくなった。

 …………忘れてたわ。


 ◆ ◆ ◆


「今日からこのクラスの仲間になったベル・リーパーさんです。皆仲良くしてやってくれ」

「ベル・リーパー五歳です。皆さん仲良くしてください」


 俺の紹介の後、ベルが挨拶をした。その瞬間、クラスが急に騒がしくなる。

「あの子が例の?」

「……リーパー?」

「まだ五歳なんだよな?」

 そんなことを自分が受け持っているクラスのあちこちから聞こえてくる。


 なぜこんなことになったのか?

 時は昨日にさかのぼる。


 ベルの濃紫が発覚した後、教頭がいきなり俺にベルの飛び級を伝えてきた。

 当然俺は反対した。

 彼女の思考能力はまだ幼すぎると思うし、あの子の年のこととか、まだ読み書きも上手くいかない子を高等部に飛び級させるのは流石にどうかと思う。

 そう抗議したら、濃紫は能力が高すぎるため、時間をかけて育てるよりも、さっさと上にあげて育てる規則だからと言われた。

 初等部、中等部で重視されるのは、魔力量の底上げだった。

 そのため、濃紫は高等部にあげるのだそうだ。

 しかも、一年の担任の中で濃紫を安心して任せられるのはあなたしかいないとか言って、押し付けられた。

 何勝手に決めてやがんだ?

 あのハゲ、残りの毛根全部抜くぞ。

 と心のなかで思いつつ、文句を言える訳でもないので渋々引き受けた。

 メルラン先生は、何故か俺に尊敬の眼差しを送ってくるし、同僚のカトウは、「はふふはふ」と謎の言語しゃべってるし……そういえばこいつなんで回復魔法自分にかけないんだろ?

 そう思いながら、しょうがないから俺がかけることにした。

 まぁ俺が殴ったわけだからな。


 ◆ ◆ ◆


 俺がベルの飛び級のことをクラスに説明し終えて、授業をはじめようとするとエリスが、「先生とメグミさんとその子ってどういう関係なんですか?」と質問してきた。


 だよね。

 普通気になるよね。


「あー、メグミとベルは俺の妹なんだ。この学校に入る際にうちに引っ越して来たんだ」

 設定通りにそう答えると、再びクラス内が騒がしくなった。

「なるほどー」

「なら濃紫なのも納得できるね」

「全然似てなーい」

 など彼らは口々に言っていた。


 そりゃ本当は違うからな。

 でも本当のこと言える訳ないだろ。

 ここにいる女の子は、三十年程前にこの世界に現れて世界最強の軍事国家グルニカを滅ぼした魔王の一人娘だ……なんて、口が裂けても言えないからな。

 紹介したら、とんでもないことになるわ。


 そんなことを考えていると授業開始のチャイムの音が鳴り響く。

 意識を切り替え、そして今日も授業が始まる。


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