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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第6章 校内戦編
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26話 夏期休暇の終わり5


「カトウ先生が……ですか?」

 エリナが驚いたような顔で聞き返してくる。

「ええ。まず校内戦で入賞すれば選択権と呼ばれるものが渡されるの。それはマゼンタ最強決定戦で初戦の相手を決めることが出来る権利……もちろんシードになるという選択も出来るわ……校内戦と違って短期間での戦闘ですからね。そういうシステムが作られたの……いえ、むしろシードにするための権利で……私はそれを使って毎年カトウ先生を対戦相手に選んでいたのよ……毎年毎年、こりもせずに今年こそは勝つと意気込んでは返り討ちにあい、結果毎年のように一回戦負けだったわ」

 メルランは溜め息を吐きながら話しているが、その顔は妙に楽しそうだった。

「まぁ……今年はこの元担任にリベンジする機会がないかもしれないけど……最終的にはこの元担任をしばいてみせるわ」

 そう言いながら、メルランはその無防備な額に軽くデコピンを放っていた。


 その後、メルランに、あの日から夏期休暇で妙なことが起こったりしていないかという質問をされ、特に目立った異常は見受けられなかったため、そのように伝えるとあっさり解放された。


 廊下を歩いている三人は、教室で待っているメグミとアリスのもとに向かっていた。 

「メルラン先生燃えてたね~」

「ええ……やはりライバルのような存在がいるのといないのとでは違うのでしょうか? メルラン先生はカトウ先生を絶対に越えるため、日々研鑽を積み重ねていたとか……」

「憧れだと思うよ……」

 エリスとエリナがそんな話をしていると、歩幅が小さいせいで少し後方を歩いていたベルがそのようなことを呟いた。

「憧れ……ですか?」

「うん……私も師匠(せんせい)にはいつも負けてるよ……それでも少しずつ強くなっているのがわかるし、師匠(せんせい)が真摯に向き合ってくれるのがわかるもん。だからきっと……メルラン先生はカトウ先生に認めてもらいたいんだよ!」

「それっておかしくない? カトウ先生はとっくに認めていると思うよ? 確かに初戦敗退という結果はメルラン先生よりカトウ先生が強いって証明だけどさ……魔導学園エスカトーレの生徒で校内戦を四回連続で一位を取ったのはメルラン先生だけなんだよ?」

「そういえば去年の学内新聞で取り沙汰されていましたね……四年連続はメルラン先生が初めてだって、中等部に大きく貼り出されてましたね。確かにメルラン先生は高等部時代のカトウ先生よりすごい実績を残していますし……カトウ先生の性格からして認めていないなんてことはないと思いますよ?」

「ううん……それは違うと思う。メルラン先生は私と一緒だと思う。きっと皆の前で憧れの人に勝って……初めて自他共に認めることができるんじゃないかな?」

「……同じってことはもしかしてベルちゃんも?」

「うん……私はこの校内戦を優勝して……一番最初に師匠(お兄ちゃん)と戦って……ちゃんと勝つよ!」

 エリスとエリナに向かってそう宣言したベルは「頑張るぞー!」と言いながら、走っていってしまった。


「あはは……ベルちゃんはまっすぐ突っ走るな~」

「そうだね……でも……ああ言えるだけの実力がベルちゃんにはあるもんね」

「まぁ確かに魔法ってのは一朝一夕でよくなる訳じゃないし……でも……私達だって小さい時からガウ兄に魔法を教わってきたんだ……優勝の座は簡単には譲らないよ」

「ふふっ、お姉ちゃんは強いし……きっとベルちゃんと良い試合ができるよ」

「何言ってんのよ! あんた(エリナ)も二位を取るのよ!」

「えっ!? 私が!? む……無理だよ……私……お姉ちゃんと違って強く無いし……」

「できるわよ! エリナは私のたった一人の妹よ? 私が優勝するならエリナは二位に決まってるわ! 最強姉妹の実力を世界中に見せつけるのよ!!」

 エリスは体全体を使ってエリナにその目的を告げる。

 その不可能とも言えそうな夢物語を曇り無き眼で伝えてくるエリスがエリナは少し羨ましく思えた。


「……うわぁ壮大だなぁ……でも面白そうかも……」

「おっ……珍しくエリナが乗り気になってる……なら……気持ちが変化する前に特訓するわよ特訓! ガウ兄ならきっと暇だし可愛い可愛い妹達のお願いを聞き入れてくれるでしょ!」

「うわぁ……お兄ちゃん可哀想だなぁ……まぁ……先生を驚かせたいっていうお姉ちゃんの気持ちもわからなくはないし……別にいっかな?」

「じゃあ皆も待たせてるし……早く行くわよ!」

「あ……お姉ちゃんに一つ言い忘れてたことがあるんだけどさ……優勝するのは私だから、お姉ちゃんが二番目ね」

「はぁ!? さっきまであんた……私強くないし無理だよ~って弱気な発言してたじゃない!」

「そんな昔のこと知らないな~。私……過去は振り返らない女なので」

「……ふふっ、何よそれ……良いわ! じゃああんたもライバルだからね! 勝ちは絶対譲らないから」

「望むところだよ」


 こうして少女達の特訓の日々が始まった。

 そして時間は過ぎていき、校内戦エキシビションマッチが始まろうとしていた。

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