24話 意外な結末7
レンを生き返らせるという人智を越えた奇跡のような力を成し遂げたカトウは、喜びを分かち合っている学園生たちを見ながら、疲れた体を休めるために近くの木に寄りかかりながらへたりこむ。
(つっかれた~! これってすごい能力だけど魔力どころか気力までがっつり持っていきやがる…………まぁ、子ども達のあんな顔を見れたんなら頑張った甲斐もあったかな……)
カトウは満足そうにしながら、木を背もたれがわりにして地面に座った。
「お疲れ……ありがとなカトウ」
そう言ってきたのは、着ている白衣がぼろぼろになっていたマルクトだった。
先程までそんな些細なことにはまったく気がつかなかった。
相当な激戦を行った跡なんだろう。
マルクトの顔には超回復魔法を維持し続けたからか疲労の色が見える。そもそも、マルクトが超回復魔法で延命してくれていたからこそ、蘇生薬の可能性に気付けたのだから感謝したいのはこっちだった。
……でも気分がいいし、恥ずかしいから言わないでおこうと決めた。
「……そうだぞ。もっと俺に感謝しろよ~? そうだな~……今度『Gemini』行ったときはお前持ちな」
「その程度でいいのか? もっと俺に無理難題持ってくると思ってた……」
「例えば?」
「毎月生活費を用意しろとか、アリサの学園生活に使った費用の全額負担とか、敬語使って生活しろとかかな」
「お前の中で俺のイメージってどんなんだよ…………まぁ、今回はお前も相当頑張ったんだろ? それならそんな無茶ぶりを言うわけにはいかないからな」
「……俺は結局何も出来なかったさ……」
「は? お前は頑張ってたじゃないか」
「頑張るとか頑張らないとかじゃないんだ。死力を尽くすのは当たり前の今回では結果がものを言う。どんなに頑張ろうが俺はソラを助けることが出来ず、レンを一度は死なせてしまう結果になってしまった。それは俺の準備不足が招いた結果でしかない」
マルクトは悔しさを噛みしめたような表情を見せている。
敵を逃がしてしまったという結果は確かに、何も知らない人からすれば誰もがマルクトの準備不足を責めたくもなるだろう。
「……だが、レン君の件はともかくソラ君の行方が気になるところだな……」
「それは俺のコネを利用するさ。あの人も自分の国を滅ぼされたくはないだろうからな」
「……珍しいなお前が自分の親を頼るなんて……明日は槍でも降るんじゃないか?」
「利用するものはなんだって利用するさ。あの危険な存在を放置すれば、俺の知らないところで被害が増えるからな……」
「だよな……それだけにあれを逃がした奴が誰か気になるところだな。あれを逃がすってことはあれの危険性も考えたうえでの行動だろ?」
「……おそらくそうだろうな。……ディザイアの協力者はいったい何の目的であいつを逃がしたんだ? ……考えれば考える程わからなくなってくる」
「……そうだな。だが、四大国家の一つが協力してくれるんなら、すぐに見つかるんじゃないか?」
「うちだけじゃないさ。ユリウスがあいつを見逃す訳がない。実際に戦ったことであいつがどれ程危険な存在かわかっているユリウスも国を動かすだろう。それに残りのグスタフ皇国だって魔族が人間界を滅ぼそうとしていると知れば、黙っちゃいないさ……」
「四大国家の三ヶ国全てが動くとなれば、他の小さな国もあいつを見逃すとは思えないな。……これは凄いことになりそうだな」
「……ああ、それだけにソラを生かすのは……やっぱり難しそうだな」
「言いたくはないが彼の生存は諦めろ。そもそもそれに拘った結果がこういう結末を招いたってことを忘れるなよ! ソラと世界の命運を天秤にかける気なら俺があいつの命を取るからな!」
「…………ああ……わかってるよ」
マルクトは晴れた空を見上げる。
「次ディザイアと対峙した時は俺がこの手でとどめをさす」
マルクトは遠い目でそう言った。