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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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24話 意外な結末3


 全力疾走で麓の方へ走っていく人影があった。

 振り返りもせず、黒いローブを身に纏っているだけのそいつは、額に汗を浮かべながら全力で駆ける。


「そこのお前! 止まれ!!」

 後ろからかけられた男の声に、黒ローブを身に纏った人物は振り返ろうともせず、スピードも緩めなかった。

「……仕方ないか……シャープニードル!」


 その姿を見ていた茶色い髪の青年はため息を吐くとそう呟いた。十センチ程度の鋭く尖った針が、黒ローブを身に纏った男の足に深々と刺さった。

 その痛みに低い声で呻き声をあげ、男は山の斜面を転がっていった。


 木にぶつかったことで転がり終えた男は、その足に刺さった針を無理矢理引き抜いた。痛みを我慢しながら男は再び走り出そうとするが「止まりなさい」と言いながら目の前に立って槍を構える女性を見て、人質策に変更しようと考えた。

 男はその巨体で女性を捕まえようとするが、いつの間にか足と頭の位置が入れ替わっており、支えのなくなった巨体は地面に落ちてしまった。


「あなたを捕まえれば、ティガウロ先輩とデートをセッティングしてくださるとの話でしたので、少々手荒になってしまいましたがご容赦を」

 起き上がろうと顔を上げた男はその首元に槍を突き付けられ、抵抗することが無意味であることを理解させられた。


「良くやった騎士ピピリカ。後は私がやろう」

「早くお逃げ下さい!」

 ユリウスのを聞いて顔を青くした男をピピリカは不審に思い警戒を強め、警告するが一足遅かった。


「この世界に祝福あれっっ!!」

 黒ローブを纏った男がそう言うと、その男の体が急に輝き始めた。

 直後、その辺りで小規模の爆発が起きた。


「騎士ピピリカ無事かっ! 返事をしろっ!」

 そうくるとは予想していなかったユリウスは、間一髪のところでルーン(真実)を使って避けていたため無事だった。

 だが、目の前にいて、尚且つルーンなんて特殊な力を持っていなかったピピリカは、無傷ではないと思っていた。


「ユリウス様? わ……私は無事です。……だけど、コウが……」

 爆発により発生していた煙が晴れた時、ピピリカの前で彼女を庇うように立っていた男がいた。

 コウは今にも倒れそうなほどの傷を負っていたが、それでも笑顔を絶やそうとはしなかった。

「……ははっ、ピピリカ……無事か?」

「……コウ……いやあんたとフラグ立てるつもり無いから……さっさとこっちに傷見せなさいよ」

「えっ? そこはもうちょっと自分を庇ってくれた男を泣きながら治療するとかじゃないの?」

「大丈夫よ。日頃の感謝と恨みを込めて目一杯痛みを伴わせた治療するから」

「どこが大丈夫なのっ!? ちょっと待って……こっち来んな!」

「痛いの痛いの意識と共に飛んでいけ~!」

 直後、コウは絶叫を上げながら治療されていた。


 そんな護衛二人の姿を見て、心配するのも馬鹿らしくなり、ユリウスは手がかりを探しにいく。

 そこには無惨な死体があり、肉片と鮮血を撒き散らしている。


 明らかに俺のことを知っていた。

 ……俺が近付いた瞬間、自爆しようとした。……なにかを警戒したかのように……まさか、俺のルーンか?

 俺のルーンは他国どころか自国の人間も限られた者しか知らない。……それが本当なら協力者はかなり力を持った者なんじゃ?

(…………いや、断定するのはやめよう。そう思わせるために俺が近付いたら自爆しろと命令されていたのかもしれないしな)


 自爆した男が首謀者だとは、この場にいる誰も思ってはいない。とはいってもこの男に関心を抱いているのはユリウスだけなのだが……。


 断末魔のような悲鳴を上げていたコウに関しては「治療魔法怖い」と体育座りをしながら暗い表情でその言葉を何度も呟いていた。

 コウがこんな感じになった元凶のピピリカは、ティガウロとのデートプランを楽しそうに考えている。

(……人選間違えたかな?)

 そんな二人の様子を見ながら、ユリウスはそう思うのであった。


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