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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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23話 反撃の狼煙4

「なっ!? 魔力が入って来ない?」

 ディザイアが再び魔力を奪おうとルーンを発動させようとした時だった。まるで何かによって

「やっと効いてきたか……てっきり効果ないのかと思ったじゃないか。……なぁユリウス?」

 その発言で、マルクトの視線の先にいた存在をその場にいた全員が知った。

 そこにいたのは、二人の気絶した騎士を肩に担いだまま、気配と音を隠しているユリウスだった。

 ユリウスは二人の護衛を地面に寝かせると、マルクト達の元に歩み寄ってきた。


「お前のルーンはコウの体に入っていたお前の魔力を通じて見せて貰ったぞ。ルーン名《ルーン・支配》。その支配空間にいる者を手下のように操る能力みたいだな。そのうえ、支配空間内では人間以外の魔力を自在に奪える。……なかなか苦戦させられたがネタさえわかれば戦いようはあった」

 地に這いつくばって荒い息をするディザイアの隣を抜け、マルクトの隣にやって来たユリウスがその説明をした。

 戦闘中にユリウスから通信魔法を通じてその情報を得た俺は「embodying」という自分の魔力を具現化する技を使った。自分の魔力を大地経由でここにあるディザイアの供給対象に溶け込ませた。

 不純物の入った魔力を供給することは不可能なのは、魔力を回復する俺だからこそわかったことだ。

 要するに俺は相手の供給手段を止めたのだ。


 俺の「manipulate」がうまくいかなかったのも、支配空間内では、ディザイアの操る効果が優先されるということで納得できた。


「魔力の供給手段も止め、あいつ自身の魔力も枯渇している。やるなら今しかないな。さぁ、出番だぞ聖剣グラム!」

 マルクトはそう言うと、結晶を宙にばらまき、空いた右手でその照り輝く聖剣を抜いた。


「な……何をする気だ?」

「この戦いを終わらせるんだよ。能力『解放』発動!」

 宙にばらまかれた魔力の結晶が全て聖剣グラムに吸収される。

 すると、聖剣グラムの輝きは増していき、マルクトの発動を合図に桁違いの魔力が辺り一帯に放出された。


 そして、パリンと何かが割れるような音がする。その音を聞いた生徒達は、もしかして、と思い手を動かそうと試みる。

 拳と平手を繰り返し、エリスは自分の体が自分の意思で動かせることに、喜びを体全体で表現した。

「やったーー!! 動けるよせんせ~!」

 他の者も同様に喜びを体現していた。


         ◆ ◆ ◆


 支配空間を強引に壊された結果、操られていた者は全員解放された。

 ここまでされると、もはやディザイアには打つ手がなかった。

 支配空間をつくるのにも大量の魔力が消費される。先程の技に残っていた魔力を全て注ぎこんだ。魔力も枯渇し、後はその身しか残っていなかった。

 生命活動を維持する程度の魔力は残っていたが、それを消費すれば、目的は果たせなくなり本末転倒だ。

 時期尚早だった。

 もっと力をつけて挑むべきだった。

 人間だと侮っていたのがそもそもの間違いだったのだ。


 謎の悪寒に襲われ、振り返ってみるとそこには、怒りの感情をむき出しにした冷気を放つ元魔人と、魔王の力を持った少女の姿があった。

 その冷たく鋭い目が、自分を睨むのを見て、この場から離脱する方法を探す。


「ベルもどうやら無事だったみたいだな」

「うん! カトレアもちゃんと取り戻したよ~!」

「おつかれ。ありがとな。ベルのお陰で滅茶苦茶助かったよ」

 マルクトに褒められながら頭を撫でられたベルは、とても気持ちよさそうな顔を見せる。


 ベルを撫で終えたマルクトは、その顔を真剣なものにして、ディザイアの方を見る。

「……さて、そろそろソラを解放してもらおうか? 聖剣の能力でも駄目なところを見ると、何かしらの条件以外では解けないようにでもなってるんだろ?」

「……ふふっ、ふふ、ふははははははははは! そうだ。貴様を越えなければ、我輩との契約は果たせず、この者は解放されぬ! 残念だったな!」

「……他に方法は?」

「ない! 我輩がどう思おうとも、貴様らがどうあがこうとも我輩がこの身から離れるには貴様の魔力を喰らって我輩が貴様を越える方法しかない!!」

 その言葉を信じるなら、ソラが死ぬか、マルクトを殺してディザイアを強くするしかないということだということに、意識のある全員が気付いていた。

 マルクトを失い、相手を強くするなんて選択肢はマルクト自身も賛成しかねる内容だった。

 ……だがそれは、ディザイアの話を信じていたらの話だ。

「……だったら、力尽くでお前を追い出すしかなさそうだな」

 マルクトは自分に都合の悪い敵の話を信じる程、真面目ではなかった。

 マルクトは自分が何もしていないのに不可能なんて決めつけるのは、可能性の芽を自ら潰すことだと師匠に教えこまれ、大抵やるだけやってみようと考える人間だった。


 だが、実際にいろいろと試そうとした時だった。

 ディザイアに操られていたレンと戦っていたティガウロが通信魔法で連絡してきた。

 マルクトはその通信魔法に応答した。

『マ……マルクトさんですか? なんか急に吐く血の量が増えて動かなくなったんです! どうすりゃいいんですか!』

 ティガウロの声は焦っている様子で、頭が混乱しているのか、内容が全く伝わってこない。

「いったいどうしたっていうんだ? もっとわかるように言え!!」

『えっと、じゃあ手短に言います。レン少年が死にそうです! 魔法が全く使えない俺じゃどうしようもありません!! 早くこっちに来てください!!』

「なっ!?」

 マルクトはティガウロからの報告を聞いて驚きの声を上げるが、それだけでは終わらなかった。


 その場にいる全員の視界がいきなり真っ白になる。

 危険な毒ガスだとマルクトは判断したが、ルーン(薬才)の能力を持つカトウにはそれが視界を遮る煙幕であることをすぐに見抜き、風属性の魔法で煙幕を吹き飛ばした。

「……くそっ! ……逃げられたか!」

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