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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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23話 反撃の狼煙3

 ディザイアが放った技の秘められた効果。それは空間内にいる人間以外の動物、植物から魔力を奪うという効果だった。

 動物の血、植物の養分に含まれる魔力を奪うことで、自分が使う魔力を補給する。その効果により、ディザイアは魔力が枯渇することはなかった。


 そして、その効果を今、ディザイアは最大限に発揮する。

 周りにある木々が徐々に枯れていく。

 飛んでいた鳥が羽ばたく力を失い落ちてくる。 

 木々に住まう小動物が、木から落ちてくる。

 徴収される量に耐えられず、魔力の少ない動物が死に絶えていく。


 その惨状にマルクトは絶句した。

(……間に合わなかったか……)

 ディザイアに魔力が集まっていくのを、マルクトは見ることしか出来なかった。

「……人間、貴様を殺すのには骨が折れたぞ。……だが、それもこれで終わりだ!!」


 ディザイアの手に浮かび出た黒い球体、黒く禍々しいその球体は、ディザイアから魔力を込められ、徐々に大きくなっていく。


         ◆ ◆ ◆


 アリサとメルランの二人をディザイアの支配から解放することに成功したカトウは、マルクトと合流するために広場と化した場所についた。

 そこでは今まさにとてつもない量の魔力が黒い球体に注がれている状態だった。


「全員速やかにこの場から離れろ!!」

 気を失ったアリサを背負っていたカトウは、この場にいる全員に向けてそう叫んだ。

 だが、操られている者達は自分の意思で体を動かせない。そして何よりも、どこにいけば避けられるのかというのは叫んだカトウですらわからなかった。

 マルクトも固まって動いていない。

 こちらをちらりと伺うのが見えたから、こっちには気づいたのだろう。

「……何故、防御しようとしないんだ?」

 今も徐々に高まっていく魔力、とっくに自分の魔力量を越えているあの禍々しい球体。

 あれほどの威力が爆発したら、ここら一帯どころか、国ごと吹き飛びそうな魔力量だ。

 それなのに何故……何もしない?


 確かに今下手に攻撃して暴発させれば、ここにいる全員がもれなく死ぬ。

 だが、術者を遠くに飛ばせばそれで済むのではないのか?


 マルクトの目が諦めた男にはどうしても思えなかったが、それでも不安が募っていく。


「ふはははははははははは! 全員死ね! ダークインビュラム」

 凝縮された魔力の量が絶頂に達し、ディザイアは自分の奥義を放とうとする。

 刹那、ディザイアの周りを白い何かが包み込んだ。


         ◆ ◆ ◆


 それは、普通の人間では到底得られないような魔力量。山にいた生き物から奪った魔力量はマルクトの二倍程の魔力だった。

 だが、マルクトの顔に絶望というものは伺えなかった。


「……その程度か」

 呟いたマルクトの手には、六つの丸い結晶が握られていた。

 マルクトの意思に従い、その硬そうな結晶が砕かれていく。

 凝縮されたマルクトの魔力は、マルクトの体には入らず、マルクトの手に合わせてディザイアの周りを囲っていく。


「こんなもので守れるものかーーっっ!!」

 囲み終わった直後、その中で大規模な爆発が起こった。

 轟く爆音、全てを焼きつくさんとする炎。

 しかし、マルクトの作り出した球体は、ディザイアの放った大規模な爆発を完璧に防いでみせた。


 許容量以上の魔力を維持しつつ、あれほどの爆発を間近で、受けた結果、外傷は見受けられないものの、球体が消え去った後のディザイアは、ふらふらしていた。


「な……何故? あの技は……我輩の奥義だぞっ!」

 防がれた本人は納得のいかない様子だった。だが、それはディザイアだけではない。

 集まっていく魔力の量を見て、マルクト以外の全員が諦めていたのだ。

 それなのに、マルクトはまるでそれをよんでいたかのように、防いでみせた。

「……最後の最後に魔力量で俺に勝負を挑んでくるなんて呆れて言葉も出ないぞ…………だが、強いて言うなら準備の差かな」

「……準備の……差?」


 マルクトは、そう言うと懐から再び丸い結晶を出す。

 懐から出した丸い結晶は、じゃらじゃらと音を立てながら、マルクトの手の平に広がる。

 その数は未だに十個以上あり、それがなにかわからないディザイアは、唖然とした顔でそれを見る。


「お前が準備を始めたのは夏期休暇に入ってからなんだろ? あの頃からソラは俺の元に来なくなったからな。……だが、たったの二、三週間で、数年間準備していた俺に勝てる訳がないんだよ。この結晶は毎日毎日貯め続けた俺の魔力だ。もしも、俺の魔力が尽きてしまった時やこういった状況に備えてな」

 マルクトは確かにそういう意図で魔力結晶を持ち歩いていた。しかし、その量はどんなに多くても五個以下だった。それ以上は必要ないというのが一番の理由だった。

 だが、シズカからの警告はマルクトにその考えを改めさせるのには充分なものだった。

 どんなことにも対処出来るように、マルクトはその日以来二十個は最低限として持っていた。

そして、今回のキャンプでは身につけている魔力結晶を三十個、荷物にも三十個という念には念をいれた準備をしていたのだった。

 だからこそマルクトは、この状況で魔法やルーンを惜しみもなく使うことが出来たのであった。


 そしてこの最終局面において、未だに二十個以上の魔力結晶を持っているマルクトは、魔力が枯渇しかけているディザイアに圧倒的に有利だった。

「…………まだだ。今ので足りぬというのなら、もっと奪えばいいだけのこと!!」

 そして、再びディザイアが大地から魔力を供給しようとした時だった。

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