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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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21話 支配者との戦い13


「なんでカトウさんの場所がわからなくなってんの!?」

 いきなり通信魔法が遮断され、改めて今度はこちらからかけようとしてみたのだが、何故かサテライトにカトウだけ反応しなかったのだった。

「…………皆に何かあったのか?」

 他に連絡が取れなかったのは、マルクト、そしてエリスとエリナ、アリスの四人だ。その四人にかけたことで、そこの全員にかけても、おそらく出ないだろうと考え、他の人を探す。

「……ユリウス様は?」

 そう思ってティガウロがユリウスに通信魔法を発動させようとした時だった。

「ティガウロさん! ご無事ですか!」

 そう言って入ってきたのは赤髪の少年だった。

「……レン少年か? いったい何があったんだ?」

「先生が超やばいんすよ! 早く来てください!」

「…………わかった。案内してくれ」

 ティガウロは、薬を一粒飲んでから、足を引きずりながら外に出た。


 外に出てみると、その騒音がいきなり耳に届く。

 何の音かはわからなかったが、かなりまずい状況であることだけはわかった。

 やけに気温が低いのを不審に思いながらも、近くにある木に寄りかかりながら、妹たちがいるはずの場所に向かう。

 この状況で痛む足がもどかしい。

 急いで駆けつけないといけないというのに、走れないこの足が邪魔で邪魔で仕方ない。

 川に落ちたユリウス様を庇ったことを後悔してる訳じゃない。アリス様のことだって、悪いなんて微塵も思っちゃいない。

 ……ただ、あの程度で怪我をした自分が憎くて憎くて仕方ないんだ。

 動かせ。今より速く! ユリウス様からの命令を果たせないで、何が王様直属の近衛騎士だ!


 レンは足を引きずり、手を木について自分の前を歩くティガウロの姿を見て、にやりと笑った。

(……へへっ、何の疑いもせずにのこのこついてきやがった。こんなことなら警戒してわざわざこんなところに連れて来なくてもよかったかもな。……悪いな。あんたに恨みはないが、ディザイア様の野望のため、その命を差し出せ!!)

 レンは、足を引きずっているティガウロの隙だらけな背中を見て、襲いかかった。

 だが、それを実行に移そうとした直後、脇腹に強い衝撃を受けた。

「……くっ!?」


 その軽い体は簡単に吹き飛んでいき、轟音を轟かせながら太い幹にぶつかる。

(な……なんで!? この人は魔法が使えないうえに、怪我してるはず……なんで目の前にいたはずなのに横から攻撃されんだよ!)

 信じられない。とでも言いたげな目で、レンは自分を殴った存在を確認しようとする。

 視線の先、そこにいたのは、ゴーレムという化け物だった。


         ◆ ◆ ◆


「つ……ついてねぇ。こんなところにゴーレムがいやがるなんて」

「ついてないのは当然だよ? 何せこの僕を襲ったんだからね」

 木に打ち付けられたレンを、足を引きずっていたはずのティガウロが、そう言いながら容赦のない蹴りを放ってくる。

 ぎりぎりでレンもなんとか避けてみせるが、木はミシミシと頼りない音を上げながら倒れてしまった。

「な……なんで!? お前の足は怪我で使えなかったはず!」

「おいおい、人に攻撃しておいてよくそんなことが聞けるねぇ? 言っておくけど、僕は君たちの先生とは違って、襲いくる者には容赦する気は微塵もないからね。……さて、君のようなただの学生に、僕が相手をするのも悪いよね。お前たち出番だよ」

 そう言うと、ティガウロの背後から、木で造られたゴーレムたちが現れた。

 その異様な光景を見て、レンは息をのむ。

 ゴーレムは本来群れることなんてない。そして、基本的にゴーレムは強い。

 その二つの事実が、レンに不審を抱かせる。

「ここはいいな。木がいっぱいあって。……お前たち、動けない程度でとどめろよ。情報は吐いてもらわないといけないからな」

 ティガウロが手で、行け、と合図を送ると、ゴーレム達は、その三メートルはあるであろう巨駆を揺らしながら、ゆっくりとレンに襲いかかる。


「おいレン少年、実戦経験のまったくない君に先輩からアドバイスをしてあげよう。相手を奇襲する際は、殺意をみせるな。襲う前から殺気なんて振り撒くからこういう目にあうんだ」

 ゴーレムにもみくちゃにされているレンにそう言って、ティガウロはマルクト達のいるところへ向かおうとした。

 しかし、自分の頬を掠めて木にぶつかったものを見て、目を見開き、その足を止める。

 木にぶつかり、燃え盛る残骸となった一体の木製ゴーレム。

「……は?」

 そう呟いたティガウロは、急いで後ろを振り返ると、その地獄絵図に目を疑った。


 自分の指示に従い、少年を戦闘不能にさせるために動いていたゴーレム達が、少年の放つ炎で、周りにある木ごと燃やし尽くしていた。

 何よりも驚いたことは、自分が気付いたのは、ゴーレム達が灰になった後だということだ。

 自分の魔力が介在し、自在に操れるゴーレムが、目を離していたとはいえ、やられた後に気付くなんてあり得ない。ましてや、十体も用意していたのに、全員再起不能となっている。

 それはつまり、目の前にいる少年は、一瞬でゴーレム十体を灰にしてみせたのだ。

(……レン少年はこんなに強かったのか?)

 事前に調べたデータとは大きく違う。

 しかし、目の前で起こっている現実から目を逸らす訳にもいかない。

 ここは、気を引き締めてかかるべきだと考え、ティガウロは臨戦態勢に移った。

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