21話 支配者との戦い11
「お……王様?」
目の前にいた筈のユリウスがいつの間にか後ろで高笑いをしていた。
その時、初めて気付いた。
手に持っていた剣の刀身がいつの間にか根元から真っ二つになっていたのだ。
(……いったいいつの間に?)
そう感じたコウは傍にいたピピリカの槍を見てみると、同様に刀身が斬られていた。
後ろで高笑いをしているユリウスの手には赤く輝く聖剣レーヴァテインが握られていた。
(……これが噂に聞く、レーヴァテインの能力『神速』か?)
目にも止まらぬ速さ、聖剣に認められた者だけが使える聖剣の能力を見せたユリウス、今までは剣を抜かなかったのが、圧倒的な実力差によるものなのだと思い知らされた。
「おおいに結構! いいじゃないか! 自分に正直で実に良いぞ、騎士ピピリカ! ティガウロのことが好きなら、今度からは私も協力しようではないか。……そろそろティガウロにも、結婚とか考えて欲しかったからな。良い機会だ。この私が協力してやるのだから、大船に乗ったつもりでいろ!」
「まじすか、王様!」
「おいピピリカ、王様に向かってなんて口の利き方してんだーー」
「おおまじだ!」
「……王様~」
「だから私に全て任せたまえ。諸悪の根源を殺るためにも、お前達の力は必要不可決なのだ。……だから、二度と私の前で死ぬと言うのは許さん! やるなら全力でかかってきたまえ」
「……いいんですね? 俺たちのこの剣と槍を斬ったってことは、ストッパーという制限をなくしたということなのですよ。……ティガウロ先輩に聞かなかったんですか?」
「構わん。せっかくならば、ティガウロが育てた二人の実力を知っておくのも悪くない。……それに、そっちの方が相手に負担をかけられるだろう」
「……そう言うことなら、もう何も言いません」
コウがそう言うと、二人の手に光の粒子が凝縮されていく。光の粒子は凝固していき、それぞれ剣と槍という武器を造り出す。
「疑似聖剣ライザ」
「疑似聖槍カルヴァネス」
「……それが、ティガウロの母国に伝わる二本の聖武器を見本として造られた疑似聖剣ライザと疑似聖槍カルヴァネスか。なるほど。……さ~かかってくるがいい。本気の私に一つでも傷をつけられたら、ティガウロの秘密を一回につき一つ教えてやるぞ?」
「俄然やる気が出ました!! 王様お覚悟を!!」
「あ~もうっ! 知りませんからね王様!」
◆ ◆ ◆
魔法の一斉放射によって立ち込める煙。
自分の意思とは関係なく放たれた魔法は自分たちを守ってくれた担任教師に容赦なく放たれた。
(いったいなんで!?)
自分たちの意味不明な行動に訳がわからなくなる。
自分の撃った魔法が担任教師を襲ったことで罪悪感が胸の内を侵食する。
「……あ~くそっ! 油断した。まさか、生徒たちを操る力があるとはな……」
立ち込めた煙を風で払い、そこにあった担任教師の姿には最初に受けた矢以外のダメージを一切受けていないようだった。
「せ……先生? だ……大丈夫なんですか?」
「はっはっは~、まだまだお前達には遅れをとるほど老けちゃいないさ」
不安気な顔で聞いてくるエリナに対して、マルクトは満面の笑みでそう返した。
それは、背後にいる者達に不安を覚えさせないための精一杯の強がりだった。顔に笑顔を作ってはいたが、そんなマルクトも直前でルーンを使って守っていなかったら危なかった。
エリナの後ろでは、エリナ同様に自分たちの信じられないような行動に対して、罪悪感を募らせる子ども達の姿、人を操る系のルーン。
まさか、自分以外にそれを持っている者がいたことに、多少なりとも驚きはあった。だが、それ以上に、大切な生徒達にこんなことをさせたディザイアに相当な憤りを感じていた。
ディザイアだけは絶対に許さねぇ!
俺の大切な生徒を勝手に器として扱い、大切な生徒を苦しめながら拘束しただけじゃ飽きたらず、大切な生徒達を操るなんて、……絶対許さねぇ! 殺す。ソラの体から引きずり出して、一切の慈悲すら与えずに殺す!!