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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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21話 支配者との戦い10


「早くお逃げください、王様!!」

 手に持つ剣を振りながら、目の前にいる騎士が言ってきた。

 ユリウスは剣による攻撃を素手で受け流しながら、この場の様子を観察する。

 横には槍を構えながら、攻撃の隙を伺う女性、涙を流しながらも、嫌なタイミングで先程から攻撃を仕掛けてくる。

(ティガウロの育てた後輩か……敵に回すと厄介極まりないな)


 さっきの落雷が起きてから少し経った後、いきなりコウとピピリカという俺直属の近衛騎士が襲いかかってきた。

 最初は、俺に対して不満が募っているのかと思ったのだが、逃げるよう促す男性騎士(コウ)と、泣きながら黙って槍を振る女性騎士(ピピリカ)の様子からどうやら操られていることがわかった。

 犯人の可能性があるとしたら、マルクトに『変身』したシーガルというのが妥当だろう。

 しかし、だとしたら一つだけ疑問が残る。

 何故このタイミングなんだ?


 シーガルは慎重な男だ。

 それがこの二ヶ月を得て出した結果だ。

 あの戦いにおいて、カトウの覚醒があったからこそ勝てた。

 マルクトにおいては防御に徹していたし、俺一人では、勝つことすら困難だっただろう。

 要するに、カトウが《ルーン・薬才》を目覚めさせなければ、こちらの勝てる確率は少なかったということだ。

 カトウの覚醒はイレギュラーなもの、計算に入っていなかったのはしょうがない。

 だからこそ、このタイミングで襲いかかってくるのが解せない。

 マルクトも、ティガウロも、カトウだっているこの状況、少なくとも、俺を含めて四人のルーン持ちが居合わせているこの状況で何故攻めてくる?

 しかも、同時攻撃なのは、上で起こった爆発から推測できる。


 マルクトかカトウと競り合う程の実力者が、少なくとも一人。

 そしてその爆発こそが、シーガルではないかもしれないと思ったきっかけでもある。

 さっきの爆発は、魔法と魔法がぶつかり合って起きたものだ。

 魔法を嫌う組織のボスが、魔法を使うやつと手を組むのか?


 だが、それらは推測に過ぎない。

 もしかすると、シーガルもなりふり構っていられなくなったのかもしれない。

 ただ、シーガルではない可能性が高いというだけだ。


「……お願いします王様……お逃げください。……俺たちにこれ以上、王様を攻撃させないでください!!」

 いきなり立ち止まったコウの言葉で、ユリウスは思考を中断させられた。

「……悪いが、お前達を置いて逃げる訳にはいかないのだ。お前達を二人だけにした瞬間、お前達に何をされるかわからんからな」

「……だったらいっそのこと、俺たち二人を殺してください!」

「…………今、何て言った?」

 その言葉に、コウは息を呑む。

「殺せ? ……俺に? お前達を?」

 ユリウスからいきなり発せられた威圧。今までの優しさに充ち溢れていた態度が一変、呼吸もままならないような威圧的な態度になった。


「て……敵に操られて、王様に剣を向けたなんて、お父様やティガウロ先輩に顔見せできません! それならいっそ、この場で死んだ方がましです!! ……だけど、自分の手が、足が、自由に動かせないんです! ……だから、どうかお願いします。……王様の手でこの俺を殺してください!」

 コウの目は真剣そのもので、意思を変える気なんて毛頭ないことが見てとれた。

「……騎士ピピリカ、君の意見はどうなんだ?」

 じりじりと詰めよっていたピピリカをユリウスは言葉で動く足を止めた。

 しかし、ピピリカは何も言わない。

 ただ、握った槍を強く握りしめるだけだった。

「……おい、ピピリカもなんか言ったらどうなんだ!」

 その煮え切らない態度にコウが声を荒げる。

「…………嫌だ」

 黙って俯いていたピピリカが小さな声で呟いた。

 その言葉を聞いたユリウスは、にやりと笑う。

「もっとはっきり言いたまえ」

「わ……私は死にたくありません!」

「ピピリカっ!」

「だって、私まだティガウロ先輩と○○や○○○○だってやってないんだよ! それなのに死ぬなんて……良い訳ないじゃん!」

「…………ピピリカ、王様の前でそれを言うのか」

「こっちはね! この一年間フラストレーション溜まりっぱなしなのよ! しかも、マルクト様の家とはいえ、ティガウロ先輩と一つ屋根の下で過ごせると思ってたら、ティガウロ先輩、実家通いだしっ!」

「……そりゃ仕方ないだろ。家の仕事だってやってるんだし」

「うっさい、うっさい! そんなことわかってるわよ!! それにそれだけじゃないのよ!! この前なんかね! ティガウロ先輩の前で、ちょ~エロい下着着けて部屋に押し掛けたのよ! ……そしたら、眠いって一言で追い返されたのよ!! ちょ~信じらんない!」

「……それに関しては、ティガウロ先輩が疲れてる日に行ったピピリカが悪いだろ……」

「もしこのまま死んだらね~、ティガウロ先輩に憑いてやる~! …………あ、でもそうなったらティガウロ先輩と死ぬまで一緒……」

「おいーー」

「フハハハハハハハハハハ!!」

 二人が言い合いをしていると、いきなりユリウスが高笑いをし始めた。

 ○の中身は想像にお任せします。

 


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