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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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21話 支配者との戦い8

 全員の無事が確認できた瞬間、マルクトは背中に悪寒が走るのを感じた。

 ディザイアの方を見ると、ディザイアは狡猾な笑みを浮かべて生徒たちを見ていた。

「早く逃げろーっ!!」

「ダークマター」

 ディザイアが生徒達に向かって闇属性の魔法を放った。

 いきなり向けられた攻撃に対して、五人は驚いた声をあげるだけでその場に立ち尽くしてしまった。


 凝縮された闇が、五人の生徒をのみこもうとしている。

 このまま、動かずに立ち尽くしたままであれば、間違いなく五人を失ってしまう。それだけはなんとしても回避したかった。


 マルクトの行動は速かった。

 一瞬で五人とディザイアの間に立ち、何重にも防御用の結界を発動させる。本来であれば、結界を一枚完成させるのに一秒程度が限界だった。だが、その危機的状況がマルクトの全力を呼び覚まし、零コンマ零一秒という驚異的な速さで結界を展開させた。一枚一枚の強度も普段よりも高く、その結果、ダークマターによる被害を零にしてみせた。

 しかしーー

「がはっ!?」


 マルクトは前方からのダークマターを完全に守りきった。

 しかし、前方のみを警戒していたマルクトは()()がおろそかになっていた。

 背中から肉体を貫通した光輝く矢をマルクトは苦しげに壊してみせた。出血は回復魔法を使ってなんとかおさまったが、動揺は治まらなかった。

 後ろを振り向くと、弓を構えて次の矢を射出しようと構えているエリナの姿があった。

「いやっ! 避けて! 先生!!」

 エリナが泣きながら叫ぶが、光る矢は容赦なくマルクトへと襲いかかる。

 しかしマルクトは、それを直前で、結界魔法を張って防ぐ。


 魔法名シャインアロー、エリナが攻撃魔法の中で唯一得意としている光属性の魔法だった。

 本来であれば、閃光を放つことで相手の視界や意識を奪うことを主目的としているこの魔法は、その名の通り、矢として用いることも可能となっている。


 先程、マルクトに向けられたシャインアローは、矢としての役割を強く持っていた。だからこそ、結界を出したことも頷けるが、それはミスだった。

 シャインアローが放たれた瞬間、目の前が真っ白になる。

 今度のシャインアローは矢としてではなく、相手の視界や意識を奪う効果を発動したのだ。

 エリナからの攻撃という予想外な展開で、マルクトの判断能力が鈍った結果だろう。

 マルクトの意識が真っ白になる。

 しかし、意識が真っ白になる直前、舌を噛むことで意識を覚醒させ、ふらつく程度で留めた。


 視界が徐々に回復していき、視界がうっすらとその光景を映し出す。

「…………冗談だろ」

 そこには、マルクトに向けて攻撃魔法を放とうとする生徒たちがいた。

 次の瞬間、一斉に放たれる攻撃魔法。まるで、マルクトの視界が回復するのを待っていたかのようなタイミングで放たれた攻撃だった。


「自分が育てた生徒の手で死ね、人間!!」

 ディザイアは土煙に向かってそう吐き捨てた。


         ◆ ◆ ◆


 足場の悪い山道を颯爽と駆ける三つの人影があった。

 狩りに行った際に見かけた山の中腹辺りに位置する平たい丘があった位置での爆発。付近にいたカトウは、メルラン、アリサの二人を連れて、急いで昼食の準備をしている生徒たちの方へと向かった。

 カトウは後悔していた。


 何かが起こった。

 おそらく、マルクトにも予想外だった何かが起きたのだと思った。万が一のことを想定していたが、タイミングが悪いことにマルクトが動いてしまった。

 ユリウスの位置が麓付近である以上、転移魔法を使えるマルクトがあそこにいると考えて間違いないだろう。

 マルクトがいるから、キャンプ地を離れていたが、マルクトがいないのなら、ほとんど無防備と変わらない。せめて、メルランをあそこにおいておけば良かった。

 一応、付近にあるテントの中でティガウロが療養中のため、眠っているだろう。だが、足の骨はなんとか治療してはいたが、めんどくさかったのもあって、完璧な治療は後回しになってしまった。

 その判断が、今は悔やまれる。


 こんな時の護衛だった筈なのに、ユリウスの護衛と修練を優先させているから、間違いなくユリウスと同じ位置だろう。

 だが、それを咎めることは出来ない。

 近衛騎士の二人にとって、ユリウスは一番に守るべき対象だ。

 ティガウロがアリスたちの側にいることと、マルクトがいることに安堵すれば、一番の護衛対象を守ろうとするのを責められる筈がない。


 だからこそ、急いで向かわないといけなかった。

 しかし、そのタイミングで、キャンプ地に、けたたましい轟音を轟かせながら、一筋の雷が落ちた。

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