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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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21話 支配者との戦い1

(ここはどこだ?)

 目を覚ましたマルクトがいた場所は、椅子の上でも、ましてや山の中とも言えないような場所だった。

 木も土もほとんど何もない。

 あるのは、水のない川、土も石もない岸辺、何故そう思ったのかは分からなかったが、ただ、感覚が、それは岸辺と川であると訴えかけてきた。

 しかし、同時にこの場所に見覚えがあることを思い出した。


「……ここって、……あの時の?」

 以前、シズカと会った場所で間違いないと思えた。

 それなら、またこの場所でシズカに会える?

「! そういえば前回と違って声がでてる!?」

 その事実に気付いた俺は、シズカを探すことにした。 

「シズカーっ!! どこにいるーっ!」

 前回と違って、最初の場所にはいなかったから、自分の動ける範囲で川に沿って探す。

 何度も何度も呼び掛けるが、反応は一切返ってこなかった。

 

 どれくらい走ったのか分からなかったが、それでも探し続けると、ようやく人影を見つけることができた。

「シズカ!」

「残念だが、シズカ殿は来ぬぞ」

 その声は女性のものとは思えない程低かった。

 だが、他にこの場所で頼りになる者もいないため、あえて近付くことにした。


 そこにいたのは、自分と同じくらいの身長ではあるが、マルクトとは異なり、あからさまにごつい男だった。金髪で体格の良い男は、腕を組み、堂々と立っていた。

「貴公とは初めましてだったな。私の名はグリモワールだ。気軽にグリルとでも呼んでくれ」

 グリルと言う名前に、マルクトは一人しか思い当たる人物がいなかった。

「グリル? ……ってことは、あんたがベルの父親か? へ~、意外と接しやすい感じなんだな?」

「この半年間は、ほとんど暇を持て余していたからな。生きとる人間と話すのは久しぶりなのだ。それに、貴公には、ベルフェゴール()が世話になっているしな。何かお礼をとずっと思っておったのだ。……少し話さんか?」


 マルクトも彼とは話してみたかったが、マルクトにもやることがあった。

「悪いな。俺も話したいのは山々だが、シズカを探さないとーー」

「さっきも言ったとは思うが、シズカ殿なら来ぬぞ」

 魔王グリルは、マルクトの希望を打ち砕いた。


         ◆ ◆ ◆


「シズカ殿は、一度しか使えぬ権利を先日行使した。もう二度と、現世との接触は出来ん。……まぁ、それはこちらも同様なのだがな」

「そちらのルールはわかった。シズカとはあれが最後の機会だったということだな。…………となると、俺には一つ疑問が出来た。何故、あんたは面識のない俺を呼び出した? ベルやカトレア、お前のペットと、俺以外にも選択肢はあったんじゃないのか?」


「それは違うぞ。私には、ほとんど選択肢がなかった。この世界では、親しい者と話す場合、デメリットが多いのだ。一度でも会ったことがある場合、シズカ殿の時みたいに、いろいろと誓約が行われる。身動きを封じたり、相手の声を出させなくしたり、会う時間を減らされたり、と様々な誓約に縛られる。それでも、彼女はたった一度きりの機会を犠牲にした。彼女も他にいろいろと言いたいことがあっただろう。横で見ていた私には分かる。……それでも、貴公にあの言葉を伝えた意味が分からんのか?」

 いきなり放たれたその鬼気迫る迫力は、元魔王というだけのことはあった。

 グリルは怒っている。それはおそらく、俺がその忠告に対して、答えを見つけられていなかったからだ。


「時間がないから、端的に言うぞ。魔界を私の手から奪ったものがすぐ近くまで来ておる。名はディザイア、詳しくはカトレアから聞け。奴が、次に狙っておるのはこの世界だ。

 それからベルフェゴールを絶対奴の手に渡すな! これは親としての願いでもあるが、元魔王としての忠告でもある。奴は管理者の力が私の息子にいくと思っておったが、私の意思にも、奴の意思にも反して、それはベルフェゴールの中で眠っておる。

 奴はすぐそこまで近付いておる。例え、親しい友人だろうが、貴公に忠誠を誓っていようが、絶対に信じるでないぞ!!」


 グリルがそれを言い終えると、俺とグリルが存在している世界が崩壊を始めた。

「……タイムリミットか」

 グリルは煩わしそうに舌打ちするが、最後に一つだけ、と言ってきた。


「私の魂とシズカ殿の魂はサリエルが持っておる。奴は己の持つルーンで、一度ダメージを与えた者の魂を奪うことができる。勿論、抵抗は可能だが、死ねば奴の下へいく。おそらく貴公は、その情報を知っていようが、サリエルを叩きのめしに行くのだろう? ならば、知っておけ」

 グリルがその言葉を言い終えると、世界は完全に崩壊した。

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