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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第1章 魔王との出会い
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3話 魔導王国マゼンタ5


 ベルとメグミが魔導学園エスカトーレに入ることが決定し、二人は入学に向けて文字の読み書きの勉強に勤しんでいる。

 だが、問題が起こった。

 それは俺自身が教師になってしまったことだ。

 ただ、魔法開発研究所には卒業後もずっとお世話になっていたし、自分のしたい研究に好きなだけ没頭できるあの仕事が俺は好きだ。その為、魔法開発研究所と魔導学園エスカトーレの教師を両立することにした。

 しかし、それは容易なことではない。

 魔法開発研究所にいる俺の信頼できる部下に、教師になったら俺の仕事量を減らしてもらうように指示をした。

 そしたら何故か、所長は俺が辞めると思ったらしく、研究所内は大騒動になった。どうやら三ヶ月の欠勤は俺が思っている以上にしこりが残ったらしい。所長は俺が研究職に興味を失ったと勘違いしてしまったのだ。

 その勘違いは所長だけではなく研究部門のほぼ全員が思っていたらしく、そのせいで全体の流れが滞り、所長からも辞めないでと涙ながらに懇願されるという事件もあった。

 ただでさえ魔王討伐の際の仕事が大量に残っているのに、仕事が更に増えたのであった。


 それはともかく、今回の入学に際して、ベルだけでなくメグミの分の身分証が必要になった。

 二人は一応、俺の屋敷で暮らしているからな。

 正直生徒と教師が一つ屋根の下で暮らすのは、何かと問題になると思われたため、急遽必要になった。

 とりあえず二人は俺の妹ということにして、それぞれリーパーの家名を名乗らせることにした。

 本当は親子にしようかとも思ったが、クリスにたしなめられた。

「旦那様。ベル様はともかく、さすがにメグミ殿とはどう見ても、親子には見えないと思われます」

 それもそうかと親子関係は却下され兄妹という設定になった。

 ちなみにそこら辺のめんどくさい作業はうちの有能執事(クリス)がやってくれた。

 本当にいてくれて助かるよ。


 そして、ベル達が俺の家に来てから三ヶ月が経ち、今日は入学式の前日だ。


 ◆ ◆ ◆ 


『魔導学園エスカトーレ』

 この学校は世界で一番大きい魔法専門の学校であり、この魔導王国マゼンタの機密文書もいくつか保管されている。

 この学校には、初等部、中等部、高等部があり、それぞれ制度は違うが、制服の胸元にはこの学園の校章でもある六芒星のマークがついてある。

 ちなみにこの学校では優秀な生徒には飛び級という形で上に上がれる制度がある。

 しかし、逆に年の終わりの試験で合格出来なかった者は上がれないし、そのまま留年することもある。

 学年は基本的には年齢で分けられ、初等部は五歳から、中等部は十歳から、高等部は十五歳から入れる。

 五年かけて年齢やその者の技術にあわせて魔法を学ぶが、入学は基本的には年齢で分ける仕組みになっている。


 そんな訳で、ベルは初等部から、メグミは高等部から入学になる。


 ◆ ◆ ◆


 さて現在の俺の状態を説明しよう。

 目の前に束ねられた仕事の書類の山がいくつも出来ている。

 俺がしっかりとした説明を研究所にした結果、研究所側の対応が俺にしかできないと思われた書類や仕事をとりあえずいつもの仕事と一緒に持ってきたのである。

 これには、さすがの俺でも軽く殺意を覚えた。

 魔王討伐の際のたまった書類だってまだ残っているのに大量の書類と研究資料持ってくるあいつらはなんなの?

 悪魔なの?

 ベルやカトレアよりあいつらの方がよっぽど悪魔に見えたよ?

 もう無理です。

 起きていらんない。

 もう三日徹夜でずっと寝てないんです。

 おき続けるの無理です。

 寝ます……。


「起きて。お兄ちゃん。朝だよ」

 その声を聴いたマルクトの意識は覚醒する。

 マルクトが目を覚まし、声がした方を確認する。

 そちらを見ると、耳元でベルが未だになんか囁いていた。


 ベルは俺が起きたのを確認すると、クリスとハイタッチをしていた。

 仲いいね君たち。

 ベルはクリスとハイタッチを終えると部屋を出ていった。

 え? 何しに来たの、あの子?


 外を見てみるとまだ真っ暗で、やっぱり朝ではなかった。

 時計を見ると十時だった。

 十五分しか寝せてもらえませんでした。

 せめて一時間くらい寝ていたかった。


 そう思いながらも仕事を片付けるマルクトでした。


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