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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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20話 キャンプ3

 カトレアの目は、絶対に成功させてみせると訴えかけてきた。

「わかった。二人に任せる」


 こうして、マルクト、カトレア、メグミの三人によるベル奪還作戦が開始された。


 カトレアはメグミに作戦の内容を軽く説明してから、魔人特有の魔法を呟き始めた。

 魔人特有の魔法だとわかるのは、彼女の詠唱がまったく意味のわからないものだったからだ。


 カトレアが呟き続けていると、カトレアの魔力が凝縮されていくのを肌で感じとった。

 準備が整ったカトレアは目だけでメグミに魔法発動を促した。


 俺の隣では、魔法を発動する準備を終えたメグミが彼女からの合図を待っていた。

 合図を確認したメグミは準備していた魔法を、怪鳥目掛けて放つ。

「サウザンドロック!」

 怪鳥に向かって数えきれない数の拳程度の石が飛んでいく。

 威力は低めに設定したとはいえ、中型魔法を意図も容易く発動してみせたのは、彼女の実力が上がってきたからだろう。


 怪鳥のもとへ飛んでいく大量の石、数発の石は当たっていたが、怪鳥は距離重視にしている攻撃力のまったくない石をそれほど気にしてはいない様子だった。

 しかし、足止め効果としては充分の効果を発揮した。


「先代魔王様から与えられた蒼氷華(そうひょうか)の二つ名をなめるなよ! 白豪ごときが、私に喧嘩を売ったんだ。ただで済むと思うなよ!」

 いつの間にか腰の辺りまで伸びている銀色の髪をなびかせ、カトレアは、凝縮していた魔力を解き放つ。

「アイシクルロード!!」


 カトレアの魔法は凄まじく、この場を一瞬で氷点下まで下げるほどの冷気を振り撒く。

 白い冷気は、メグミが放った石を伝い、怪鳥の周りにあった石まで凍らせ、氷で出来た道を作ってみせた。

 怪鳥は、その氷が砕けないせいで、その場から逃げられなくなっていた。


「お疲れ二人とも。後は任せろ!」

 俺は二人を労った後、目的を果たすために、氷で出来た道を進んでいった。


         ◆ ◆ ◆


「キシャアアアアアアアアア!!」

 怪鳥は氷の道を進んでいるマルクト目掛けて翼から羽を飛ばして攻撃してくる。

 翼から放たれた羽をマルクトは避けていくが、羽は氷の道に深々と刺さっている。

 当たれば痛いどころでは済まないだろうと思いながらも、マルクトは全く当たる気がしなかった。


「この程度のとろい攻撃じゃ、クラスの上位メンバーにかすり傷一つつけられないぞ。このバカ鳥が」

 マルクトは、魔法を一切使わずに、氷の道を上りきり、強烈な蹴りをその無防備な腹に叩き込む。

「グルアアアアアア!!」

 呻き声をあげた怪鳥は、痛みに耐えられずベルを手放した。

 宙に浮いたベルを、マルクトは氷を蹴って彼女の下にある氷の場所まで行き、抱き止めた。


「無事だったか?」

「えへへ~」

「………どうしたんだ急に?」

 腕の中でこちらを見ながらにやけているベル。なんでこんな状況でにやけてられるんだろうか。

「物語に出てくるお姫様みた~い」

「………そりゃ良かったな」

 飛んでくる羽の攻撃を避けながら、ベルの言葉にどう返せばいいか迷って、結局そう答えることしかできなかった。

 ベルが頬を膨らませてくるのをみて、別の反応を期待していたのがわかる。それでも、こんな状況で呑気に話している場合じゃないんだから仕方ないだろ。

(あ~もう、さっさと終わらせよ)


 マルクトは怒り狂った様子の怪鳥が放ってくる攻撃をかわしながら、ところどころにある石のでっぱった部分を蹴って怪鳥の上をとる。

「俺は今、苦手な馬車に乗せられて機嫌が悪いんだ。実力が伴ってない鳥風情が見下してんじゃねえ!」

 マルクトはベルを抱き抱えたまま、「convergence」と呟いてから、自分の魔力を凝縮して威力をはねあげ、更に回転まで加えた蹴りを放った。

「グルギャアアアアアアアア!!!」

 怪鳥は鼓膜にダメージを与えてきそうな奇声をあげ、氷の道を砕きながら、地面に叩きつけられた。

 

 風魔法で落下のダメージを無しにして降り立ったマルクト。

 彼らのもとへと一番に駆けつけたのは、ベルを心配していたカトレアで、彼女はベルをマルクトからぶん取った。

 マルクトには安否の心配をしていないようで、むしろ俺が見えているのか不安になってくる。他の女子メンバーたちも、ベルの方へ行ってしまった。

 マルクトのもとに来たのは、「お疲れ~」と言ってきたカトウのみだった。

 もうちょっと苦戦するところでも見せればよかったかな、とマルクトは少し後悔するのであった。

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