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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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19話 出発準備3

 窓から淡く輝いた月を見ながら酒を飲む。

 そんな優雅な一時を過ごしているマルクトのもとに通信魔法による通信が入った。

 キャンプを明日に控え、準備も全て終えた。後は寝るだけのこのタイミングでいったい誰からだろうと思いながら、通信に応じた。


『おいマルクト、今大丈夫か?』

 そこから聞こえてきたのは、ユリウスの声だった。あいつ自身が連絡をとってくるなんてあまりにも珍しかったものだからその内容に興味がわいた。

『ユリウスか? 珍しいな、お前が通信魔法で連絡してくるなんて。いったいどういう風の吹き回しだ?』

『少し用があってな。その前に一つ聞きたいんだが、お前サテライトって魔法具にずっと魔力込めてるのか? すぐに通信出来たんだが』

『そういえばお前には言ってなかったな。発売する前に気付けたんだが、魔力を込めないと発動しないってことは遠くにいるとタイミングが難しいという所長からの意見で少しいじったんだ。携帯している間は、魔力を本人から摂取することで、常時発動状態にしている。とは言っても摂取量は一時間ごとに本人の百分の一くらいだから、そこまで気にすることはないし、少し離せば魔力摂取もおさまる』

『よくこの短期間でそんな複雑なことまで出来たな』

『そりゃあ、このためだけにあの先生のところまで頭下げにいったからな。マリアがいなかったらめんどくさいの一点張りだったけどな』

『相変わらずジャック先生には容赦ないなあいつ』

『まぁな……それで本題はなんだ?』

『おっとそうだった。なぁマルクト、明日のキャンプに俺も同伴するぞ!』

 

 あまりにも唐突な言葉にマルクトは何も言えなかった。

 後ろの方からアリスが何か喚いている声(だと思う)が聞こえてきたので、おそらくキャンプのことを聞いたのだろう。

 しかし、それで何故ユリウスが行くと言っているのかがわからない。


『お前、グスタフ皇国行くって言ってたじゃないか? そっちはどうするんだ?』

『いやなんで俺がそんなのに行かなきゃならないんだ?』


 お前は何を言っているんだ? と言いかけてやめた。

 後ろにアリスがいるということはそこら辺は言い合った後だろう。妹の言葉を聞かなかったこいつが俺の話を受け入れるとは到底思えない。なんなら、ティガウロの意見にも耳を貸さないだろうな。

 というかどうせこいつのことだから、妹と一緒に遊びいきたいって理由であっちをさぼろうとしてるんだろうな。

『……というか、アリスだけならまだしも、一国の王様なんか連れていきたくないんだけど。それにお前が来たら皆気をつかって楽しめないだろ』

『安心しろ。今回はアリスの兄として保護者枠で参加するから別に無礼講で問題ない』

『……いや、それでも無理なものは無理だ。お前だって一国を背負って立つ男ならわがまま言わずに現実を受け入れろ!』

『うるさいうるさい。そもそも、王子の立場から逃げ出したお前がそんなこと言える立場じゃないだろ!』

『それとこれとは今関係ないだろ!』

『あるさ。もしもお前がこのまま断ると言い続けるなら、うっかり口が滑ってお前が他国の王族って噂を王都中に広めるかもしれないな』

『……はあ? ふざけんなよお前! そんなこと許せる訳ないだろ!!』

『あっやばい。今ここにはアリスがいるんだった。ついうっかり言いそうだったぞ』

『お前! ほんっっとうにふざけんなよ!! ………くそっ……明日の九時に俺の屋敷前に集合だ。一分でも遅れたら連れていかないからな』

『ああ、わかった』

『それから連れていく条件は二つ。まず一つ目は二度とその脅しを使うなよ』

『肝に命じよう』

『それから、護衛の人間を連れてくるな。一応、お前が寄越した三人がいるし、それで諦めろ』

『六月の事件みたいに攻めてくるかもしれんぞ。そのためにも、アリスには一個中隊くらいはつけるべきなんじゃないか?』

『……お前はいったい何人で行く気だったんだよ。安心しろ。こっちには一騎当千の猛者が数人いるんだ。国が戦争規模で攻めてこない限りほとんど安全だろ? それともなにか? 世界最強の魔導剣士は妹すら満足に守れないんですか?』

『……ほほう……いい度胸だな。一国の主に対してそのような口を利くなんて。……キャンプ中、寝首をかかれないように気を付けろよ』

『お前こそ、魔法の権威とまで呼ばれた俺を脅したんだ。道中何も起きないといいな?』


 結局二人の言い合いは、次の日クリストファーが呼びにくるまで続いた。

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