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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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18話 嵐の前の静けさ6

 結局今日のパーティーは、何の問題も起こらず、無事に終わった。

 ほとんどの者は帰っていったが、エリスたちは健気に片付けを手伝ってくれた。

 俺の生徒は本当にいい子たちばかりだ。


師匠(せんせい)もカトウせんせーもさぼっちゃだめなんだよ!」

 ……俺なんかベルに注意されるぐらい何もやっていないというのに。


「いや~俺たちはおっさんだからベルちゃんたちみたいに体力ないんだよね~」

 カトウはベルに向かって言い訳をするが、ベルには通用しなかった。

「うそだ! 師匠はこの前の鬼ごっこで私よりも速かったもん! すごかったんだもん!」

 ベルが向けてくる純粋な(まなこ)に俺も胸が痛む。

 久しぶりの鬼ごっこだったせいで、昔のように全力を出してしまったことを、大人げなかったなと最近になって少し後悔していた。

 隣のカトウが二周り違う子ども相手に本気出すなんて正気かと言わんばかりの目を向けてくる。

 だが、童心にかえってしまうことってよくあることじゃないだろうか?

 俺なんて子ども時代は日がな一日寝続けることしか出来ないせいで友達と遊ぶ機会なんてまったくなかったんだぞ。今までやった鬼ごっこだって、相手は師匠ただ一人。恥を承知で言わせてもらうけど、今まで一回も相手に触るどころか追い付くことだって出来た試しがなかったんだ。

 初めて人を捕まえることが出来た感動で調子に乗ってしまっても致し方ないことではなかろうか!


 とまぁ、あの日の話はこのくらいにして、掃除の話に戻そう。ちなみに、俺だってさぼりたくてさぼっているんじゃない。


 今朝は眠すぎて、手伝えなかったので片付けだけでもと思い、さっきから手伝おうとしているのだが、ここの使用人たちがなかなか手伝わせてくれなかった。

 仕事を見つけて手伝おうとしても、「ここは大丈夫ですよ」と笑みを浮かべながら彼女たちが先取りしてくる。そのせいでまったくうまくいかない。

 しかもその先頭に立っているのは不敵な笑みを浮かべるリーナだ。

 あいつ絶対、パーティー中、クレフィに監視させたの根に持ってるな。


 という訳で俺はさぼっているわけじゃない。やらせてもらえないだけなんだ。そこをはき違えないでいただきたい。

 と言いたいところだが、相手はベルだし何を言っても無駄なのはわかる。


 ちなみにカトウはしっかりとさぼっている。

 ミチルが手伝っている間暇らしいから話し相手になっていたところだ。

 とはいえ、ベルにそう言われると働いていない俺たちが惨めに思えてくるので、言い訳せずに働くことにした。

 正直リーナが笑っているのを横目で見た瞬間、無性に解雇したくなった。


 こんな感じで片付け事態も終わり、解散しようとしたところで、エリスが声をかけてきた。

「先生! 明後日の日曜日って空いてますか?」


 その質問にマルクトは頭の中で自分のスケジュールを確認する。今週の日曜日はもちろんのこと、来週は何の予定もないことがわかり、空いていることを伝える。


「やった! だったらまた皆で遊びに行きませんか?」

「遊び!!」

 エリスの言葉に真っ先に反応を示したのはうちの遊び盛り(ベル)だった。

 目を爛々と輝かせ、遊びたいオーラ全開である。


(最近修行の量が増えたから遊びたいんだろうな~)

 そんなことを思っているマルクトには、ベルのことで一つ気がかりがあった。


 彼女(ベル)には前回の戦闘をきっかけにしっかりとした戦闘技術を叩き込んでいる。当然、一朝一夕で身に付く代物ではないし、うまくいかないことの方が多い。行き詰まることもしばしばあるし、今までの訓練とは比べようのない量、しかしベルは、それに文句を言おうとはしなかった。

 途中で投げ出そうとせず、ただひたすら言われたことをやる。

 それは彼女の力となり、着実に成長していっているのを側で見ていると感じる。それは師匠という立場の俺にとっては嬉しいと感じてしまう状況だった。

 ……だが、同時に怖いとも思う。

 このまま彼女が力を得て、サリエルを倒した場合、彼女は今までと同じベルフェゴールという存在なのだろうか?

 人という存在に興味を抱き、手を取り合って生きていこうとする彼女、そんな夢物語を無邪気な笑顔で聞かせてくれる少女がそこに立っているのか不安を覚える。

 手にいれた力をどう使うかなんてのは、結局得るまでわからない。そして、その使い道は彼女自身が決めることだろう。


「先生? 大丈夫ですか?」

 いつの間にか目の前には、俺の顔を覗きこんでいるアリスがいた。

 どうやら、急に黙りこんだ俺を心配してくれたようだ。

 ……本当にユリウスの妹か疑いたくなるな。


「……悪い。少し考え事をしていたんだ。それで結局何しに行くんだ?」

「え~先生それも聞いてなかったの? さっき皆で二泊三日のキャンプに行こうって話になったじゃん」


 エリスの言葉を聞く限り、どうやらこの場にいるメンバー全員が行くことになったらしい。

 ちなみに今いるのは、アリス、エリス、エリナ、メグミ、ベル、ユウキ、レンの一年B組メンバー、ちなみにソラは野暮用があるから今日は来ないとレン経由で聞いていた。

 どうやらキャンプにはレンが誘うらしいので、彼に任せることにした。

 その他のメンバーは、ベルの側近を務めるカトレア、俺のサポートをかって出たクレフィ、ミチルは山が苦手らしく行かないとのことだったが、アリサが行くためカトウも強制参加、彼女を預かったのだから当然といえば当然だ。とは言っても意外と乗り気だったので問題ない。ついでにメルラン先生、その他、近衛騎士三人組が参加することになった。

 ……思ったより大所帯になったな。

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