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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第4章 夏期休暇編
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16話 王様からの指令5

「こんにちは~」

 王国の騎士が訪ねてきたとクリスから聞いて玄関に来てみれば、そこにはよく見知った銀髪の青年が立っていた。その横には、彼の着ているものとよく似た王国騎士の制服を着ている若い男女が二人。

 というか、初めて会った時にアホと言ってきた人物と同一人物とはとても思えない程の爽やかな笑顔をこちらに向けてくる。

 それにしても、店のエプロンの時と違って似合ってるな。

 おっとヤバいヤバい。危うくあの姿思い出したせいで吹き出すところだった。


「……今日はいったいなんの用なんだ?」

「はい。ユリウス様からのご命令により、今日をもちましてマルクト・リーパー様とその周辺にいる人物の警護を任されました」

「……ティガウロがか?」

「はい。後ろの二人は私の補佐として今回の任務に就かせております。二人とも自己紹介を」

「はっ!! ユリウス王直属の近衛騎士団所属、コウ・スペルッツァーと申します!! 本日より屋敷周辺の警護を任されました。よろしくお願いいたします!!」

 そう言って、敬礼をする茶色い髪の好青年、その後に続き、

「同じくユリウス王直属の近衛騎士団所属、ピピリカ・ハルカルドと申します!! 私は、ティガウロ副隊長と共に屋敷外の警護、及び女性陣の警護を主に担当させていただきます」

 藍色の髪をボブカットにしている女性が、手を真っ直ぐ地面に伸ばして挨拶してきた。

 …………二人とも家名があるってことは貴族の子息か? あまり貴族とは気が合わないんだけどな。まぁ、俺に対して反感的な態度をとらずに仕事をこなしてくれればいいや。


「それで、ご存知とは思いますが改めまして、ユリウス王直属の近衛騎士団所属、ティガウロです。二人と違い、貴族ではないので家名はありませんが、前回の実績で近衛騎士団副隊長に昇進しました。今回は、マルクトさんに付き従う形で、護衛をさせていただきます」

 ティガウロの昇進については初耳だったが、そういえば数日前にユリウスから誰かをこちらに送ると言ってたな。確かに一人では全員を守りきれるとは思えなかったので、ユリウスの提案にのったんだった。

「ああ、そういえば今日だったか。とりあえず、三人ともあがってくれ」

 そう言ったマルクトは、扉を全開にして三人を招き入れた。


         ◆ ◆ ◆


「ところでカトウさんの様子はどうですか?」

 広い屋敷の廊下をマルクトに続いて歩くティガウロは、マルクトの近くに寄って後ろの二人に聞かれないように小声で聞いた。

「ああ、ミチルがいてくれたお陰でなんとか落ち着きを取り戻せたらしい。彼女がいなかったらもっと深刻な状態だったかもしれないが、おかげで今のところは大丈夫だ。ちなみに今は自分の力に慣れるために頑張ってるな」

「そうですか、それは良かったです。住んでいた国の記憶を代償として奪われたんでしたよね」

「……ああ」

「本当なら自分もお見舞いとかに行きたかったのですが、なにぶん父が首を縦に振ってもらえなくて、本当にすいませんでした」

「お前の事情はユリウスからいろいろ聞いてる。だから気にしなくていい」

 ティガウロは一瞬寂しそうな顔を見せたが、すぐに首を横に振った。

「そういうわけにはいきません。僕に出来ることはなんだってしますよ。だから必要な時はいつでも言ってくださいね」

「わかった。困った時は頼らせてもらうよ。というかそういうのはカトウ本人に言ってやれよ」

「後で時間をいただけたら、ちゃんと言いに行きます。あとそれから、母さんもカトウさんが目覚めたことを喜んでいました」

「まぁエリカさんもなんだかんだ言ってカトウのことを心配していたからな。早く店にお金落としに来ないかな~って俺が行く度にぼやいてたし」

「……それは心配してるんですかね? そういえば、その母さんですが、カトウさんの快復を祝して今度店を貸し切りにしてパーティーをしようと言ってましたよ」

「パーティー?」

 その単語に一瞬だけマルクトの顔に陰りが見えた。

 記憶という大切なものを失っているのにパーティーというのが気に入らないのだと、ティガウロはこの時思った。

「いえその……過去の記憶がどうでもよくなるくらい楽しい思い出を作っていこうって母さんなりに気を遣っているんだと思います」

「へぇ………まぁ。そういうのもいいかもしれないな。それでいつやるんだ?」

「来週の金曜日に昼からだと聞いています」

「わかった。予定を開けておこう」

 そこで二人の会話は終了し、その後詳しい話を話しあった後、マルクトは彼らを受け入れることにした。


         ◆ ◆ ◆


 彼らを受け入れることにしたマルクトは、三人を客室に案内していた。二階にある三部屋をそれぞれ使わせることにした。

「しばらくここに住んでくれて構わない。必要なら食事も用意させるから、そこら辺の話はうちの執事としといてくれ」

 客間の中には掃除やベッドメイクを終えたクレフィ、リーナ、カトレアの三人に加え、彼女達に的確な指示を送り時間通りに仕事を終えさせたクリストファーが立っていた。

「使用人を紹介しておこう。右からうちの執事をやっているクリストファー、それからリーナ、クレフィ、カトレアだ。基本的に用があるなら、リーナ達に頼んでくれ」

 マルクトの紹介にあわせてお辞儀をする彼らの後に、ティガウロ達も自己紹介をした。


 全員の自己紹介が終わると、それぞれ自分のやるべきことをするために別れた。

「……まさか、ティガウロが俺ん家に住むとは思ってなかったな。他の二人も見た目よりできそうだったし、こんなメンバー送るなんてユリウスのやつ、いったい何考えてんだ?」

 まぁ、そんなことを今更考えたところでどうしようもないし、いろいろと明日の準備をすることにした。


 そしてこの日、マルクトは彼らを受け入れることを受諾するとユリウスに伝えた。ティガウロだけに伝えられた本当の任務を知ることなく。

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