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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第4章 夏期休暇編
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14話 マルクトに挑む者2

 カトウが意識を失って四十九日が経ち、今日は一学期の終業式前日となった。

 生徒達が明日からの夏期休暇をどう過ごすのかと話し合っているのが廊下を歩いていると勝手に耳に入ってくる。

 他国に旅行に行くだとか、海に行ってくるだとかこういう若い時が自分にもあったな~と感慨深くなってくる。

 まぁ、俺の予定なんて特にない。八月に研究所に呼ばれただけという寂しい休日になりそうだ。

 ……でもまぁ、師匠が言うには明日らしいから、あいつのリハビリを手伝うのもありかもしれないな。


 師匠の言った通り、カトウは未だに目を覚ましてない。

 師匠に会ったあの日、夕方に再び病院に寄って、カトウのことを二人に伝えるとミチルはすごく喜んでいた。……アリサに関しては、

「別にカトウ先生なんかどうだっていいけどね。……心配なんて別にしてないわよ!! ……ただ、ミチルさんが辛そうなのが嫌なだけ」

 そんなことを言い始めた。思春期ってやつなんだろうか?

 ……なかなかにめんどくさいお年頃のようだ。


 話を戻すとしよう。結果的にカトウはすぐに病院を退院して自宅療養になった。

 未だに目は覚ましていないが、医療でどうにかなる問題ではないことを病院側に伝えると、そう手配された。

 体裁を気にしている様子だったのが結構むかついたが、ミチルがそれを強く望んだため、俺も異論を口にはしなかった。


 そういえば、カトウの受け持っていた一年C組には、今とある人物が臨時講師として入っている。 

「お~、マルクトじゃねぇか~」

 噂をすれば、ちょうどいいタイミングで声をかけてきたな。

「先生、お疲れ様です。どうですか? 久しぶりの授業は?」

 声をかけてきたのは、高等部時代の担任で先程言ったカトウの代わりに一学期の間だけ臨時講師をすることになったジャック先生だった。

「いや~、相変わらずかったり~ぞ~。まぁお前らの時に比べると数十倍気楽だがな~。あの時は王族が二人もいるクラスの担任だったからな~。そんな重役任されるなんて教師になって初めてだったし、結構気を使って大変だったわ~」

 ……相変わらず口が軽い先生だな。こんな人が多い場所でそんなこと言い始めるなんて。

 ……この親子には少しくらい言う場所とタイミングを気にしてもらいたいものだ。

 まぁ、ここで下手に動いたら、変に思われるかもしれないし何も言わない方がいいかもな。

 今更あんなところに戻る気なんてないし、本当は人に言いふらさないで欲しいんだがな。

「まぁ、そんなこと言わずに、後一日なんですから、我慢してくださいよ」

「むしろ残り一日って考えると急にだるくなってくるんだよな~」

「……そんなもんですか? あっやべ、授業まで後一分だ。すいません、俺次授業あるんで行きますね」

 窓から見えた時計台に刻まれた時が、次の授業まで時間がないことを教えてくれた。

 マルクトは急ぎ次の教室に向かうことにした。

「ああ、頑張ってこいよ!!」

 ジャックはマルクトの背中に向かってそう言うと、自分にも授業があることを思いだし、急いで教室に向かった。


         ◆ ◆ ◆


「はぁ~~」

 ジョッキを置き、ため息をついたマルクトは頬杖をつき始めた。

「先生疲れた顔してますね~」

 何故かエリカがマルクトの隣に座って話しかけてきた。その顔はまるで面白いものを見つけたかのようにニヤニヤしている。

「すいませ~ん。チェンジお願いしま~す」

 マルクトが厨房に向かってそう言うと

「ここは、風俗店じゃないのでチェンジはありませ~ん」

 隣に座っている店主がそう言ってきた。


 俺は今、エリスとエリナの働いている『Gemini』に来ている。一緒についてきているのは苦笑いをこちらに向けているユウキと、

「うっひょ~、ここがエリナちゃん達の働いている店か~。意外と綺麗な店ですね」

 そう言ったのは、酒も飲んでないのにハイテンションになっている赤髪の少年だった。


 彼はレンといって、俺が受け持っているクラスの生徒だ。

 アリスが俺の下で魔法を学び始めたのを知って、レンとソラの二人も少し前から参加するようになった。

 始めは、ベルの魔法に唖然となったり、エリスの剣技に驚愕していた。二週間もすぎれば慣れると思って参加させてみたんだが、未だに驚いてばっかりのレンと違って、ソラは意外とすぐについてこれるようになった。

 ただ、思うところはあるのだが……


「それで何かあったのかしら? 彼女に振られたとかだったら大歓迎なのだけれど」

「……そもそも彼女とかいないんでそう言うこと言わないでくださいよ。というか、エリスやエリナばかりに働かせてないで、仕事戻ったらどうですか? 今すごく人多いじゃないですか」

「大丈夫よ~。最大戦力の息子が帰って来てから仕事がちょ~楽なの。いろいろ手伝ってくれるし~、今だって厨房全部一人で任せてるし」

「……わかってるんなら早く来てくれないかな母さん? 一人で捌ける量じゃないんだぞ。さっさとエリスを手伝ってくれ!!」

 エリカさんの後ろには、銀髪の青年が立っていた。

 小麦色の肌で銀色の髪が特徴的な彼は、エリスとエリナの義理の兄でティガウロという。

 先日の戦いにて、共に戦ってくれたユリウスご自慢の弟子らしい。

 彼の表情からは怒りが伺えるのだが、着用しているエプロンが全然似合ってないせいで笑いを堪えるのが大変だった。

「……あれ? エリナは? 麦酒を頼んだ筈なんだけど」

「あいつなら戻って来てないぞ」

 エリカの問いかけにティガウロがそう言った時だった。


「やめてください!! セクハラで訴えますよ!!」

 エリナの悲鳴が奥のテーブル席の方から聞こえてきた。

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