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鉄血神話  作者: ゆっくり猫大佐
4/10

出会い

今回は若干短いかもしれないです

その日は昼まで探索し、出会った魔物を狩って雷撃魔法の使用と調整を繰り返してスキルを自分のものとして馴染ませていった。

だが、そこでこんな考えが生まれた。

このままでいいのか、と。

前世で俺は長い鍛錬と実戦経験の果てに、『最強の傭兵』とまで呼ばれていた。

しかし転生した事で「スキル」を得て新たな強力な身体も手に入れ、自分でも気づかないうちに有頂天になってしまっていたのかもしれない。

『守護者』との戦いを経て、俺は反省していた。これからは調子に乗らず堅実に、実力を付けていこう。


そんな事を考えていると、頭上から今までのどんな気配とも異なる魔力を感知した。

警戒して上を見上げると、俺は驚きで一瞬固まってしまった。

それは、なんと飛行船だった。


「飛行船!?何が文明レベルは中世くらい、だよ……」


『おそらく、極秘裏に開発が進められていたのでしょう。観測用の設備は揃っていますが武装はほぼ無いようです。それよりも警戒すべきは、搭乗している者たちですね。』


飛行船はそのまま頭上を通り過ぎ、少し離れた地点で滞空した。


「あそこは……守護者と戦闘した場所か」


俺は自身の周囲に認識阻害空間を展開し、飛行船の場所まで移動した。







「ここで戦闘があったのは確かみたいだな」


薙ぎ倒された木々や巨大なクレーターを見て、髭面で恰幅のいい男が言った。


「ああ。あれだけの魔力反応を観測したのはここ最近でもあまり無い。ましてやここは常人が踏み込む事など滅多に無い魔境。それに魔力反応を観測した直後から、今までずっと『東の森の守護者』の反応が何処にも見当たらない。何者かと戦闘状態になり、それで倒されたということは充分に予測出来ることだ。この周辺を徹底的に調べあげるぞ」


髭の男に答えたのは、まだ若くも精悍な顔立ちをした高身長の男。


「そうじゃなザムド。ここに降りる前から分かってはいたものの、明らかに周囲の魔素量が過剰。強大なエネルギーの衝突があったのじゃろうの」


ザムドと呼ばれた男は油断なく周りを見渡すと、不審そうな顔つきになった。


「おい、どうやら先客がいたようだぞ」


「む、あそこか。 『魔素流撹乱波動マナクロスフィールド』」





俺は慌てていた。

認識阻害と前世での潜入任務で鍛えた技術で、自分の存在は秘匿出来ている筈だったからだ。

飛行船から降りてきた男三人組の話を盗み聞きしていたところ、ザムドとかいう男が此方に目を向け、隣にいた老人が何か唱えたと思ったら急に周囲の魔素の流れが乱れて術式が解けてしまったのだ。


『「魔素流撹乱波動マナクロスフィールド」を使用されました。魔素の流れを撹乱し、術式や魔法の発動を封じる効果があります。相手は非常に高度な技術を持っているようです。』


パルトニョールの分析を聞き、動揺も少なくなった。ここは下手に敵対しない方が得策な気がするな。


「おい、そこにいるのは分かっているぞ。出て来るがいい」


ザムドの声がした。

俺はゆっくりと木の陰から姿を現した。


「これは驚いた、魔導生命体オートマタか。俺もお目にかかるのは初めてだ。貴様、名はあるのか?何故こんなところにいる?」


「俺はアレックス=オブリソーコフ。何故ここにいるかは、記憶を無くしているため分からない。気づいたらここにいた」


「記憶がない……?まぁ良い。俺はザムド。この森の調査に来ている」


「儂はカルマンじゃ」


「俺はマーカスだ」


三人が順々に名乗った。表立って敵対する意思はないようだが、三人とも警戒は怠っていない。


「調査ってなんの調査だ?」


「ここら辺一帯の魔力値が異常な反応を見せてな。ギルドからそれの調査を依頼されたって事だ」


「なるほど……」


これは十中八九俺が原因だ。

俺が昨日『守護者』との戦いで大技を繰り出した事でここら一帯の魔素量がおかしくなったのだ。これは正直に俺が原因だと言った方が良いだろうか。


「その異常の原因、おそらく俺だと思う」


「ほう、どう言う事か説明してみろ」


俺は、ザムドたちに昨日ここであった出来事を話した。

ここで『東の森の守護者』に襲撃を受けたこと、そして戦闘になり守護者を倒した事。

それを聞いた三人はとても驚いた表情をしていた。


「つまり昨日、お前と『守護者』が昨日ここで戦い、そこでぶつかり合ったエネルギーが原因だと」


「ああ、おそらくそうだ。何か迷惑を掛けてしまったなら謝罪する、すまなかった」


俺はそう言って三人に向かって頭を下げた。


「まあ原因は分かった事だし良いだろう」


「うむ、魔物同士の争いが原因で起こったと報告すれば問題ないじゃろう。じゃが……」


ザムドと名乗った男の隣にいた老人、カルマンが俺を見ながら言った。


「何かあるのか?」


「ああ、これ程の魔力の異常を引き起こした魔物がいると分かれば間違いなく討伐隊が組まれる事になるな。もしそうなった場合お前は命を狙われることになるじゃろう」


マジか。だが分からなくはない。

異常を引き起こした元凶が見つかっているのだ。次何か起こる前に対処するのが普通だろう。さてこれからどうするか……。

その時俺にザムドが問うた。


「なあお前、俺たちと一緒に来ないか?」


その言葉に俺を含めた三人は驚いた。


「流石にそれは無理があるのでは無いのか?」


「第一相手は知能を持ち、意思疎通もできるとはいえ魔物じゃ。どうやって魔物を人のいる町まで連れて行くのだ」


「そんなのは簡単だ。俺がここで戦ってその元凶をぶっ潰した事にすれば良い」


この男は思ってもみなかったことを言い始めた。

パルトニョールからこの世界の一般常識などを聞いたことがあり、その時に魔物は基本人間と敵対関係にあると聞いた。

この男は、その敵対関係にある魔物を自分たちの街に連れて行こうと言うのだ。これはあまりにも無茶なことだと思えた。

その時、ザムドがこんなことを言ってきた。


「だがなぁ、そうするにはまた魔力値の急上昇を引き起こしてそれを観測させておく必要がある。何故だか分かるか?」


「守護者を滅ぼした俺を倒すにはそれ程のエネルギーが必要で、その状態を再び起こしてザムドたちが無事に帰還すれば俺を倒したことの証明とすることができる、ってことだな?」


「そうだ、分かっているようだな。それが何を示すかも、分かるな?」


「戦闘だろ?」


「ああ、今から俺と戦ってもらう。手加減はするな。カルマン、マーカス、手出しは無用だ」


そう言ってザムドは地面に落ちていた枝を拾い上げ、宙に放った。

それが地面に着いた瞬間、戦闘開始の合図となる。

両者の集中力が極限まで高まり………

接地した。


魔素粒子全開放リミットブレイク!」


煉獄刃召喚ソードアドベント!」


闘いの火蓋は切って落とされた。

ザムドの手に出現したのは、黒い長剣だ。その刀身は彼の身の丈程もあるが、片手で軽々と振りかぶって斬りかかってきた。

俺はそれを避けつつ肘打ちを放ったがザムドは高くジャンプしてそれを避け、回転蹴りが俺の側頭部を直撃した。

横ざまに吹っ飛んだ俺にザムドの剣が襲ったが後ろに下がって辛うじて避け、地面を蹴って踏み出し反撃に出た。


超帯電フルチャージ


新たに習得した雷撃魔法を使用した。雷を纏った拳をザムドの腹部に打ち込むと、ザムドは五メートルほど吹っ飛んび、その勢いを利用して素早く立ち上がった。

この男、かなりの強者だ。今の戦闘で、出し惜しみすれば痛手を負う事になる可能性が充分にあると分かっていたため、最大火力で一気に片をつける事に決めた。


「『超加速アクセル』!魔素活性強化状態発動!」


俺の全身を赤黒く禍々しい粒子が包み込み、エネルギーが溢れて出す。


双魔銃召喚コールデュアルガンズ!」


強化された魔力弾をザムドに撃ち込む。ザムドはそれを避けたが、先程までの余裕じみた表情が消えた。

次の一手で終わらせる。


「魔素粒子励起収束双滅波ツインデストロイ・キャノン!!」


灼炎覇轟斬フレイムカタストロフィー!」


俺の銃からは巨大なエネルギー弾が、ザムドの炎を纏った剣からは超高熱の衝撃波がそれぞれ放たれた。

二つのエネルギーは丁度二人の間で衝突し、次の瞬間に魔力嵐が周囲を荒れ狂った。

それを全力で結界を構築して防ぎ、魔力嵐が収まったのを確認して俺は地面に膝をついた。

対するザムドも、まともに立ってはいられないようだった。


「な、何という凄まじいエネルギーのぶつかり合いじゃ……」


「あれを直接食らって無事でいられる気がしねぇぜ……」


カルマンとマーカスも結界を張って無事だったようだ。


「引き分け……か。予定通り、だな……」


ザムドが言った。


「そうだな、これで街へ行けるんだな……?」


「あぁ、お前みたいな危険な奴を野放しにしておく訳にはいかないし、な」


「感謝する」


俺とザムドは互いに小さく笑った。

全力で戦いあったことでザムドには、本人も気づかないうちに友情に近い感情が芽生えていた。

あまり人と関わってこなかったザムドにとって、アレックス=オブリソーコフとの出逢いは種族の壁を超えた運命的なものとなるのだった。



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