『守護者』討伐
翌朝目が覚めると、特に体に変化がある訳ではなかった。
ちょっとがっかりしてステータス画面を開いてみると、こんな感じに変わっていた。
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名前 アレックス=オブリソーコフ
種族 魔導幻戮生命体
L v.10 魔素獲得量 0/3000
魔術適正=2000
スキル
〈一般〉
幻惑魔法 短刀術
〈種族固有〉
剛腕 立体起動 魔素粒子全開放
〈固有〉
双魔銃召喚
相棒
強奪
〈異能〉
超加速
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種族は、魔導幻戮生命体というものに進化したようだ。
それに加えて新たに魔素粒子全開放が追加されている。
『どうやら使用者の持つ魔素を開放する事でパワー、耐久ともに超強化するもののようです。しかし魔素を一気に放出するために短時間しか使用できず、魔素が尽きると回復まで行動不能になってしまいます。』
なんか凄そうだけど危なっかしいな……このスキルは奥の手だな。
「まだ試していないスキルもある事だし、今日はそれを使って魔物を倒してみよう」
切り替えは大切。考え込むより行動した方がいいというものだ。
そんな訳で洞窟を出ると、十分ほどで数匹の魔物の気配がした。
その方向に向かっていくと、狼が三匹なにかの肉を喰いちぎって食べていた。
「お食事中のところ悪いが、お前らは俺の幻惑魔法の実験台になってもらう!」
俺は半径三十メートルの空間に認識阻害の術式を展開し、自分の存在を感知されにくいようにして狼たちの連携を妨害した。
隠れていた草むらから『立体起動』を利用して跳び上がり、着地と同時に一体に『剛腕』を載せた拳を頭部に叩きつけ瞬殺した。
認識阻害で反応が遅れた後の二体が襲いかかってくるのを幻影の分身を生み出して囮にし、狼たちが一時的に混乱した隙を突いて『超加速』を一瞬発動して高速で背後に回り込んだ。
「短刀術」
短刀術で具現化したダガーを一体の胸部に突き立て、そのまま横に斬り裂いた。狼はキャイッと鳴き声を上げ絶命した。
残る一体が噛み付いてきたのをバックステップで回避し、狼の腹部を蹴り上げた。
狼は十メートルほど浮き上がり、落下してきたところを短刀術の補正を使ってダガーを投擲し、頭部に突き刺した。狼はドサッと落ちてピクリとも動かなくなった。
我ながら、スキルを存分に活用した完璧な戦闘だったと思う。
《経験値を獲得しました。アレックス=オブリソーコフのLvが11に上がりました。魔素獲得量が300になりました》
「魔素量も多い魔物だったな、スキルも頂いていくか」
『マーダーウルフの所持スキルは「気配感知」、「思念疎通」、「威嚇」です。どれにいたしますか?』
俺は既に気配は感知出来るし、威嚇も必要にはならないだろう。そうすると、これだ。
「『思念疎通』にしよう」
《スキル〈一般〉、『思念疎通』を獲得しました》
「よし、いいもん手に入った、このまま狩りまくるか」
そして俺は再び歩を進めた。
暫く歩くと、木々がまばらになって少し開けた場所に出た。
ここはなんだか今まで通ってきた森とは違う雰囲気が漂っているな……
そのまま何歩か踏み出した時、強大なエネルギーを持つ何かが急接近しているのを感じた。
まずい!と思った瞬間、目の前に轟音とともに巨大な生物が降り立った。
俺は風圧で数メートル飛ばされ、地面に打ち付けられた。
「なんだ……こいつは」
それは、顔はライオン、身体は巨大なドラゴン、尻尾は大蛇の異形の魔物だった。
これまで対峙してきた魔物とは比にならない、その圧倒的存在感。
「我の領域を侵す不届き者は貴様か。それについ昨日、我が眷属のバーサクサーペントが謎の生命体に葬られたという報が届いたのだ。察するに、貴様が我が眷属を屠った者だな。付近の魔物が根こそぎ殺戮されたということも知っているぞ。これ以上は『東の森の守護者』である我が許さん」
「やはり戦いは避けられないみたいだな……」
『…………解析が完了しました。この魔物はこの森でも最上位に位置する『守護者』です。魔素保有量の多さを利用した殲滅魔法、雷系魔法を中心とした戦法を好むようです。かなり危険な相手です、私も全力でサポートします!』
頼りになるな。
俺は相棒を信じ、戦闘形態へ移行した。
「準備は出来たのか?」
「あぁ、行くぞッ!! 『双魔銃召喚』!」
「臨界開放!」
守護者から放出された超高電圧の電磁波で俺が放った銃弾は全て蒸発し、余波が俺の全身を襲った。動きを封じられた一瞬を突いて守護者は空高く飛び上がり、ある程度の高さまで上昇すると帯電して一直線に降りて来た。俺はそれを二丁の銃で迎撃する。
守護者は地面には降りず、巨大な翼を羽ばたいて再び舞い上がった。
何発も銃弾を放つが硬い皮膚と鱗に阻まれ、貫くことは出来なかった。
次の瞬間、守護者は圧巻の加速力で地面に放電とともにダイビングした。
俺は間一髪で避けたが、尻尾の蛇の追撃をかわしきれず吹っ飛び、俺は木に叩き付けられた。
地面には巨大なクレーターができていた。
「なんて奴だ……!」
「どうした?その程度か? 『迸る天雷』!!」
守護者はそう叫び、口から収束された青く輝く雷を放ってきた。
「くっ!!」
立体起動を駆使して回避を試みるが、被弾してまたもダメージを受けてしまった。
全身を電流が駆け巡り、意識が飛びかける。
一体、どうすればいいんだ……!
その時パルトニョールが呼びかけてきた。
『マスター!超加速と新しく獲得した魔素粒子全開放を同時使用して下さい!調整は私がします!』
「分かった、頼むぞ! 『超加速』、『魔素粒子全開放』!」
俺は相棒に言われるがままに二つのスキルを発動した。
俺の身体を赤黒い粒子が包んだ。いつもより身体がとても軽く感じ、力の奔流が溢れ出す。
「こっちの番だ!」
俺は守護者との距離を地面の一蹴りで一気に詰めた。異能を使った時も十分すぎるほど素早く動くことができたが、今はその比ではない程に速く動くことが出来た。
そのままの勢いで守護者の懐に潜り込み、至近距離で弾丸を放った。
先ほどまでは弾は弾かれていたが、今はしっかりと鱗を貫いていた。身体強化に伴って弾丸も強化されたようだ。そのまま連射してダメージを蓄積させる。
守護者は苦しそうに呻き声を上げた。
俺は間を開けず、飛び上がり頭部に向かって蹴りを放った。すると守護者はよろめき態勢を崩した。
この戦闘の間に、パルトニョールの思考補助によって俺の脳内では新たな術式が出来上がっていた。
先程の「迸る天雷」を受けて解析し、パルトニョールが最適化して出来た技。
これで決められなければ俺の魔素が尽きる。
「パルトニョール支えてくれ! 『魔素粒子励起収束双滅波』!!」
全身に溢れていた魔素が手に握る二丁の銃に収束されて凝縮し、破壊的なエネルギーの塊となって守護者に放たれた。
体勢を崩していた守護者は対処が遅れ、エネルギー弾は胸部に着弾すると同時に炸裂した。
凄まじい熱量を受け、守護者は塵も残さず消し飛んだ。
それと同時に、魔素の大量消費と反動で形態変化と双魔銃召喚も維持できず解除され、俺は意識を手放した。
目がさめると既に日は落ちていた。
起き上がろうとしたが身体中が重く、びくともしなかった。
夜は魔物の動きが活発になり夜行性の強力な魔物も行動を始める。
そんなことを考えていると相棒が、守護者を倒したことで俺に手を出してくる魔物はこの森にはもういないだろうという事を説明してくれた。
俺はそれを聞いて安心して休んだ。それにしても、進化してこの体たらくではもし進化前に戦っていたら絶対に負けていた。
これからも今回の様な強力な魔物と戦うことになるかもしれないと考えるとレベルアップや進化は積極的に行なっていきたい。
『マスター、守護者からスキルを取得いたしますか?』
「ああ、どんなスキルがある?」
『スキルは、雷撃魔法、高速移動、闘気鎧化です。』
雷撃魔法は雷を扱うことが出来る事は大体想像がつく。高速移動は異能の超加速があるため必要ない。
「闘気鎧化ってのはどんなスキルだ?」
『闘気鎧化は、攻撃を受けた際に使用者のレベルに応じて防御障壁を展開するものです。このスキルは戦闘時、自動的に発動します。』
おぉ、これは良さそうだ。この身体は高い防御力を有しているとはいえ、底力を上げておくのは大切だ。
「使えそうだ、雷撃魔法と闘気鎧化を取得してくれ」
《スキル〈特殊〉、『雷撃魔法』『闘気鎧化』を獲得しました》
俺は明日からの行動を考えながら眠りについた。
そして翌日。昨日の戦闘の疲労は綺麗さっぱり消えていた。
朝起きて昨日の守護者との戦いでレベルが上がっていないか確認した。
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名前 アレックス=オブリソーコフ
種族 魔導幻戮生命体
L v.25 魔素獲得量 2300/3000
魔術適正=2000
スキル
〈一般〉
幻惑魔法 短刀術 思念疎通
〈種族固有〉
剛腕 立体起動 魔素粒子全開放
〈特殊〉
雷撃魔法 闘気鎧化
〈固有〉
双魔銃召喚
相棒
強奪
〈異能〉
超加速
*魔素粒子全開放と合わせて使う事で『魔素活性強化状態』へ移行。
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するとレベルは25まで上がり、魔素獲得量は2300まで上がっていた。
やはり強い魔物ほど多くの魔素を保有している様だ。
それにしても、『魔素活性強化状態』か。強力だったが、荒れ狂う力の制御が大変だった。今回の戦闘のように魔素切れで気絶する事も考慮して、一気に攻撃を仕掛けたい時などに使うことにしよう。
俺は昨日手に入れたスキルを試すために狩りに出かけることにした。




