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声をかけてきた方を見ると、赤髪の男子が料理の載ったプレートを持って立っていた。
「いいよ~。空けてても無駄だしね。いいよねアリス?」
「え?うん。だいじょうぶ」
「それじゃあ、失礼」
座ってきた彼は紅牙 刀利といい、《虹乙》の攻略対象の一人。
《虹乙》の攻略対象は全員虹の七色、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫のそれぞれの色がある。
攻略対象には双子もいるので合計は八人。
紅牙くんは、《赤》の攻略対象で赤髪赤色の目で運動神経抜群、ちなみに外国人ではない。
じゃあ何で赤髪かと聞かれると、ゲームだからとしか答えれない。
確か、バスケ部に所属している私たちと同じ一年生。
今の状況は私がいなければ、ゲームの紅牙くんとの顔合わせイベントと一緒。
何で、私がいるんだろう?
「俺は1―B、紅牙 刀利。確か1―Aの生野と……」
「同じ1―A、黒谷、です」
「ああ、そうだった。すまない、あまり見かけたことがなかったから」
元々ここにいないはずだったし。
まあ、紅牙くんの時に居合わせたからといって、他の攻略対象のときもそうなるとは限らないけど。
《青》の双子くんは一つ年下でまだ中等部、私が中等部だったときから仲がよかったからそのときは居合わせてもおかしくはないけどね。
「ごちそうさま」
「え?アリスもう行くの?」
「うん。次の授業、移動だから」
「ん~、わかった。先に行ってて」
食堂をあとにする私に大きく手を振ってくる鈴華に小さく手を振って、教室に向かう。
まったく、高校生にもなって子供っぽいままなんだから。
さっきの手を振り合ったことを思い出して、ついつい笑みがこぼれる。
そのせいであまり前を見てなかったのが悪かった。
教室へ向かう途中の曲がり角を曲がって、誰かとぶつかって、飛ばされた。
「っ!」
「す、すまない。だいじょうぶか?」
見上げてみると、濃い藍色の髪をした眼鏡をかけた蒼い目の男性が心配そうな顔で手をさしのべている。
彼は私たち1―Aの担任の八坂 蒼。
《藍》の攻略対象で、実はファンクラブもできている。
八坂先生は知らないけど。
閑話休題
伸ばされた手をつかもうと、体を動かそうとした。
けど……
「痛っ!?」
「足、擦りむいたのか」
転んだ拍子に膝を擦りむいていた。
痛みを我慢して起き上がろうとしていたら、背中と膝裏に手を入れられ、持ち上げられた。
世間一般で言われる、お姫様だっこ。
目の前にすごく整った顔があるけど、そんなこと関係ないくらい恥ずかしい。
頬が赤くなっているのに気付き、ついうつ向いてしまう。
「とりあえず、保健室に行くぞ」