プロローグ
僕は夢でも見ているのだろうか。
眼前に迫る猛烈な熱を伴った巨大な炎を見ながら、どこか現実味の欠けたその景色にだらしなく口を開けてぽかんとした顔を晒した僕は、呑気にそんなことを思った。
いつも通りに退屈な学校を終え、曇り空の帰り道を自転車を飛ばして家に着くと、リビングで母さんの書置きを見つけて軒先に干された洗濯物を部屋の中に仕舞った。そのあと自分の部屋に入り、制服を脱いで代わりに部屋着を出そうとクローゼットを開けたら、何かに引っ張られるような感覚を覚えて、気が付けばそいつが目の前に居たのだ。
真っ赤な巨体のそいつは獰猛な顔で僕を見ると、口を大きく開いて空気を吸い込み、今まさに迫りつつある業火を僕に放ってきた。
ここはとか、なにがという疑問すら湧かない程に思考の止まった状態の僕は、ただただそれを見ているしかなくて、唯一思い浮かんだ夢ではないかという思いでさえ、ひしひしと肌に伝わる炎の熱によって全てが現実なのだと否定されてしまう。
異様に時間の流れを長く感じながら、ようやく避けようとか、逃げないとと考え始めた時には既に手遅れで、全てを焼き尽してしまうような炎に僕は包まれ、いつまでも続くと思っていた僕の日常は唐突に終わりを迎えたのだった。
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