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異世界召喚と歌姫の小夜曲  作者: めもたー
4章 異世界滞在 4日目
56/61

53話 時空の亀裂

更新遅くなりました。

今月は色々とやることが沢山ありまして、中々執筆の時間が取れませんでしたm(_ _)m

 古の都市(ニブルヘイム)へ向かう道中、色々な会話が飛び交う列の中ぼくは一人頭をかかえていた。


「あああああああ。慰めるだけのつもりだったのにものすごく臭いセリフ吐いてしまった……。恥ずかしい」


「ま、まあそう落ち込まないで下さい。今回はいつもと違ってヒロくんがいるのですから、絶対大丈夫ですって! 素晴らしい戦略を期待してますよ!」


 ルミナさんは輝かしい程の笑顔で右手の親指を立てた。いや、期待されると逆にプレッシャーかかるんですけど……。


「と……とにかく最善は尽くします……」


「うん! それでこそヒロくんですね!」


 正直ここまで期待されるとは思ってもなかったので、事前にちょっぴり考えてた安い作戦はもう切り捨てて古の都市(ニブルヘイム)に到着した次第本格的に練るとしよう。


「なあヒロ。ちょっといいか?」


「はい?」


 突然ぼくのすぐ後ろにいたルヴィーさんが声をかけてきた。


「フィルマが救護室に運ばれた後、お前も救護室にいただろうから聞くが、そこでサイレンの姿を一度でも見たか?」


「えっと、あの時は確か隣の部屋でフィルマさんの手当てをしてるとアザリヤさんに聞いただけで姿自体は見てませんね。……それがどうかしました?」


「……いや、何でもない。ありがと」


「???」


 これでルヴィーさんからの話は終了した。

 ……何か隠そうとしている? いや、仮にも自分の師匠であるサイレンさんが気になっただけかもしれない。別にそんな深い意味はないだろう。弟子として師匠の行方を知りたいというのはごく普通の事だ。少しモヤが残るが他人のぼくが余計な詮索をするもんじゃない。


「ルヴィーさんとサイレンさん、何かあったんでしょうか……」


 傍で聞いていたルミナさんがそうぼくに耳打ちをしてくる。


「さあ……ぼくにもさっぱりです。でもまあそんなに気にすることじゃないと思いますよ」


「う~ん、確かにそうかもですね……」


 ルミナさんは口を軽くへの字に曲げ、やや困り顔を見せた。多分ぼくと同じでモヤモヤが残っているのだろう。

 今は気にしないとはいえこのつっかえが残るのは地味に不愉快なのでこの一件が終わり次第もう一度聞いてみるとしよう。




 街を出発してからやく数十分が経過した。が、周りは先程と何ら変わらぬ大地の景色が延々と続くばかりで、ずっと歩いているぼく達は体力を奪われていくだけだった。

 幸い太陽は薄い雲に隠れて直射日光はなんとか防げてはいるが、気温は高く蒸し暑い。汗もかき始め、喉もカラカラになってきた。元々体力の少ないぼくにとってはここまで歩いてくるだけで音を上げそうになる。


 やがて頬を流れる汗一滴一滴も惜しくなる程喉の渇きに限界が訪れてきた頃、だるそうにしているぼくを見てルミナさんが言った。


「本当は古の都市(ニブルヘイム)に着いて一段落ついてから説明するつもりでしたが、この暑さは想定してませんでした……。ヒロくん、先程私が渡したポーチを開けて下さい」


「は、はあ」


 言われるがまま腰に着けていたポーチを開けると、見たことのないアイテムが五つほど入っていた。


「銀色の筒が入ってませんか?」


「ええ、あります」


 ぼくはその銀色の筒と思われしき物を手に取った。それはちょうどぼくの手の平に収まるくらいの大きさで、ひんやりと冷たかった。


「それはブルーレインでの非常用アイテムの一つで、『シルバーストーンボトル』と呼ばれるものです。名前の通りシルバーストーンという冷気を遮る鉱石で作られていまして、量は少なめではありますが予め用意してあった冷たい飲み物をいつでも飲める優れものなんですよ」


「おお! それは確かにすごいですね! ……それでは早速」


 ぼくはボトルの蓋を外すと、すぐさまそれを口へ運び、グビグビと一気に水を飲み干した。その瞬間今まで渇ききっていた喉が一瞬にして潤い、身体中に帯びていた熱気が解き放たれたような感覚になった。


 こんなにただの冷水を飲めるのがありがたいと思ったことはこれまでの生涯に一度でもあっただろうか。


「ルミナさん……これ、最高じゃないですか……」


「気に入ってくれたのならなによりです。どうぞ古の都市(ニブルヘイム)の方でも色々と活用して下さい」


 ぼくは感謝の気持ちを込めて頷くと、空っぽのシルバーストーンボトルを元あったポーチへとしまった。


「目的地へ到着!」


 するとそれとほぼ同時のタイミングでアガンテスさんが大声で言った。


古の都市(ニブルヘイム)へ通じる時空の亀裂を捜索するため、土地調査兵は全員私の元へ集合だ! 他の兵士達は体力温存も兼ねてその場で待機! 時空の亀裂を発見し次第即刻乗り込むぞ!!」


『はっ!』


 列にいた土地調査兵全員が口を揃えて返事をし、そそくさと小走りで列の最前列へと向かっていった。

 さて、要するに今はぼくは暇な時間という訳だ。とりあえず今後を見通してこの世界についての知識をまだまだ蓄えておく必要がある。だから今のうちにルミナさんに色々と聞いておこう。


「ルミナさん。急なんですが今後作戦などに活かすために、今色々と質問してもいいですか?」


「どうぞどうぞ、私のお教えできる範囲内であれば何でも!」


「ありがとうございます。まず、今さっきアガンテスさんが言ってた用語についてなんですけど、時空の亀裂って何でしょうか? 名前の通り、異次元との境目とかでしょうか……?」


「大体は当たっています。ですが、異次元というのは少し違いますね。時空の亀裂は言わば一種のテレポーターみたいなものです。なので別世界へ通じているのではなく、同じ世界でも別の場所へ移動するというのが正解です」


 テレポーター……。本当にそうだとすればこれを戦闘とかに利用したらほとんどぼくらの勝ちゲーになりそうな気がするが……。


「あ、あと補足なんですが、時空の亀裂はどこにでもあるという訳ではないですよ。魔法使いから放出されるほんの僅かな魔力フェアリーによってこの世界のランダムな場所に出現します。時空の亀裂は誰かが切り開いたりさえしなければ何事も起きないんですけど、今回は古の都市(ニブルヘイム)側にいた亡霊達が偶然見つけてこじ開けてきてしまったのでしょう」


「なるほど……。理解しました」


 ランダム、となると考え方が変わってくる。どこにでもあるという前提で聞いてしまっていたので今少し練っていた作戦が乱れてしまった。


「あの、それと――――」


「時空の亀裂を発見! ここから受託室に残っていた古の都市(ニブルヘイム)の亡霊の魔力フェアリーと思われる気が微かだが漏れている! 今から切り開くぞ!」


 続いて質問しようとしたがアガンテスさんがそれを遮るように叫んだ。予想よりも発見するのが早くて少し驚いた。


「……ヒロくん、いよいよですね……」


「は、はい。今になって緊張してきました……」


 まだ聞きたい事はあったが古の都市(ニブルヘイム)がどんなところか精察してみないと始まらない。


 ぼくは一度大きく深呼吸をして体をリラックスさせた。そして誰も犠牲者を出さずに任務を遂行させるという強い決心を胸に秘めた。

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