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異世界召喚と歌姫の小夜曲  作者: めもたー
4章 異世界滞在 4日目
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41話 遅刻寸前の奇跡

「なるほど……そんな事が…………なんというか、ごめん。そんな暗い過去を思い出させてしまって……」


「ああ、いいのよ。私が勝手に喋っちゃっただけだし……それに、あの出来事がなければ今の私はいない。でもシェルドが亡くなっちゃったのはホントに悲しいけどね」


 ルミナさんは笑顔でそういった。多分、ぼくを落ち込ませないように無理矢理に笑っているのだろう。ますますルミナさんに辛いをさせてしまった。


「……じゃあ、そろそろ私は失礼するね。今日は付き合ってくれてありがとう。ごめんだけど、お金はここに置いておくからヒロくん払っててくれないかな?」


 そう言って立ち上がると、彼女はぼくに背を向けてお店から出ていった。その時ちらっと見えたその横顔は、とても暗かった。


「ルミナさん、どうしてそうまでしてぼくに話を聞かせてくれたんだよ……」


 ぼくは誰にも聞こえないようそう呟き、ついさっきルミナさんが置いていったお金を握りしめて席を立った。

 そしてすぐ横のカウンターで眠そうにあくびをしている従業員に「ごちそうさまです」と一言言ってお金を突き出した。


「あ、え? ああ! ありがとうございます!」


 従業員の方はいきなりでビックリしたのか声をはね上げて驚いた顔をした。まあ、無理もない。誰だってどんな事でもいきなりだとびっくりするものだ。ぼくは少し申し訳なくなった。


 ぼくは謝罪の気持ちで軽く頭を下げると先ほどと同じようにトイレを使ってルヴィーさんの元へ戻った。


「おい、お前どんだけレディーを待たせれば気が済むんだよ!」


「すみません!! 便座に座ってたら眠くなってしまってつい……」


 ぼくは額を杉の床につけて思いっきり土下座した。……なんというか、さすがはルヴィーさんだ。さっきまでの悲しい雰囲気を一瞬で壊してくる。違う意味で尊敬できる。


「はぁ、まあいいさ。アタシもそろそろ帰ろうと思ってた頃だし。じゃあ、大会は明後日だからよろしく頼むぜ。中央会館入口で十一時集合な!」


 そう言って土下座したままのぼくを置いてスタスタと去っていってしまった。

 相変わらず自己中心的だな。でもそれがルヴィーさんのいい所でもある。これがなければルヴィーさんという人物が成り立たないという気もするし。


 ちらっと横の壁にかけてあった時計を見る。長い針は『50』短い針は12に近い方向を指しており、細長い秒針は細かく時間を刻んでいる。ぼくはそれを見て凍りついた。


「まずいッッッ!! 任務まであと十分しかない!!! 喋りすぎた!!!!!」


 あまりに驚いたためについ声に出てしまった。周りが一斉にシン……となった。その後少し間があって、急に自分の行いに恥ずかしくなり「大変ご迷惑をおかけしましてすみませんでした」と小さな声で発して忍者のように足音も立てずに喫茶店から出た。


 そしてぼくはすぐさまダッシュし、任務場所へと向かった。


「ほんとに、なんでぼくはこうも不幸が続くのかな…………何か憑いてたり……」


 なんて冗談混じりに独り言を呟くと、いきなり建物の陰から茶色っぽい色をした猫が飛び出してきた。


「うわっ! …………さっきの喫茶店の外にいた猫? なんでここに? ……っていうか、時間ないし早く行かないと!」


 ぼくが再び走り出すと、その猫はまるでぼくをストーキングするかのようについてきた。一体なんなんだこの猫は。無視して走り続けていると、どこからともなく聞き覚えのある声がした。


「ご主人! お急ぎならミャーに任せるニャ!」


「え?」


 驚いて足は止めないまま後ろを振り向くと、そこにはミャイドの姿があった。


「え、ミャイド!? どうしてここに? てか、いつ来たんだ!? それに昨夜の闘いで傷があるんじゃ……」


「最初からずっと子猫に化けてご主人を追ってたニャ! 傷の心配ならご心配ニャく! あのサイレンという人に治療させてもらったニャ!」


「あの子猫はミャイドだったのかよ! ……てか、最初? という事はぼくが城から出る時から……?」


「もちろんニャ! 主を守るのが下僕しもべの務め。だからミャーはご主人がルミナさんとルヴィーさん二人を……」


「わー!! その先は言わないでくれ! この事はご内密に!! ぼくの人生が終わるから!!」


「はは……冗談ニャよ」


 まったく、いきなり出てきたと思ったらこの仕打ち……。勘弁してくれよ。


「それはそうとご主人、これを食べるニャ」


 ミャイドはそう言うと懐から小さいグリンピースのような粒を一粒取り出した。


「……これは?」


「ミールド草で作った秘薬ニャ。これを飲むと体中の細胞が活性化して俊敏性が跳躍的に上昇するニャ」


「おお、それはありがたい!」


 ぼくはミャイドから緑の粒を受け取ると、早速口に含んで唾で飲み込んだ。すると、たちまち体全体が暖かくなり、体が軽くなったような気がした。


「その薬は即効性だからすぐに速く走れるようになるニャ! ミャーはそのスピードについていけないからこの辺で失礼するニャ!」


「ああ、ありがとうミャイド!」


 ホントに彼女は救世主だ。昨日の事も含めて、これで助けられるのは二回目だ。今度はぼくからも何かお礼をしなくちゃいけないな……。


 気がつくともう城の前まで来ていた。ここからは以前ルミナさんに教えてもらった道の記憶を辿っていけばいい。これなら余裕で間に合いそうだ!


 ぼくは記憶を頼りに入り組んだ住宅街を駆け回って予定より早く訓練所に着くことが出来た。……一体、この場所ではどんな任務を課せられるのだろうか。

何が自分だけ不幸じゃ。

今までルミナやルヴィーのサービス受けてきたやろが。

調子に乗るな(`o´)


って作者の自分でも思う回でしたww

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