殲滅戦(魏府王国への侵攻 その3)
「マスター。敵が後退していきます」
一角馬騎士の攻撃を任されていた短い銀髪の若干のつり目の紅眼、笹穂状の耳に肌は日に焼けたようにやや濃いハイエルフのお姉さんリペッチオから思念が入る。
後退方向は北西。逃げているのか、誘き寄せているのか、はたまた本隊撤退までの単なる囮か・・・
「氷鳥、岩鳥は高高度から一角馬騎士の後退先。火鳥、岩鳥はその反対側の偵察」
「イヌガミ、ギドラは一角馬騎士の後退先とは反対側に進撃」
それぞれ了と返ってくる。
「リペッチオの判断で最低一人は捕虜を取れ。背後が知りたい」
「お任せですか。了解であります」
人選、間違えたか?リペッチオが悪い顔をしているような気がする。
「ギドラ。お前にも同様の命令を与える。的確に判断せよ」
「御意」
ギドラから了承の念が返ってくる。
「おれたちはこのまま北へ進み、どちらにも援軍が送れるようにする」
「御意」
アルテミスとアルブラドの声がハモる。
「マスター。接敵します」
リペッチオから再度思念が入る。後退していたのに早いな。撤退はフェイクか。
「せい」
リペッチオの和弓から放たれた矢が弧を描いて殿のケンタウロスの右の後ろ足を後ろから射抜く。
続いてスケルトンの死の狙撃手ロビンのロングボウ、銀髪に黄色い瞳。艶のある黒い肌のちびっ娘ダークエルフのヘウロパのロングボウから放たれた矢がケンタウロスの後ろ足を射抜く。
上半身にガッチリ鎧を着込んでいても下半身の馬の足まではなぁ。
一角馬騎士が盾を少し上に掲げながら負傷したケンタウロスを囲う。
矢を抜き傷口に手をかざしている所を見るとヒールの魔法を行使しているようだ。
ケンタウロス2体が短弓で牽制がてら矢を撃ち返すが本当に牽制にしかならない。
そうこうしているうちに2頭のシルバードラゴン、エキドナといった鈍足組も到着する。
がぁ
2頭のシルバードラゴンが突撃を開始する。輝く銀隣が眩しい。
ぴぃぃぃぃ
一角馬騎士の一人がが指笛を鳴らす。
ざさっざさっ
何処にいたのか十人ほどのハイエルフがロングボウを構えた姿勢で姿を現す。
後ろにローブを着たのが二人いるな。ハイエルフを隠蔽していたのはこいつらか。
ひゅんひゅん
ハイエルフから一斉に矢が放たれる。
「お掃除いたします」
ロングの緑髪に大きな緑色の瞳。額や喉といった急所や肩から手の甲にかけては硬そうな緑色の鱗。
背中に大きな蝙蝠の翼のあるゴシックなメイド服を着たドラゴンメイドのエマが持っていた箒をくるりと回して空中を払う。
ばらばらという音と共に矢が叩き落とされる。
特殊能力の吹き飛ばしの応用か。
再びハイエルフから矢が放たれるが結果は変わらない。
「はいやー」
紅瞳の小柄な坊主頭の少女修道僧が奇声を上げながらハイエルフたちの中に飛び込む。
続いてオーガが戦鎚矛を振り上げ、黒瞳、黒髪ロングの暗殺者の少女がグラディウスを構えてそれに続く。
「せい」
数発の少女修道僧の拳がハイエルフの胸に突き入れられ、さらに腰のあたりに回し蹴りを叩き込む。
たまらず倒れるハイエルフの肩に少女修道僧の足が振り下ろされる。
どご
派手な音が響きハイエルフの肩の後ろの地面が陥没する。うはっ震脚。攻撃出来たんだ。
「貴様よくも」
近くにいたハイエルフがショートソードで少女修道僧を切り付ける。
が、少女修道僧は器用にハイエルフのショートソードの刃を摘まむ。
ガシッ
少女修道僧のつま先がハイエルフのショートソードを握っている手の小指を蹴りあげる。
ぱきっ
硬いモノがへし折れる乾いた音が響きハイエルフはショートソードから手を放す。
少女修道僧は摘まんでいたショートソードをフルスイングで振り抜く。
ショートソードの柄がバキッと鈍い音を立ててハイエルフの顔にヒットする。
ふん
少女修道僧は一瞬で間合いを詰め身体を沈め両足を踏みしめ両手を大きく開くようにしてハイエルフの腹に掌底を放つ。(打開)
崩れるハイエルフの脇を抜け、その背中に至近距離から自らの背中を突き上げるにして打ち込む。(鷂子穿林)
すこし浮き上がったハイエルフの脇腹に両手を突き出すように双掌打を打ち込む。(白虎双掌打)
ああ、この技は一世を風靡した某3D格闘ゲームの必殺技、崩撃雲身双虎掌 。
というか最後の白虎双掌打はハイエルフの肝臓を撃ち抜いてないか。
がはっ
ハイエルフが大量の血を吐いて吹っ飛んだ。
「ぐおぉ」
オーガが戦鎚矛を振り下ろす。
どごん
地面が大きく陥没し土砂が派手に巻き上がる。
動作が遅いので巻き込まれるハイエルフはいなかった・・・が・・・
ドサドサと土砂を避けた4人のハイエルフが糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
「おーちん一応止めよろしく」
ひらひらと手を振りながら暗殺者の少女は懐から布を取り出し、血に濡れたグラディウスを拭う。
倒れたハイエルフの喉元はパックリと割けている。
「ワカッタ」
オーガは特に考えることなく倒れたハイエルフの頭に戦鎚矛を落す。
ごしゃ
という嫌な音が響きハイエルフは動かなくなった。
<<オーガのレベルが上がり進化の条件を満たしました鬼に進化しますか?>>
Yと・・・
オーガの身体が闇に包まれ、その闇からにゅっと毛むくじゃらの赤黒い腕が伸びてきて同時に毛むくじゃらの足が生えてくる。
ぎょろりとした目玉。下あごから生えた野太い牙。鳥の巣のようなチリチリのアフロヘア。頭の上にある1本角。
トゲトゲの金棒を手に持つ虎の毛皮のパンツ一丁の身長2メートルの筋肉ダルマ・・・赤鬼だこれ。
☆☆☆
新規モンスター
鬼
種族 オーガ
分類 亜人間
性別 男・女
性格 イビル-カオス
STR:24 INT:9 DEX:12 VIT:30 AGI:8 LUK :8
体力52/52 魔力18/18
能力:自然治癒(体力が1桁になったら以降、1ターンごとに体力が少しずつ回復する。)
魔法:なし
特殊能力:魔撃(広範囲に1-8回の肌の色に応じた属性の攻撃を行う)
装備:巨大金棒・虎のパンツ
備考:体長は2メートル弱。大きな瞳。頭には1~2本の角を持つ。
鍛えられた筋肉をもち下の口からは鋭く太い犬歯が伸びている。
白、黒、赤、黄、青の体色を持ちそれぞれ氷、精神、火、土、水の属性攻撃
オーガをレベル60まで育てることで進化することが確認できた。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
ありがとうございました。




