ア・バオア・クゥー前の戦い 終戦
時間の経つのが早すぎる
<<いまから鍛冶神、蚩尤の使徒である朱葛琴子瑜を討った報酬が与えられます>>
天からの声と同時に目の前にリストが表示される。どういう仕組みだというツッコミはしない。いまさらだ。
そして朱葛琴がモンスターを召喚してこなかった理由が理解できた。
リストにあるのは有名な名を冠する武器や防具を筆頭に果ては鉄の鍬といった生活用品の数々。
そして簒奪できるスキルが武器製造や防具製造といったアイテム製造系のもばかリだった。
「んーこれでどうやってこの世界で覇を唱えることができるんだ?」
女神リーブラの言葉を思い出して頭を捻る。
しかも朱葛琴子瑜が平和な魏府王国で務めていたのは御史台の長官だ。
ん?時間的におかしくないか?
「それはですね・・・」
背後から声をかけてきたのは女神リブーラ様。
ゆっくりと背後を振り返るとそこには女神リブーラ様とやたらきんきらきんに光っている爺さんがいた。
長い髭と太い眉毛で大半が隠れた顔。情報部トップのハンゾウに似てはいるが・・・どちらさま?
「おお、儂はキングドラゴンです。マスター」
心を読んだのか、きんきらきんに光っている爺さんは小さく頭を下げる。
なるほど・・・人化できるのか。
「再びこの地に受肉できた恩を我が忠誠をもって報いたく、名を持って我が魂に枷を」
「考えておく・・・リーブラ様お尋ねします。鍛冶神、蚩尤というのはライバルの一神ですよね?」
こくこくと頷く。
「一年間この世界から隔離ってなに?」
「使徒が倒されても一定期間のあいだに世界が統一されてないと新しい使徒を得て復帰できるのがルールなんです」
「それは推測できましたが、1年は長すぎるように見えます」
そう最初に彼女は召喚されたら最低でも30日は帰れないと言った。逆にいうと30日で次の候補が召喚できるということに他ならない。
「ええっと・・・それは私が失敗続きで得た特典で、本来は一年間この世界から締め出されます」
リブーラ様はてへペロと舌を出す。
なんだこの残念女神。いまさらだが・・・
そして朱葛琴子瑜が魏府王国の文官だった理由も判明する。
鍛冶神の蚩尤が智の力で覇を唱える事に拘り朱葛琴の中の人-召喚でも転生でもなく精神憑依らしい-もそれに応えたのだ。
農耕に便利な道具を発明して食料水準を向上させ、武器の質を上げ防具の数を揃えて戦いは数で押し切る。
そう考えると御史台の長官は次のステップに必要だったんだろうな・・・たぶん。
「三人・・・じゃない三神目を教えて貰うわけにはいきませんか?」
しかしリーブラ様は首を横に振る。
「爺の弟子のか?ちょっと待っとれ」
ちょっと待っとれ?なにを言っているんだこの爺さんは。
「うむ・・・懐かしい気を捕らえたぞ。月神アリグナクだな・・・むう気配を絶たれた」
なんか某バトル漫画みたいなこと言い出している。
「どうやら気配を絶たれたようです。しかし尻尾は掴みましたぞ。ここより北西の地に奴の眷属がおります」
北西ということはマッサチンか・・・
「お館さま。ご報告したいことが」
どこからともなくハンゾウが姿を現す。
ハンゾウはチラリとキングドラゴンを見ると僅かに口角を上げる。明らかに挑発の微笑み。
「きさ」
「カンゾウからか?」
「はっ・・・」
何か言いたげだったキングドラゴンを制しハンゾウからの報告を聴く。内容はふたつ。
まず劉美軍と孫呉軍が虎亭平原にて激突。孫呉伯夫は一時間に及ぶ一騎打ちの末に関翅によって討たれたという。
その後、張緋率いる部隊により賢業城が強襲されて半日で陥落。孫国は滅亡し領土は劉美の支配下となった。
つぎに新魏府国は援軍として政都に招いた猿術軍によって政都城が包囲され風前の灯火なのだという。
踏んだり蹴ったりというか、おれを倒すのにドサクサで国を盗った猿術みたいのと同盟組んだり国に招き入れるとか自業自得だろ。
「リーブラ様ところでご用件はなんでしょう」
いい加減放置するのもあれなので話を振る。
「あ、いえ、おめでとうございます。まさか蚩尤の使徒を倒せるとは思いませんでした。ありがとうございます」
リーブラ様の視線が完全に泳いでいる。
「これからも頑張ってください。でわ」
ポンという音とともにリーブラ様の姿が消える。本当に激励にきただけのようだ。
さて、報酬の吟味を再開するか・・・
・・・・
・・・
・・
・
役に立ちそうなのは・・・
武器創造、防具創造:レベルに応じた武器防具を創造する。
ただレベル上げが大変そうだ。
複製:道具を複製する。ただし数を重ねるごとに劣化する。
これでうちのドラゴンに大ダメージを与えた槍やらブレスを防いだ盾を短期間に量産したのだろう。ただ、劣化するのか。
クリエイトゴーレム:簡単な命令に沿って自律行動をする人形を作り出す。レベルと材料で製作できるゴーレムは変わる。
これは魏府の王都で遭遇した奴だな。あれを複数しなかった理由は何だろう。複製で劣化するのが問題なのか?
遺伝子組み換え:植物の遺伝子を書き換える。
動物ならなお良かったのだが。
さてどうする・・・ってクリエイトゴーレムだな。悪韋の特殊能力と相性が良さそうだ。
クリエイトゴーレムを選択し報酬を受け取る。
「マスター。儂の名は?」
「そうだな・・・ギドラを名乗れ。それと知ってることを聞かせてくれ」
「御意」
キングドラゴンことギドラは深く頭を下げた。
ありがとうございます




