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閑話休題 はろうぃんうおーず 前編

季節の変わり目か喉をやられました

「お館様。ワ国からの荷物が」

ウッドエルフで侍大将。そして我が軍団の総大将である菜緒虎が神妙な顔つきで竹ひごで編んだ箱をおれの前に置く。

「来たか・・・開けてくれ」

促されて菜緒虎は箱を開ける。

右には子供の頭ほどの深緑の植物の実と種が入っていた。

「なんでしょう」

スケルトンの魔法系の特殊上位種リッチで我が軍の軍師であるアルテミスが植物の実を手に取る。

「これはワ国の北で採れる『まさかり』という(うり)でな。実を割るのにグレードアックが必要だという食べ物だ」

おれは箱の中の『まさかり』を骨だけの手の甲で叩くとカンカンと甲高い音が響く。

「食べ物・・・ですか?」

アルテミスが首をかしげる。おれの配下にあれば生命活動を維持するために食べる必要はないから当然の疑問だ。

「酒のツマミですか?」

菜緒虎の目が光る。

生命活動を維持するための食事は必要ないが嗜好としての飲食は必要だと陳情があったので認めている。

菜緒虎はそういう陳情を引き受け窓口だったな。

「実はオカズだな。種はごま油で炒って塩をふれば薬効・・・泌尿器系障害や骨粗しょう症の予防やアンチエイジング対策に優れたツマミだ」

って、かぼちゃのタネの薬効とか力説して何の意味があるんだろうな・・・

「で、何をするのですか」

「今度七夕※をするだろ?」  ※[第53部分閑話休題その5七夕の夏越大祓(なごしのおおはらえ)]

そう。ワ国と非公式ながら国交を結んだことを記念して近くワ国の西を統治する征戎大将軍(せいじゅうだいしょうぐん)である岳田勝頼殿とその家臣をこの白露城に招くことになっている。

その際に支配下地域にいる敬虔な女神リーブラ信者や城下町建設に携わる人間も招待する予定だ。

「そのつぎの祭りは秋の収穫祭を予定している。『まさかり』はそのときの飾りに使う」

アルテミスと菜緒虎の頭の上を大量の?が舞っているのが見える。

「チョットした気まぐれだ。あまり手もかからない。そうだな、ブドウと小麦以外に植えたい物があれば申請させろ。自己責任で認める」

アルテミスと菜緒虎はお互いに顔を見合わせると小さく頷く。

それからしばらくして農地にはいくつかの簡単な作物がエルフ達を中心に植えられたのであった。



「実りましたね」

菜緒虎が目を細める。

目の前にはゴロゴロと転がる『まさかり』があった。もっとも目の前にあるのは手に入れたものよりは遥かに大きく人の頭より一回り以上はあった。その数はざっと15個。

かぼちゃ以外の作物は残念ながら収穫と呼べるほどの実りはなく中には枯れてしまったものも多かっただけに嬉しさもひとしおである。

しかし今でも残念に思うのはスイカだ。30個ほどが収穫直前だったのだが、謎の大爆発により爆散してしまった。

バジリスクや(ロック)鳥が嬉しそうに食べていたのが救いではある。

この辺はマスタークラスの農家をスカウトするしかない。ハンゾウに調べさせるか・・・

藍那(あいな)

名前を呼ぶと濃いこげ茶の髪に尻尾。首から背中にかけての白い体毛に右がルビーレッド左がサファイアブルーの虹彩異色眼(オッドアイ)のワーキャットの女の子が前に出てくる。

彼女は鉱山都市ソロモンの客・・・という名の3人の人質の一人だ。もっとも最近は我が軍の貿易部門で日用雑貨の担当として活躍している。

「かぼちゃランタン1個につき銅貨7枚。ノルマの10個で銅貨70枚にボーナスをつけて銀貨1枚。以降はかぼちゃランタンなら銅貨7枚。細工を凝るなら値段は自由だ」

それを聞いた藍那の目が光る。

ちなみに銀貨1枚は日本の1万円ぐらいになる。銀貨10枚で金貨1枚。金貨1000枚で白金貨1枚。

おれが鍛冶師ドアホーに依頼したジャイアントの悪韋が装備するザ〇を模した鎧が金貨20枚から25枚。

夜にパン、肉500グラム、サラダにエールをジョッキ2杯が付く食事で銅貨20枚という相場である。(銅貨100枚=銀貨1枚=1万円)

「期限は十月三十日。細工のためのナイフはノリスに言え。かぼちゃランタンのデザインはこれだ。また作業は一人で抱えるもよし誰かを雇うもよし。任せる」

ゴソゴソと懐からかぼちゃランタンを描いた羊皮紙を渡す。

暦と時間の表記は現代日本風に改めている。

「承りました」

藍那(あいな)はユラユラと尻尾を揺らしながら受け取った。



「かぼちゃランタン・・・ね」

自宅兼仕事場に戻った藍那(あいな)は(最近城下に訪れた建築ラッシュの恩恵で小さいながら二階建ての店を与えられていた)羊皮紙を壁にピン止めする。

羊皮紙には人の顔のように目と鼻と口を刻んだかぼちゃが描かれている。

「問題は」

藍那(あいな)は爪で『まさかり』を引っかく。キキと背中をぞわぞわさせる音が響く。

とてもではないが植物が奏でる音ではない。

「おーい藍那(あいな)。ナイフを持ってきたぞ」

家の外から声がするので窓から顔を出す。

そこにはパイナップルヘッドの黒髪に灰色眼。ドワーフにしては長身の160センチの青年と栗色の髪に茶色い目。身長は170をちょっと超えたぐらいの少年がいた。

「シロウにノリスよー来たよ。鍵は開いてるからどうぞ」

ふたりは顔を合わせてから『御用の方はお声かけを』という看板の掛かった引き戸を開けて入る。

「大分揃ってきたな」

栗色の髪の少年シロウは陳列台に置かれた生活雑貨を眺めながらつぶやく。

店内の半分は生活雑貨で半分は武器だ。

ちなみに陳列されているハサミやカミソリ。カンナの刃やノミに包丁。最近は投擲用のダガーといった小物の刃物にはノリスが製作したものがある。

ノリスは鍛冶師ドアホーの弟子でもあった。

「そうそうノリス。ソロモンからイヌガミさんモデルのスコップの依頼が来ているんだけどどうする?」

イヌガミさんモデルのスコップとは第三軍の軍団長であるワーウルフのイヌガミの愛用するスコップでノリスが初めて他人に売った鋳物である。

「判った。師匠とイヌガミさんには話を通しておく」

「よろしく」

ノリスの返事に藍那は満足そうに頷くと近くにあった大福帳になにやら書き込むと『まさかり』をテーブルの上に置く。

「マスターの依頼はかぼちゃランタン1個で銅貨7枚。10個で銀貨1枚。残る5個は好きに彫れて値段も自由」

ノリスとシロウの目付きが変わる。小遣いはいくらあっても嬉しいお年頃である。

「とりあえずわたしがひとつ作るから」

藍那はノリスから特注品のナイフを受け取ると『『まさかり』の底にナイフを差し込む。

「わお・・・簡単に刃が通るよ」

藍那は『まさかり』底に開けた穴から中身をスプーンでほじくり出すと、次に『まさかり』側面を目と鼻、口の形にくり抜く。

『まさかり』の頭部にフックをねじ込む。

切り取った底にロウソクを仕込んでから火を付けて封じる。

おおっとノリスとシロウの感嘆した声が上がる。

「これに3~4日の乾燥作業を入れて完成かな」

「なんだ楽勝じゃないか」

藍那の言葉にシロウは笑う。

「さっさと作ろうか」

ノリスの提案に藍那もシロウも頷いた。



藍那がかぼちゃランタンを完成させたその時、畑の隅にあった畑の為に作られた堆肥の壺に緑と黒の縞模様の物体が浮かび上がった。

「わたしは悔しい・・・」

緑と黒の縞模様の物体にふたつの赤く光るものが灯った。

「悔しい・・・たべ・・・欲しかっ・・・」

複数の声が辺りに響き渡った。

ありがとうございました

さて貨幣単位が間違ってなければいいけど・・・

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