洛葉侵攻 その1
中国っぽい名前オンパレードだったギープ王国の名前を魏府王国とそれっぽいのに変更します
他の章もおいおい・・・
短時間ではあるが指示していた情報が集まってきた。
蝶瑜紅琴。狐人間。18歳。男。
2年前に魏府王国の官僚選抜試験である科挙を主席で合格。一年の研修の後に御史台に配属。
今年から賢業州の監軍御史として派遣される。
朱葛琴子瑜。人間。50歳。男。
25年前に魏府王国の官僚選抜試験である科挙を第三席で合格。吏部として国中を渡り歩き二年前に御史台の長官に就任。
25年の経歴がありながらあまり顔を覚えられていないという特異があり『無貌の子瑜』と呼ばれている。
数枚の羊皮紙に書かれた二人の人物評に一通り目を通し顔を上げる。
そこにはアルテミス・菜緒虎・クワトロ・イヌガミ・ハリベッチオ・ヘウロパそしてハンゾウの姿があった。
「集める情報は噂レベルで抑えろと言った気がするのだがな・・・」
ハンゾウだけが報告を上げてきた人物の書かれた羊皮紙を指で叩きながらハンゾウを見る。
「孫呉殿は酒癖がいささか豪快でして・・・」
「初耳だな。まあいい手品師に種明かしを迫るのは野暮か」
あからさまにハンゾウの顔に安堵の色が浮かぶ。が、明らかに他の部下に対する演技であることが見て取れる。
忍者が感情を人前で晒すとかあり得ないだろ。
「マスター。愚考いたしますに、張緋殿に貸した黄昏の指輪のような魔法道具があるのではないでしょうか」
アルテミスの直言にポンと手を打つ。おれも簡易とはいえ召喚魔法の一部を与えることが出来たのだ。あり得ない話ではない。
「疑うなら無貌の子瑜のほうか・・・」
そう召喚されたがゆえに過去がないおれとは違って蝶瑜は生まれも経歴もしっかりしている。が、蝶瑜を寵愛している朱葛琴は無貌といわれるだけあっていろいろと経歴が曖昧だ。
異世界から召喚された人間がこっそり入れ替わっていたとしてもそれが判らないぐらいに・・・
しかし朱葛琴が異世界から召喚された人間ならこの世界で武力でなく上り詰めたとしてもナンバー2にしかならない官僚として動いてるのはなぜだ?
・・・本人に直接問い質せばいい事か。
「このまま許照州を抜け洛葉州を目指しましょう」
クワトロが直言し菜緒虎・イヌガミ・リベッチオが賛成の意を示す。
追撃のチャンスに城に籠って酒盛り。無視しても問題なしは、まぁ順当な提案ではある。
「クワトロの案を採ろう」
「ありがたき幸せ」
クワトロは深々と頭を下げた。
洛葉州。魏府王国の前に存在していたキャン王国が北方から侵入する遊牧民族を撃退するための前線基地として建設されその後発展した王都の北許を擁する北の州。
魏府王国の初代国王壇羽一世は遊牧民族の撃退のためにこの地に赴任したキャン王国の将軍だ。
この地で力を蓄えた壇羽一世は北方の遊牧民族を平定するとキャン王国に対して牙をむき十年の歳月をかけついにキャン王国を滅ぼした。いまから250年前の話である。
「敵ヲ発見シマシタ」
洛葉侵入直後、上空に偵察として展開していた岩鳥からの警告が入る。
岩鳥の視覚に同調する。数百メートル先をオーガを筆頭にハイオーク3ホブゴブリン6ゴブリン12の部隊が移動している。チョットした戦力だが装備はまちまちだな。
召喚陣は・・・あ、あった。
「第二軍、第五軍、第六軍召喚」
第二軍のヘルハウンドを地上部分の斥候として出す。
「潰しますか・・・」
クワトロが口の端を吊り上げて不敵に笑う。
「マスター。敵ハ戦闘態勢ニ入リマシタ」
ヘルハウンドと岩鳥からほぼ同時に思念が入る。
なんだ?こちらが観えているのか?それにしては戦力が低いな。蝶瑜からこちらの軍団情報が上がってないのか?それとも・・・
「相手がこちらを測っていることを想定して事に当たれ」
「はっ」
ジャイアントと悪韋が身近にある木や適度な大きさの石を集め始める。
この辺りは魔法やモンスターの特異で何とかホイホイ出来たりしないかな。
「投擲開始」
指示と同時に悪韋たちが石の投擲を開始する。
まずは必要以上に敵を散開させる。
「うおぉ」
騎士クワトロと猫人間のトラ美が魔法使いの支援を受けながら四人のゴブリンに斬り込む。
ズン
クワトロの細剣がロングソードを持っていたゴブリンの利き腕を薙ぐ。たまらずロングソードを落とすゴブリン。
すかさずトラ美がショートソードをゴブリンの喉に突き入れる。
ゴブリンが断末魔をあげ吹っ飛ぶ。そしてトラ美はすかさず隣りのゴブリンの顔を薙ぐ。
ぎゃう
ゴブリンがたまらず顔を押さえて叫ぶ。
「火の矢よ」
魔法使いの叫び声と同時に火の矢が生まれて顔を押さえてのたうつゴブリンの喉を貫く。
「こ、この野郎」
ホブゴブリンがメイスを振り上げて魔法使いに襲い掛かる。
がぁ
ホブゴブリンの死角からヘルハウンドが飛びかかり喉に喰らいつく。
たん
ヘルハウンドが前足でホブゴブリンの胸を蹴る。
ごぱっ
喉の肉を大きく抉られホブゴブリンは絶命。
「うおぉ」
クワトロが鋭い連続した突きをハイオークに叩き込む。
「はっ。このくらい」
ハイオークは器用にクワトロの細剣をロングソードで受け流す。
「少し」
不意に上空から声が
慌てて間合いを取るクワトロ。
ぴしゃ
空気を割く音と同時に雷の槍がハイオークの胸を貫く。
「きゃははっ」
聞く者を煽るような笑い声。中空には挑発的な半裸の蝙蝠の翼を持つデーモンの少女が羽ばたいていた。
「きさま!」
その場にいた敵の意識の全てがデーモンに集中する。
そしてそれは致命的な隙だった。
「はい」
デーモンの少女がパンと手を打つのと同時にその場にいた敵はことごとく地面に倒れていた。
ありがとうございました
がぁカープ負けたな・・・大ショック




