ギープ侵攻 -部隊編成-
少しづつでもペースが戻せれば・・・
白露城。五重六階、地下一階ある天守台を要する大天守の5階にある大広間。この部屋をこの度、五人の部隊長と諜報部の長であるハンゾウのみ入室が許される作戦会議の間として固定することにした。
板張りの部屋の真ん中には黒檀の円卓。おれ専用の大口を開けたドラゴンの頭蓋骨をモチーフにデザインした不気味に素敵な椅子がデンと置かれており、それ以外には質素な椅子が五つ置かれている。
最もゆくゆくは五人の好みのデザインの椅子が置かれることになっている。イヌガミはワ国の怪しい商人、豊後国文左衛門と色々怪し相談をしているらしい。
そして、おれの椅子の斜め後ろにはギープ王国に広く流通しているマッサチン国とギープ王国、ワ国とおれの支配する地域が描かれた地図が一枚掲げられている。
そのうちおれの後ろに飾る国旗とかも作るか・・・その前に旗のデザインからか?
旗指物とか必要になるかもしれないからな。主に敵を威圧する意味で。
色々と妄想が捗るな。
ごと
不意に床が音を立てる。
いや、おれに存在を告げるためにワザと音を立てたに違いない。この部屋に入れる人間のうち何も告げず入れる人間は一人しかいない。
「ハンゾウか?」
「はっ」
地図のある反対側から声がして、やがて仙人のような杖を持つ背の低い髭と眉毛が顔の大半を覆う老人が姿を現す。
彼が我が軍の諜報部の長である忍者のハッタリ・ハンゾウである。
つかつかとハンゾウが近づいてくる。
「お館様これを」
ハンゾウが懐から二枚の紙を差し出す。そう羊皮紙ではなく紙である。
ざっと目を通す。待っていたものだ。
すぐに五人の部隊長を招集する。
ほどなく作戦会議の間の円卓におれを起点とするなら右から軍師でリッチのアルテミス・騎士のクワトロ・ワーウルフのイヌガミ・ハイエルフのリベッチオ・ウッドエルフで侍大将の菜緒虎。そしておれとなり一周になるようになって席が埋まる。
「ギープ王国の南海州牧劉美とマッサチン国の港湾ジャンの太守であるマーケル・ドン・ジャクスン男爵から積極的サボタージュの確約を得た」
おおっと声が上がる。
「しかし黄昏の指輪の貸与の見返りが・・・」
不満を漏らすクワトロを視線で制する。
「次に公式に我々が鉱山都市ソロモンを所有していることを宣言しギープ王国への鉱物資源の輸出全面禁止を通告する」
「なるほど張緋殿はソロモンに進撃してくるギープ軍に対する遊撃ですね」
リベッチオが指摘すると何か言いたげだったクワトロが納得したような顔になって沈黙する。
そうそう。思念で直接会話のやり取り出来ると言っても直接顔を突き合わせて話す方がいいよね。
「マスターいいか?」
イヌガミが手を挙げる。
「張緋殿が黄昏の指輪を持ったままトンズラしたらどうするんですか?」
「召喚したモンスターの支配権はこちらが上だ。トンズラしても常に警報鳴らしているようなものだ」
おおっと声が上がる。いや感心するようなものじゃない。トンズラ対策せずに貴重なアイテムを渡すわけないだろ。
さすがにアルテミスと菜緒虎からは声が上がってないが。
「ギープ王国を占領するのですか?」
菜緒虎が手を挙げてから尋ねる。
「今回占領はしない。程よく分裂させてマッサチン国の目を逸らす必要がある」
ゲームのように国主を倒せばその王が支配している土地が全部手に入るという仕組みなら有り難いがそこまで旨い話にはならないはずだ。
ギープ王国が跡目争いで適当に分裂したところを少しづつ取り込んでいくほうがいい。身内に内政のできる人材がいないのも問題だ。
アルテミスクラスのリッチやおれクラスの悪霊公がホイホイ召喚できれば解決するかもしれないが、いまのところこのふたつは召喚そのものが出来ない。
スケルトン魔法使いを大量に育ててみるか?
そこで自軍の編成が脳筋いや武闘派に大きく偏っていることに気が付く。
「どうされましたか?」
「うちは魔法系が少ないと思ってな」
アルテミスの問いに答える。
「人間とスケルトンの魔法使いを若干補充されてもよろしいかと」
「人間の魔法使い?」
「マーサ・セキで魔法使い、リリィ・ボノレンで弓兵、赤海入道政康で僧兵が召喚できるようになったハズですが」
アルテミスの指摘に暫し沈黙が流れる。そういえばそんなメッセージがあったような。
「そうだったな。殲滅力を上げる意味でもそうするか」
「御意」
アルテミスは畏まる。
取りあえず第一、第二に人間の魔法使いを第三、第四にスケルトン魔法使いを配置し、新たに第六軍をダークエルフのヘウロパを部隊長とし僧兵を加えたものに再編成する。
なお初期に召喚したスケルトン魔法使いは既に事務方として動かせないので今回召喚したのは新規だ。
あと弓兵は今回はパス。弓はハイエルフに死の狙撃手と駒が揃っているしな。
「部隊長指名とかいきなり過ぎるじゃろ」
ちびっ子ダークエルフのヘウロパがぴょこぴょこと椅子を持って現れる。
「おう」
イヌガミが見かねてヘウロパから椅子を取り上げるとその椅子を自分の横にドカッと据え付ける。
「ありがとうな」
エウロパエウロパはニカっと笑うとうんしょと椅子に座る。
「では対ギープ王国の指針をお願いします」
アルテミスに促され背後にあった地図の前に立つ。そしてニーダ半島の付け根に指を置きスッと斜め上に指で線を引くようになぞる。
指の先にあるのはギープ王国の首都ペーキョウ。
「目標はギープ王国国王の首ただ一つ。各員の奮闘を期待する」
六人の部隊長が席を立って深く首を垂れた。
ありがとうございます
新規モンスターと部隊編成は後日




